広報活動

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2012年3月30日

理化学研究所

杉山特別研究室を大正製薬(株)、田辺三菱製薬(株)、杏林製薬(株)、(株)島津製作所など26社の資金により開設

-薬物動態、薬効、毒性の予測に基づく統合的創薬支援システムの確立を目指して-

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、大正製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社、杏林製薬株式会社、株式会社島津製作所など26社からの資金拠出を受け、杉山 雄一(すぎやま ゆういち)※1東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室教授を招聘(しょうへい)し、4月1日から社会知創成事業イノベーション推進センター(土肥義治センター長)内に杉山特別研究室を開設します。

杉山特別研究室は、薬物動態、薬効、毒性について、in vitro(試験管内)からin vivo(生体内)の予測、薬物間相互作用、個人間変動や病態時変動の予測などを可能にする統合的な創薬支援システムの確立を目指します。これは、傑出した研究者を招き外部資金によって研究を推進する「特別研究室プログラム※2」を活用したものです。

具体的には、モデリングとシミュレーションを駆使した手法により、薬物間の相互作用について、相互作用薬と被相互作用薬の両方の経時変化を考慮に入れて予測するシステムの開発を行います。また、病態の程度、性差、年齢差、人種差などに関する仮想的なヒトのデータを発生させ、ヒトを使った臨床試験を行うことなく、ある特定の集団の薬物動態や薬効発現特性の個人間変動を評価する予測システムの開発も目指します。また、医薬品候補化合物の体内動態を安全性の保障される投与量で調べることのできるマイクロドーズ臨床試験を実施すべきかどうか、PET試験を組み入れるべきプロジェクトかどうかを判断する基準作りにも役立てていきます。

これらのシステム開発により、臨床試験にまで到達した数多くの医薬品候補化合物のほとんどが開発中止となっている現状を改善するとともに、臨床試験後の開発もスムーズに実施することができるようになるため、効率的な医薬品開発が実現すると期待できます。参加企業からの具体的課題に対しても積極的に取り組みます。

理研は、わが国で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学など広い分野で研究活動を行っています。日本の生命科学の分野では、分子イメージング研究ネットワークの中核拠点である「分子イメージング科学研究センター」や、ライフサイエンス研究支援を推進する「オミックス基盤研究領域」があります。杉山特別研究室では、これらのセンターと協力し、日本発の新薬創製を加速させる統合的創薬支援システムの構築を目指します。

経緯と取り組み

創薬の初期段階では非常に多くの医薬品候補化合物が合成されます。これらの候補化合物に対しては、薬物動態に関わる膜透過性や代謝酵素による代謝速度、薬効に関わるレセプターとの結合親和性などをin vitro実験系で検討します。この実験で得られる各種パラメータを比較することで、候補化合物の絞り込みを行い、臨床試験に導入する薬物を決定します。しかし、in vitro実験系や動物実験から期待された薬効が臨床試験では再現されず、医薬品候補化合物のうち、ほとんどが市場に出る前に脱落することも事実です。臨床試験は非常に多額の費用を必要とします。このため、臨床試験までの段階で、目的とする薬効を示す薬物をいかに正確に選定するかが、効率的な創薬のカギになります。理研は、創薬の効率化が図れる統合的な支援システム構築を目的に、傑出した研究者を招き外部資金によって研究を推進する特別研究室プログラムを活用し、杉山特別研究室を開設することとしました。

杉山特別研究室では、創薬の初期段階で候補化合物を合理的に選択する新しい方法論を確立し、統合的創薬支援システムの構築につなげていきます。具体的には、多様なin vitroスクリーニングから得られたパラメータを統合的に組み入れた数理モデルを構築し、薬物動態や薬効の経時変化を定量的にシミュレーションします。これにより、臨床試験に入る前に、ヒトに投与したときの各化合物の医薬品としての有効性を正確に予測します。また非侵襲的に臓器内の薬物を定量的に可視化することのできるPET試験で薬の臓器移行・分布の経時解析や臨床研究の結果と、数理モデルによる計算結果を比較して数理モデルの最適化を図ります。これにより、薬物間相互作用を避けることのできる医薬品、個人間変動や病態による影響を受けにくい医薬品、治療域の広い医薬品の開発につなげます。また、医薬品候補化合物の体内動態を安全性の保障される投与量で調べることのできるマイクロドーズ臨床試験や、ヒトで期待した機構により薬効がでるかどうかを判定することを目的とする早期探索的臨床試験を行う必要のあるプロジェクトかどうか、PET試験を組み入れるべきプロジェクトかどうかを判断する基準作りにも役立てていきます。

杉山特別研究室の概要

(1)主宰研究者

杉山雄一特別招聘研究員
(東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室教授)

(2)所在地

社会知創成事業イノベーション推進センター
横浜バイオ産業センター(横浜市鶴見区末広町1-6)内

(3)研究期間

平成24年4月1日から3年間

(4)参加企業 (50音順)

アステラス製薬株式会社
本社所在地:東京都中央区日本橋本町2-3-11
代表者氏名:代表取締役社長 畑中 好彦
WEBアドレス:http://www.astellas.com

エーザイ株式会社
本社所在地:東京都文京区小石川4-6-10
代表者氏名:代表執行役社長  内藤 晴夫
WEBアドレス:http://www.eisai.co.jp

