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男女共同参画への取り組み
「自分が変わると、まわりが変わる。そして未来も変わります」

女性研究員の数を欧米並みの30%以上に

 理研では、職場などにおける男女共同参画の積極的な展開を図る取り組みを実施しています。日本で唯一の自然科学の総合研究所である理研では、女性研究者の比率を30%と、欧米並みの研究機関の水準まで増やそうと長年取り組んできました。

 2008年10月1日現在、理研の常勤職員数約3,100名のうち、1,150名が研究職と事務職を併せた女性職員。比率では30%を超えています。ただ、研究員のみに占める女性の割合はまだ10%台後半です。とはいえ、その数は近年増加傾向にあります。男女共同参画を推進する人事部キャリアサポート室谷 由美担当は次のように語ります。

 「和光キャンパスには、託児所が開設されており、横浜研究所にも2009年度に開設予定です。育児休業の制度なども整っています。私たちスタッフは、そうした仕組みを職員の皆さんに、もっと活用してもらいたいと考え、そのための施策を練ってきました。現在、少しずつですが実を結んできていることに手ごたえをつかんでいます」。

 そうした広報活動の一環として、理研が提供する支援制度の一覧などを載せた「理研子育て応援ハンドブック」の作成・配布や、情報交流の場である「わかい」の集い等を開催しています。男女問わず、職員にとって、仕事と家庭を両立させるには上司や同僚の理解と協力が不可欠となります。まず「産休・育休を取りたい」と率直に言えることが、目標とするワークライフバランスの実現にもつながります。育児だけでなく、家族の介護についても同様です。

 ほか、現場のニーズを拾い上げる仕組みも作ってきました。理研では、2006年6月6日に男女共同参画推進委員会を設置。そこで男女共同参画に関する議論、検討、提言を行っています。2008年4月には、筑波研究所、播磨研究所、横浜研究所、神戸研究所に事業所部会を設け、活動を横に広げています。

育児や介護を後押しする、職員一丸となった環境づくりを

 国が制定した「次世代育成支援対策推進法」に基づき、理研が策定した「一般事業主行動計画」では、第1回(2005年4月1日〜2008年3月31日)の目標を達成。2009年1月には「基準適合一般事業主」と国から認定されました。この認定では、男性の育児休業取得者がいる、女性の育児休業取得率が70%以上、3歳から小学校入学までの子を持つ労働者を対象とする「育児休業または勤務時間の短縮等の制度」を適用している、といった7つの基準を満たしていることが条件となります。

 「男女共同参画の取り組みには、組織全体の意識変革、特にトップ層を巻き込んでいくことが大切です。活動の成果は、なかなかすぐには見えません。また、お金をかければよいというものでもないのです。まずは、相談してくる相手の方の立場になってみること。おむつも自分で替えてみると、育児の大変さが分かります。ちょっと視点を変えるだけでよいのです。職員には、より積極的に理研の各種制度を利用していただきたい。そうした成果を一つ一つ積み上げていくことで、誰もが暮らしやすい社会が実現していくと思います」(谷担当)。

男女共同参画と環境問題との接点

 男女共同参画への取り組みと環境問題には、自然な接点もあります。例えば、子育てを通じて、子供が手にする玩具や、口にする食品などの安全性に関心を持つ。環境問題を子どもの未来と重ね合わせてみる。環境を考えるきっかけは、実はそんな身近なところにあふれています。つまり、ちょっと視点を変えて、現状を正しく理解し、誰もが暮らしやすい社会を目指すと言う点では同じなのです。とはいえ、「どちらも、大上段に構える必要はないのではないでしょうか。まず自分が変わることで、まわりが変わる。そうして未来も変わります」(谷担当)。

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