広報活動

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2009年4月7日

独立行政法人 理化学研究所

植物概日時計とミトコンドリア機能の蜜月な関係を発見

-体内時計の制御が、ストレス耐性植物や有用物質産生植物の生産への鍵-

ポイント

  • ミトコンドリア機能を制御する時計遺伝子の役割をメタボローム解析が紐解く
  • 動物・菌類に加えて植物でも概日時計遺伝子とミトコンドリア機能の強い関連性を証明
  • 時計関連遺伝子を欠損させた変異体で、光条件や時間に依存しない代謝異常をキャッチ

要旨

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、植物代謝物の一斉分析で、細胞内の概日時計※1と生体活動に必要なエネルギーを産出する細胞小器官であるミトコンドリア機能※2とが、非常に密接かつ頑健な関係にあることを、新たに発見しました。理研植物科学研究センター(篠崎一雄センター長)メタボローム基盤研究グループの斉藤和季グループディレクター、福島敦史特別研究員、草野都研究員、生産機能研究グループの榊原均グループディレクターおよび中道範人基礎科学特別研究員、国立大学法人名古屋大学大学院生命農学研究科の水野猛教授らによる共同研究の成果です。

動植物での概日時計のシステムの解明は、主に遺伝子やタンパク質を調べる方法で進められてきました。しかし、代謝物レベルの振る舞いはほとんど不明で、概日時計関連遺伝子の出力系※3を決めることが、時計メカニズムを解明するのに役立つと考えられます。研究グループは、GC-TOF/MS※4 を使ったメタボローム※5解析により、モデル植物であるシロイヌナズナの概日リズム消失植物体に対する、大規模な代謝物の一斉分析を行いました。その結果、時計関連遺伝子PRR(疑似レスポンスレギュレータ)※69, 7, 5の3つを欠損している変異植物体は、光条件や時間条件によらず、ミトコンドリアが担う代謝経路であるクエン酸回路※7に属する構成物質群が、劇的に増加していることが分かりました。このことは、時計関連遺伝子が産出する時計タンパク質が、ミトコンドリアの代謝物レベルのホメオスタシス※8に関与することを示すものです。概日時計システムとミトコンドリア機能との関連は、動物や菌類などでは示唆されていましたが、植物での発見は初めてのことです。また、このような結びつきが生物界に広く存在する可能性が分かり、概日時計システムを進化の視点から理解する上できわめて重要な知見になると考えられます。今回、植物の概日時計システムの理解が一歩進んだことで、システムの制御が、ストレス耐性植物や有用物質産生植物の生産への鍵になると期待されます。また、今回適用したメタボローム解析は、概日時計システムのような動的で複雑な生命現象の包括的理解において、有用な戦略になることを示しています。

本研究成果は、米国科学アカデミー紀要 『Proceedings of the National Academy of Sciences』 4月6日の週にオンライン掲載されます。

背景

細菌からヒトまで、多くの生物種でみられる体内時計は、約24 時間周期の概日リズムを生み出し、その生物の行動や生理現象に影響しています。高等植物でも、概日時計が効率的な光合成、植物自身の生長や発達など、多方面で重要な役割を担っていることが明らかとなってきています。ここ10年間で、植物の概日時計に関する遺伝子レベルの解明が急速に進みました。これまでに、時計関連遺伝子とそれが産出する時計関連タンパク質が相互に組み合わさり、互いに制御し合うことで、約24時間周期のリズムを生み出すという概日時計システムのモデルが提案されています(図1左)。概日時計システムを構成する関連部品の第一候補は朝方位相遺伝子※9であるCCA1circadian clock-associated 1)遺伝子とLHYlate elongated hypocotyl)遺伝子です。タンパク質CCA1とLHYは、正常な遺伝子発現レベルの概日リズムの生成に必須で、概日時計システムの中心振動体※3の遺伝子で昼位相遺伝子※9を制御しているPRR9/ PRR7/ PRR5遺伝子群などの転写を促すと同時に、夕方位相遺伝子※9群のTOC1timing of cab expression 1)遺伝子、LUXluxarrhythmo)遺伝子、ELF4early flowering 4)遺伝子などの発現を抑制することが知られています。発現・蓄積したタンパク質群PRR9、 PRR7、 PRR5は、CCA1遺伝子、LHY遺伝子群の発現を抑制します。これにより、CCA1、LHYタンパク質群によるTOC1遺伝子、LUX 遺伝子、ELF4遺伝子群の抑制が解除され、徐々に発現・蓄積するTOC1タンパク質がCCA1遺伝子、LHY遺伝子の転写を促進します(図1右)。このような概日時計システムは、多くの出力系(代謝経路やシグナル伝達経路)を制御しており、植物のさまざまな生理現象の概日周期性をもたらします。

