2013年9月1日
細胞を傷つけずに識別・分離できるマイクロチップ
理研No. 07733
発明者
三好 洋美、山形 豊、安達 泰治、Jungmyoung Ju(理研:超精密加工技術開発チーム)
Jong Soo Ko、Sang Min Lee、Dong Jin Cho(Pusan National University)
背景
細胞には細胞外の足場材料に接着して移動する性質があります。細胞運動をコントロールする技術は、個体発生やがん転移などのメカニズムの理解に役立つだけでなく、組織形成・再生・維持やがん診断・治療などの医工学応用においても重要です。
概要
マイクロメートルサイズの凹凸の溝をシリコン基板上に作成し、高移動性の細胞を静置したところ、このミクロ凹凸のサイズやパターンによって、自由に動くはずの細胞が後戻りしたり、逆に動かなくなったりすることを発見しました。
細胞によるミクロ凹凸の好き嫌いを利用して、マイクロ溝集合体を用いた細胞に悪影響を及ぼさない非侵襲的なコントロール技術を開発、溝幅を調節することにより、細胞を排除したりトラップしたりするマイクロ構造化表面を形成します。
図1:マイクロ溝に遭遇して後戻りする細胞
図2:マイクロ溝中で動かなくなった細胞
図3:細胞アレイ(左)、細胞ソーティング(右)
利点
- 非侵襲:細胞が傷つかないので生体にやさしい
- シンプル:チップ1枚で細胞操作が可能。大規模装置、電源、特殊試薬不要
- 新規の標的細胞識別基準:これまで識別・分離が難しかった細胞種のソーティングも実現か?
応用
- 再生医療用スキャホールド
- 細胞アレイ
- 細胞ソーティング
文献情報
- 1.特願2010-018665
- 2.H Miyoshi et al., Biomaterials 33, (2012) pp. 395-401.
- 3.H Miyoshi et al., Biomaterials 31, (2010) pp. 8539-8545.
関連情報
- 1.2010年8月3日プレスリリース「ミクロな凹凸の人工構造で細胞の速い移動を制御」
知的財産情報に関するお問い合わせ
理化学研究所
お問い合わせフォーム