グループ代表者 田原太平 主任研究員

 物質は階層構造をなします。この物質階層構造においては高次の層に行くに従い系はより多くの分子を含むようになりますが、これらはただ数として集まるのではなく、互いに連動・協奏・相互作用して低次の系には見られない高い機能を実現しています。この高次の階層に位置する物質系の性質と機能を解明し、制御し、利用することは物質科学の大命題です。

 理化学研究所ではこのような問題意識を共有する研究者が連合し、平成24~28年度の5年間のプロジェクトとして「分子システム研究」を開始しました。この研究プロジェクトでは、分子集合体や生体分子系など“単一の性質を示す分子単体あるいは分子部分が集まり、他と連動・協奏・作用し合うことによって個々では発現できない構造・性質・機能を発現する物質系”を「分子システム」と定義し、これが実現している高い機能を解明、制御、利用するために、物理・化学・生物・工学のアクティビティを集結した総合研究を推進します。自然科学の総合研究所である理研の強みを最大限に生かして分野横断的な研究体制を組み、分子集合体や生体分子系を主たる対象に物質合成・創製と計測・理論の両面から研究を強力に推進します。

 具体的には、

  1. 観測と理論によって分子システムの基礎過程を“理解する”解析チーム
  2. 分子集合体の構築と評価を通して分子システムを“操る”制御チーム
  3. 生理的に重要なタンパク質を中心に生体分子系の構造・機能を研究することによって分子システムを“学ぶ”生体チーム
  4. それらから得られる知見や戦略を融合して新規な人工的分子システムを創製して“利用する”融合チーム

の4つのチームで研究を推進し、相互に連関しながら新しい物質科学を開拓します。

 またわれわれは、理研において研究を強力に推進するだけでなく、同時に全国の研究者と結んで研究ネットワークの形成をはかることが重要だと考えています。そのため、分子システム研究には現在6つの大学・研究機関の高いアクティビティをもつ研究者が参加しています。その意味で、この「分子システム研究」は、基礎学術から応用基礎までを縦断的に結んだ融合研究によって物質科学研究の新しい潮流を生み出そうとする研究プロジェクトです。

グループ体制図