TOC1タンパク質は、PRRのメンバーの一つPRR1タンパク質と同一であり、シロイヌナズナでは、PRR1、PRR3、PRR5、PRR7、PRR9の5つの互いによく似たファミリーが概日時計システムの構成部品の一部であると考えられています。PRR遺伝子の欠損植物体や恒常的発現植物体の作製による大規模な分子遺伝学研究から、PRRは正常なリズム生成を行うのに深く関与するタンパク質であることが分かっていました。これらPRRタンパク質ファミリーの欠損あるいは過剰発現の組み合わせによって、遺伝子発現レベルでの概日リズム周期の長短変化が引き起こされます。特に遺伝子PRR9、7、5の三重欠損植物体(d975変異体)は、遺伝子発現レベルで概日リズムがなくなります。またd975変異体は、多面的な表現型※10(きわめて遅咲きとなり、赤色光の下で長い胚軸、濃い緑色の葉などを示す)を持っています。このd975変異体の表現型は、概日リズムの異常に関連すると考えられ、形態的な見た目がCCA1遺伝子の過剰発現体(CCA1過剰発現体)の表現型とよく似ています(図2)。最近、大規模なDNAマイクロアレイ※11解析から、d975変異体では非常に多くの概日リズムを示す遺伝子群の発現が崩壊しており、昼位相遺伝子の多くが常に高いレベルで発現していることが分かりました。また、その中には低温応答にかかわる多くの遺伝子が含まれており、実際にd975変異体は、DREB1というストレス応答性の転写制御因子を介して、低温ストレスに耐性を持つことが明らかになりました(Nakamichi et al. Plant Cell & Physiology 2009 50:447-462)。

このように概日時計システムの機能は、遺伝子やタンパク質レベルで理解が進んでいましたが、代謝物レベルではほとんど未知の状態です。概日時計システムを包括的に理解するためには、概日時計システムにおける低分子化合物の振る舞いを知ること、つまり概日リズム消失植物体の大規模なメタボローム解析が必須であると考えました。

研究手法および研究成果

研究グループは、DNAマイクロアレイ解析と、メタボローム基盤研究グループの草野都研究員らが確立したメタボローム解析パイプライン(2007年12月10日プレス発表)を用いて、遺伝子発現レベルと代謝物レベルとのデータを統合化し、どのような遺伝子発現と代謝経路ネットワークが、概日リズム消失植物体で協調的に振る舞っているかを網羅的に調べました。実験には、d975変異体とCCA1過剰発現体を用い、大規模なメタボロームの比較を試みました。

その結果、d975変異体は、過去に分析・検討した7つの代謝関連変異体の中で、一次代謝物の変動がもっとも大きいことが分かりました。また、詳細な代謝物分析の結果から、d975変異体では、ミトコンドリアが担う代謝経路であるクエン酸回路に属する構成物質群の代謝物量が、野生型と比較して劇的に上昇していることが分かりました(図3左)。これは、生育における光条件(明暗条件および連続明条件)やサンプリング時間の違いによらず観測できました。一方、CCA1過剰発現体では、d975変異体と同様に多くの時計関連遺伝子群の発現が崩壊していましたが、クエン酸回路の構成物質群をはじめとする代謝物群の有意な上昇は認められませんでした(図3右)。このことから、ミトコンドリア機能に関しては、CCA1タンパク質ではなく、PRR9、7、5タンパク質群による直接および間接的な代謝物レベルの保持機構の存在が示唆されました。さらに、d975変異体では、野生型に比べてグルタミン酸やプロリンなどのアミノ酸、有機酸類、ラフィノース、ビタミンCやビタミンEなどを含む、多くの有用な代謝物の蓄積が有意に上昇していることを確認できました。同時に、PRR9、 7、 5タンパク質は、葉緑素、カロテノイド/アブシジン酸(ABA)、ビタミンEの合成経路の遺伝子発現および代謝物群の蓄積を、負に制御している可能性も示唆されました。