杏林製薬株式会社
本社所在地:東京都千代田区神田駿河台2-5
代表者氏名:代表取締役社長 平井 敬二
WEBアドレス:http://www.kyorin-pharm.co.jp/

興和株式会社
本社所在地:名古屋市中区錦三丁目6番29号
代表者氏名:代表取締役社長 三輪 芳弘
WEBアドレス:http://www.kowa.co.jp/

株式会社JCLバイオアッセイ
本社所在地:大阪府豊中市新千里東町1-4-2
千里ライフサイエンスセンタービル16階
代表者氏名:代表取締役社長 籾山 邦男
WEBアドレス:http://www.jclbio.com

株式会社ジェノメンブレン
本社所在地:神奈川県横浜市鶴見区小野町75-1
代表者氏名:代表取締役社長 仙田 哲
WEBアドレス:http://www.genomembrane.com

株式会社 島津製作所
本社所在地:京都市中京区西ノ京桑原町1番地
代表者氏名:代表取締役社長 中本 晃
WEBアドレス:http://www.shimadzu.co.jp/

大正製薬株式会社
本社所在地:東京都豊島区高田3丁目24番1号
代表者氏名:代表取締役会長兼社長 上原 明
WEBアドレス:http://www.taisho.co.jp/

田辺三菱製薬株式会社
本社所在地:大阪府大阪市中央区北浜2-6-18
代表者氏名:代表取締役社長 土屋 裕弘
WEBアドレス:http://www.mt-pharma.co.jp

中外製薬株式会社
本社所在地:東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー
代表者氏名:代表取締役会長 最高経営責任者 永山 治
WEBアドレス:http://www.chugai-pharm.co.jp/hc/ss/index.html

帝國製薬株式会社
本社所在地:香川県東かがわ市三本松567番地
代表者氏名:代表取締役社長 藤岡 実佐子
WEBアドレス:http://www.teikoku.co.jp

株式会社富士通九州システムズ
本社所在地:福岡市早良区百道浜二丁目2番1号富士通九州R&Dセンター
代表者氏名:代表取締役社長 川田 敏郎
WEBアドレス:http://jp.fujitsu.com/group/kyushu/

富士フイルム株式会社
本社所在地:東京都港区赤坂9-7-3
代表者氏名:代表取締役社長・CEO 古森 重隆
WEBアドレス:http://fujifilm.jp/

Meiji Seika ファルマ株式会社
本社所在地:東京都中央区京橋二丁目4番16号
代表者氏名:代表取締役社長 松尾 正彦
WEBアドレス:http://www.meiji-seika-pharma.co.jp/

他12社を含む計26企業

お問い合わせ先

独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター 杉山特別研究室
特別招聘研究員 杉山 雄一(すぎやま ゆういち)
Tel: 045-506-1814 / Fax: 045-506-1800

社会知創成事業連携推進部 イノベーション推進課
石田 浩康(いしだ ひろやす)
Tel: 048-462-5287 / Fax: 048-462-4718

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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産業利用に関するお問い合わせ

独立行政法人理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部
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補足説明

  1. 杉山 雄一(すぎやま ゆういち)
    東京大学薬学部卒業。東京大学大学院薬学系研究科博士課程在学中、製剤学の助手になる。 薬学博士。2012年3月まで東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室教授。長年にわたり分子薬物動態学の研究に取り組む。エバート賞(米国薬学会最優秀論文)、タケル・アヤ・ヒグチ賞(第1回)、日本薬物動態学会 奨励賞(第1回)、日本薬学会 奨励賞、世界薬学連合(FIP)Pharmaceutical Scientist of the Year Award 1994(第1回)、日本薬剤学会 学会賞、 パークデービス最優秀講義賞(国際賞)、The Troy C. Daniels Lectureship(国際賞)、日本薬物動態学会 学会賞、米国薬学会(AAPS)Distinguished Pharmaceutical Scientist Award、日本薬学会賞、John G. Wagner Pfizer Lectureship Award in Pharmaceutical Sciences(国際賞)、世界薬科学会賞(PSWC Research Achievement Award)、世界薬学連合(FIP)Host-Madsen Medal、米国薬理・治療学会(ASPET) Bernard B.Brodie賞、持田記念医学薬学振興財団 持田記念学術賞、第一三共生命科学研究振興財団 高峰記念三共賞、上原記念生命科学財団 上原賞、紫綬褒章などを受賞。
  2. 特別研究室プログラム
    理研の研究の活性化、研究成果の社会への展開などを目的に、傑出した研究者を招聘し、原則5年以内の期間、企業等から受け入れる資金で特別に研究を推進するためのプログラム。 第一号は、日本初の論理素子「パラメトロン」の原理の発見によりコンピューター開発のパイオニアとして知られる後藤英一元主任研究員を招聘して設置した「後藤特別研究室」(1991年5月研究開始)。「杉山特別研究室」は、制度設置から9番目の研究室となる。
    これまでに設置された特別研究室
    研究室名 特別招聘研究員 設置年 参加企業
    後藤特別研究室 後藤英一 1991年 4社
    宇井特別研究室 宇井理生 1993年 11社
    名取特別研究室 名取俊二 1998年 9社
    井川特別研究室 井川洋二 2000年 11社
    阿部特別研究室 阿部岳 2004年 4社
    辨野特別研究室 辨野義己 2009年 8社
    有本特別研究室 有本裕 2010年 4社
    中村特別研究室 中村振一郎 2011年 1社