2015年10月5日
高温超伝導材料で切り開く技術革新
理研No. 07969, 08235, 08045
発明者
高橋 雅人、金 新哲、柳澤 吉紀、前田 秀明(NMR施設)
背景
希土類材料を用いた第2世代高温超伝導ワイヤ(REBCOワイヤ)は従来の超伝導ワイヤと比べて優れた高磁場・高電流密度特性を持ち、高磁場NMR磁石などの大幅なコンパクト化やCO2排出の大幅削減など様々な分野において大きな旋風を巻き起こす革新技術として期待されています。 REBCOワイヤの実用化には従来の超伝導技術とは異なる新しい技術体系が必要です。我々は、克服すべき課題を明らかにするとともに、世界に先駆けてこれら問題点を解決する技術開発に成功してきました。
概要
REBCOワイヤの実用化に必要な、1)特性劣化しないコイル技術である「ポリイミド皮膜した高温超伝導ワイヤ」、
2)線材の長尺化、永久電流モードを実現する技術である「高温超伝導ワイヤ同士の超伝導接続技術」、3)高磁場1.02 GHz(24.0 T) NMRに対応できる高周波アンテナ技術である「超高磁場領域におけるNMR信号送受信アンテナ製作技術」について紹介します。
図1:ポリイミド電着被覆REBCO線ワイヤ
図2:高温超伝導ワイヤ同士の超伝導接続技術
図3:超高磁場領域におけるNMR信号送受信アンテナ
利点
ポリイミド皮膜した高温超伝導ワイヤ
- 絶縁部分の厚さを従来の10分の1以下の薄さで実現可能
- コーナー部分を含む線材全体にわたって均一な厚みの被覆形成が可能
- エポキシ樹脂含浸を含めたあらゆるコイル製造法への適用性を持ち、超伝導コイルの電流密度を飛躍的に向上させる
高温超伝導ワイヤ同士の超伝導接続技術
- 永久電流モード実現により常時接続の電源が不要になり、磁石の低コスト化、高安定化が可能
超高磁場領域におけるNMR信号送受信アンテナ製作技術
- 超高周波に対応した溶液NMR用アンテナと超高磁場により高感度、高分解能のNMR測定が可能
応用
- これまで実現できなかった超高磁場のNMRやMRIの開発
- 超伝導リニアモーターにおける超伝導磁石の軽量化
- 基礎科学、医療、工学分野における高温超伝導機器の実用化
文献情報
- 1.特願2012-100477, EP12189570.0, US13/658330
- 2.特願2012-148036, EP13174124.1
- 3.PCT/JP2014/077966
- 4.T. Takematsu et al., Physica C, 470, (2010) pp. 674-677
- 5.Y. Yanagisawa et al. Physica C, 476, (2012) pp. 19-22
- 6.Y. Yanagisawa et al. Physica C, 495, (2013) pp. 15-18
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