このように、d975変異体とCCA1過剰発現体のメタボロームの比較の結果、2つの概日リズム消失植物体は、形態的な表現型が互いによく似ているにもかかわらず、代謝物群の組成が明確に異なっていることが分かりました。このことは、一見同じに見える概日リズム消失植物体も、代謝の観点から分類が可能であることを示しており、メタボローム比較によって概日時計システム解明の糸口となる発見をすることができました。

今後の期待

今回の実験から判明したPRR9、7、5タンパク質群の生理的役割は、これまで知られていた概日時計リズムの生成と花芽の形成に到る光周性経路へのかかわり、ストレス応答遺伝子群の発現制御にかかわる機能に加えて、PRRがミトコンドリアおよび葉緑体といった細胞内器官にある代謝物経路のホメオスタシスにかかわることが分かりました(図4)。概日時計とミトコンドリア機能との関係については、これまでほ乳類や菌類などで示唆されていましたが、植物でこの関係を見いだしたことは世界で初めてです。今回の発見は、従来のDNAマイクロアレイ解析に代表される遺伝子発現レベルのアプローチだけでは困難であり、メタボローム解析が動的で複雑な概日時計システムを包括的に理解するうえできわめて強力な手法になりうることを示しています。

モデル植物の概日時計システムについての研究は、基礎科学にとどまらず、作物育種への応用をも促進することが期待されます。d975変異体は、アミノ酸や有機酸、ビタミン類を高蓄積するだけでなく、低温と乾燥耐性なども獲得していたことから、時計機構を人為的に最適化する(光照射のタイミングを変える、もしくは一次代謝物を高投与する)ことによって、遺伝子の人為的改変によらず、代謝物レベル制御の手法によって、高ビタミン含有・ストレス耐性作物を効果的に産出できるかもしれません。さらに、ほ乳類や菌類で示唆されていた概日時計システムとミトコンドリア機能の普遍的かつ協調的制御が、広く生物界に分布している可能性も示され、概日時計システムを進化の視点から理解する上で、きわめて重要な知見になると考えられます。

発表者

理化学研究所
植物科学研究センター
メタボローム基盤研究グループ
グループディレクター
斉藤 和季(さいとう かずき)
Tel: 045-503-9488 / Fax: 045-503-9489

メタボローム情報ユニット
特別研究員 福島 敦史(ふくしま あつし)
Tel: 045-503-9491 / Fax: 045-503-9489

お問い合わせ先

横浜研究推進部 企画課
Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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産業利用に関するお問い合わせ

理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部
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補足説明

