広報活動

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2014年10月31日

独立行政法人理化学研究所
日本電子株式会社

「理研CLST-JEOL連携センター」を開設

-分析・診断機器分野のイノベーション創出を目指す-

理化学研究所(野依良治理事長)は、11月1日に日本電子株式会社(JEOL、栗原権右衛門代表取締役社長)と共同で、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター[1](CLST、渡辺恭良センター長)内に、「理研CLST-JEOL連携センター」を開設します。

本連携センター設立の目的は、分析・診断機器分野でグローバル競争に打ち勝つ日本独自技術の創出です。現在、NMR[2]や電子顕微鏡などの先端分析機器は、基礎研究や材料・デバイス開発、品質管理分野での利用が主流となっています。基礎研究の分野では、創薬や医療診断技術開発などのライフサイエンス分野への応用が広がりつつありますが、精度、感度、操作性、分析速度、小型化、自動化などに課題があり、先端分析機器市場の拡大にはこれらの要請に応えることが重要です。連携センターでは、高感度・高分解能を有する固体NMR解析法の確立と世界最高磁場NMRの研究開発、およびPET(陽電子放射断層画像法)[3]MRI(磁気共鳴画像法)[4]などによる分子イメージングと光学/電子顕微鏡観察を組み合わせる4Dスーパーマルチモダル・イメージング技術の開発に取り組みます。

背景

物質の表面形状の分析に用いる電子顕微鏡や分子構造を解析するNMRなどのラボ用分析機器の市場規模は、世界全体で4.7兆円(46,759,000,000ドル、Global Assessment Report 13th Edition, Strategic Directions International, Inc.より)と試算されています。従来の材料・デバイス開発、品質管理分野に加えて、特に医療・創薬などの基礎研究分野での伸びが注目されています。ライフサイエンス、バイオ系分野では海外メーカーのシェアが先行していますが、今後の医療応用・臨床応用の拡大には、精度、感度、操作性、分析速度、小型化、自動化などに課題があり、これらの要請に応えることが重要です。

理研CLSTは、NMRやPETイメージングなどを駆使し、原子レベルから個体レベルにわたる生命現象の動的理解に基づいた創薬・医療技術の開発を行ってきました。一方、JEOLは、主力商品の電子顕微鏡で世界トップシェアを誇り、NMRや電子ビーム描画装置でも独自性の高い機器を製造するなど、世界トップレベルの理科学機器メーカーです。

「理研CLST-JEOL連携センター」の概要と目的

理研CLST-JEOL連携センターは、産業界との連携センター制度[5]により、両社の強みを生かした組織として開設します。

本連携センターでは、高感度・高分解能を有する固体NMR解析法の確立と、1.2~1.3 GHz級の世界最高磁場NMRの研究開発に加え、PET(陽電子放射断層画像法)、MRI(磁気共鳴画像法)、CT(コンピューター断層撮影)などによる個体・臓器レベルの分子イメージングと組織・細胞・細胞内小器官レベルの光学/電子顕微鏡観察を組み合わせる4Dスーパーマルチモダル・イメージング技術の開発に取り組みます。また、これらの活用技術とアプリケーション基盤を、広く所内外へ展開します。これにより、分析・診断機器分野でグローバル競争に打ち勝つ日本独自技術の創出を目指します。

連携センターの概要は、以下の通りです。

(1)組織名称

理研CLST-JEOL連携センター
(英語名:RIKEN CLST-JEOL Collaboration Center)

(2)研究開発の実施場所

①NMR研究基盤の高度化
理化学研究所 横浜地区 CLST NMR施設
(神奈川県横浜市鶴見区末広町1丁目7番22号)

②4Dスーパーマルチモダル・イメージング技術の開発
理化学研究所 神戸地区 CLST 神戸MI R&Dセンター
(兵庫県神戸市中央区港島南町6丁目7番3号)

(3)開設期間

第1期:平成26年11月1日~平成28年3月末日
第2期:平成28年4月1日~平成30年3月末日
※第2期への移行は内部評価の上決定。

(4)研究開発内容

①NMR研究基盤の高度化

  • 固体NMR活用技術/アプリケーション開発
    固体NMR領域において、固体NMRスペクトル解析法の確立などの技術開発を行うとともに、微量試料の高感度・高分解能測定に向けたアプリケーションを開発し、理研CLSTのNMR施設を通して所内外へ広く利用技術を提供していきます。
  • 世界最高磁場NMR研究開発
    高温超伝導磁石を用いた1.2~1.3 GHz NMRの実用化と活用に向けた技術開発に取り組みます。既存技術によるNMRが直面している高磁場化の壁、すなわち大型化、液体ヘリウム大量消費などのボトルネックを解消することにより、分析機器市場における日本の産業競争力の飛躍的向上を目指します。