  1. 概日時計
    比較的単純な構造の細菌から複雑な構造の鳥やヒトまで、大多数の生物が持つ概日リズムは、私たちの遺伝子に組み込まれている。ほぼ一日に相当する24時間周期を生み出す概日時計は、睡眠、心拍数、血圧、肝機能、体温、細胞分裂、そのほかさまざまなホルモンの産生などを調節していると考えられる。ヒトに限らず植物においても、多くの生理現象が昼夜で変化しており、光合成効率や葉緑体産生の効率化に役立っている。概日時計の仕組みを調べるために、ハエ、マウス、シロイヌナズナといったモデル生物に関する遺伝学/分子生物学研究の進歩はめざましく、ここ十年で時計機構の遺伝子レベルでの解明が大きく前進している。
  2. ミトコンドリア機能
    ミトコンドリアは、酸素呼吸によって生体の活動に必要なエネルギーを作り出す、代謝にかかわる細胞内小器官の一つ。近年、細胞死(アポトーシス)やカルシウム濃度の調節など、細胞の生と死の両側面に関して重要な役割を果たしていると考えられている。細胞内小器官は特有の代謝系を持ち、ミトコンドリアはクエン酸回路(※7参照)を有する。ミトコンドリア独自のDNA (ミトコンドリアDNA)の変異によって機能異常が引き起こされるミトコンドリア症も知られており、最近では、従来考えられてきた以上に広範なヒトの疾患(例えば糖尿病など代謝異常)にも関連することが分かってきている。
  3. 概日時計関連遺伝子の出力系、中心振動体
    概日時計システムは、便宜的に入力系→中心振動体→出力系と3つの「境界」を考えて理解が進めてられてきた。概日リズムを生み出す中心振動体の上流に、光による概日時計のリセット(あるいは同調)にかかわる入力系の存在を仮定し、一方で中心振動体の下流には、葉の就眠運動などの生理現象の日周性リズムへとつながる出力系を考えることができる(図1も合わせて参照)。最近の研究から、これら3つの境界は曖昧になってきていることは興味深い。
  4. GC-TOF/MS (ガスクロマトグラフ-飛行時間型/質量分析計)
    揮発性物質の分離・分析法であるガスクロマトグラフィー(GC: gas chromatography)に、検出器として飛行時間型質量分析計(TOF/MS)を組み合わせた装置。GCにより分離された成分は、イオン化部(本装置では電子イオン化法(EI; electron ionization)を採用)でイオン化される。TOF/MSでは、このイオンを真空中で運動させ、電磁気力を用いてイオンを質量電荷比(m/z)に応じて検出する。低コスト、短時間、高感度かつ大量の代謝物データを、再現性よく測定することが可能である。
  5. メタボローム
    細胞内に含まれる低分子代謝物の総体のこと。代謝物を包括的かつ網羅的に解析することにより、生体内での化学反応を全体的に把握可能にする技術を含め、ゲノム情報から転写物mRNA情報(トランスクリプトーム)、タンパク質情報(プロテオーム)に続く代謝物総体(メタボローム)についてのポストゲノム科学分野が、メタボロミクスと呼ばれる。
  6. PRR(疑似レスポンスレギュレータ)
    Pseudo-Response Regulatorの略。生物に普遍的な情報伝達機構であるHis-Asp(ヒスチジン-アスパラギン酸)リン酸リレー系(2成分制御系)に関連するタンパク質であるRR(レスポンスレギュレータ)の亜種。PRRはRRが持つリン酸受容能力がなくなっているので疑似(pseudo)レスポンスレギュレータと呼ばれる。PRR遺伝子群は、PRR9 PRR7 PRR5 PRR3PRR1 (TOC1)の順に、夜明けとともに位相段階的に夕方にかけて発現量が上昇・減衰していく(PRRファミリーが時を告げる五重奏)。
  7. クエン酸回路
    細胞がエネルギーを獲得するためには、呼吸が必須である。この細胞呼吸の反応は、細胞質基質およびミトコンドリア内部で行われる。細胞質基質においてブドウ糖から分解され作られたピルビン酸は、さらにミトコンドリアにおいて分解され、この過程で生体内のエネルギー通貨であるATP(アデノシン三リン酸)を合成する。このようなエネルギーを産生する回路状の代謝経路を指す。tricarboxylic acid cycle(TCA)回路またはクレブス回路とも呼ばれる。クエン酸回路を構成する化合物群としてはクエン酸、オキザロコハク酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキザロ酢酸などがある。
  8. ホメオスタシス
    生物の持つ恒常性の維持に関する性質のこと。生物を取り巻く外部環境と密接にやりとりをしつつ、生体内の状態が一定に保たれる性質を指す。例えば、体温や血圧、血糖値などが一定に保たれる(あるいは病気が治る)などもホメオスタシスと言える。米国の生理学者Walter B. Cannon(1871-1945)がこの概念を考え出した。
  9. 朝方位相遺伝子、昼位相遺伝子、夕方位相遺伝子
    早朝に発現量が最大となる遺伝子を「朝方位相遺伝子 (morning gene)」、日中に発現量が最大となる遺伝子を「昼位相遺伝子」、夕方に発現量が最大となる遺伝子を「夕方位相遺伝子(evening gene)」と慣習的に呼ぶ。CCA1/LHY遺伝子群は朝方、TOC1遺伝子は夕方に発現量が最大になる。PRR9、7、5遺伝子群は協調的に、下流にある昼位相遺伝子群の発現を抑制していると考えられる。
  10. 表現型
    生物に実際に現れた性質をいう。表現型は、ある生物個体の持つ遺伝子の違い(遺伝型、または遺伝子型と呼ぶ)と環境条件双方の影響を受ける。表現型の例としては、エンドウマメの種子のしわの有無や、ヒトにおける髪の色の違い(例:金髪あるいは黒髪)、などが挙げられる。最近では、目に見えない細胞内の生化学的性質の違い、例えば糖代謝異常である糖尿病などを“代謝に関わる表現型”というように用いることも可能である。
  11. DNAマイクロアレイ
    スライドガラスやシリコン基板の上に、数万~数十万の遺伝子の部分配列を高密度に配置し固定したもの。これを用いて、ある生物の特定の器官や組織で発現している遺伝子を網羅的に解析できる。

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モデル植物シロイヌナズナの生物分子時計の概要

図1 モデル植物シロイヌナズナの生物分子時計の概要

概日時計システムは、便宜的に入力系、中心振動体、出力系の3つの領域から構成されると考える。中心振動体において、複数の概日時計関連遺伝子およびタンパク質が相互に制御し合うことにより、概日リズムが生成されると考えられている(図右)。CCA1/LHY→PRR9/7/5→TOC1のように、位相段階的に転写/翻訳が行われて生み出されたリズムは、多くの出力系に付与される。(中道範人・水野猛(2006)“植物の生物時計 -時計関連遺伝子と計時機構研究の新展開” 化学と生物 44: 295-304.より改変)

モデル植物シロイヌナズナの野生型および概日リズム消失植物体の表現型

図2 モデル植物シロイヌナズナの野生型および概日リズム消失植物体の表現型

遺伝子PRR9、7、5の三重欠損植物体(d975変異体、両図中央)とCCA1遺伝子の過剰発現体(CCA1過剰発現体、両図右)の表現型はよく似ている。培地上に播種した後18日目まで育生し (左図)、その後土に移植した。移植後42日目(右図)では野生型は花が咲き終わり、鞘の形成が観察されるが、d975変異体とCCA1過剰発現体は共に花を咲かせていない。

明暗 (LD) 条件下の概日リズム消失植物体のメタボローム比較

図3 明暗 (LD) 条件下の概日リズム消失植物体のメタボローム比較

赤色は、野生型に比べたときに代謝物が増加したことを表し、青色は、逆に減少したことを表す。8つの円は、時刻(ZT)に沿って3時間おきにサンプリングを行った時刻点を示している。遺伝子PRR9、7、5の三重欠損植物体(d975)(左図)は、クエン酸回路の構成物質群の代謝物レベルが有意に上昇(有意水準 q < 0.05)していた。一方で、遺伝子CCA1の過剰発現植物体(CCA1-ox)(右図)では、そのようなレベルに統計的な有意差はなかった。明暗条件や連続明条件でもこの傾向は確認できた。

発見したPRR9、7、5の新規な出力系

図4 発見したPRR9、7、5の新規な出力系

既知の機能として、PRR9、7、5はCCA1/LHYやTOC1 (PRR1)とともに概日リズム振動の正常な生成や光周性経路の制御に関与すると考えられる。またDREB1に依存したストレス応答性遺伝子群の発現制御を行っていることが示されていた。今回、PRR9、7、5は、特にミトコンドリアにおいて、一次代謝物レベルのホメオスタシスに強く関与することが判明した。同時に葉緑素の合成、カロテノイド、アブシジン酸、ビタミンEの生合成経路を負に制御していることも示唆された。

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