②「4Dスーパーマルチモダル・イメージング技術の開発
PET、MRI、CTなどさまざまなモダリティ[6]を活用した医療用検査装置と、細胞レベル、分子レベルの観察が可能な光学顕微鏡や電子顕微鏡を組み合わせた4次元イメージング技術を開発します。特に、PET、MRI、超音波、光学顕微鏡で観察した試料を、電子顕微鏡で観察するための試料作製技術および解析技術を開発します。

(5)連携センター長

渡辺恭良(理研ライフサイエンス技術基盤研究センター センター長)

(6)組織図
理研CLST-JEOL連携センター、固体NMR 技術開発ユニット ユニットリーダー:西山 裕介(非常勤)* *本務:株式会社 JEOL RESONANCE、超高磁場NMR実用化ユニット ユニットリーダー:前田 秀明、マルチモダル微細構造解析ユニット ユニットリーダー:片岡 洋祐

問い合わせ先

ライフサイエンス技術基盤研究推進室
Tel: 078-306-3026 / Fax: 078-306-3039

報道担当

独立行政法人理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター
チーフ・サイエンスコミュニケーター 山岸 敦 (やまぎし あつし)
Tel: 078-304-7138 / Fax: 078-304-7112

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
お問い合わせフォーム

日本電子株式会社 執行役員 経営戦略室長 大井 泉
Tel: 042-543-1111 / Fax: 042-546-9732

補足説明

  1. 理研ライフサイエンス技術基盤研究センター

    生命分子システム基盤研究領域、オミックス基盤研究領域、分子イメージング科学研究センターを前身として2013年4月に発足。ライフサイエンスの成果を創薬・医療につなげるために必須となる新しい技術を確立し、ヒトを含む生命活動の全体像を捉えるライフサイエンスの新たな潮流を生み出すことを目標としている。横浜、神戸、和光に研究室を持つ。

  2. NMR(核磁気共鳴装置)

    Nuclear Magnetic Resonanceの略。原子核には核スピンがあり、これがゼロではない水素や炭素原子は強い磁場の中に置かれると、2つのエネルギー状態に分かれることが知られている。このエネルギー差に相当する電磁波を当てると、共鳴現象が起きて電磁波が吸収される。その振動数は、原子核の種類と磁場の強さで決まるが、原子核の周りの電子の状態に影響されるので、周辺の電子の分布や原子の結合状態を知る手がかりになる。NMRはこの現象を分子構造の決定手段として利用する。溶媒に分子を溶解させて計測する「溶液NMR法」や固体状態の分子を計測する「固体NMR法」などがある。

  3. PET(陽電子放射断層画像法)

    Positron Emission Tomographyの略。陽電子を放出する放射性同位体を薬などの分子に組み込んで個体に投与し、体内で崩壊して放出されるγ線を測定して分子の体内分布を見る方法。陽電子放出核種である11Cや18Fなどで標識した薬剤(分子)をPETプローブという。

  4. MRI(磁気共鳴画像法)

    Magnetic Resonance Imagingの略。磁気と電磁波、それに水素原子の動きを利用して、主に身体の解剖学的な情報を得る技術。水素原子には、磁気に反応する性質があるため、磁場をつくる装置の中で体に電磁波を当てると、体内の水素原子が反応して信号を発する。その信号をとらえコンピューターで解析して画像にする。

  5. 産業界との連携センター制度

    理研と産業界との包括的な連携の場として2007年2月に整備した制度。企業からの具体的な連携の提案をもとに、理研の各センター内に「連携センター」を設置し、中・長期的な課題を実施する。この制度は、企業が抱える研究開発課題と理研の広範な研究シーズを横断的かつ包括的に連携させ、その成果を幅広く産業界を通じて社会に展開することを目的とし、中・長期的視野で目標設定を行える点、センターの名称に企業名を冠する点が特徴。これにより、理研は産業界との連携をさらに発展させ、企業と共同で新しい領域を切り開き、育成することを目指している。

  6. モダリティ

    医療用画像や生体画像を取得する方法と、機器のタイプを指す。複数の画像取得法や機器を使い、性質の異なるさまざまな画像情報を組み合わせて解析することを、マルチモダルイメージングと呼ぶ。

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左から栗原社長、野依理事長、渡辺センター長
理化学研究所 東京連絡事務所にて