広報活動

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2015年6月8日

理化学研究所
高輝度光科学研究センター

SACLAが新しいビームラインの共用を開始

―世界初 複数のXFELビームラインが稼働する施設に―

理化学研究所(理研)、高輝度光科学研究センター(JASRI)はX線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)[1]施設SACLA[2]の新しいXFELビームライン「BL2」の共用運転を、2015年4月17日に開始しました。これによってSACLAは、複数のXFELビームラインが同時に稼働する世界初の施設となりました。

SACLAは2012年3月7日から、XFELビームライン「BL3」の共用運転を行っています。BL3は世界最短波長である0.1ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)以下のX線レーザーを安定的に供給し、数々の目覚ましい成果を生み出してきました。しかし、世界で共用運転を実施しているXFELビームラインはSACLAのBL3と米国のLinac Coherent Light Source(LCLS)が有するビームラインの2本だけでした。XFELビームラインの不足は世界共通の課題であり、国内外の大学や研究機関、産業界の利用者はXFELの利用機会の拡大を強く要望していました。この課題を解決するため、理研とJASRIはSACLAにとって2本目の共用XFELビームラインとなるBL2を、2013年度から整備してきました(図1)。

BL2は、2014年10月8日に調整運転を開始し、その直後の10月21日にはレーザー発振に成功しています。レーザー発振後も出力を高めるための精密調整を続け、2015年4月16日には1パルスあたり100μJを超える高い出力を実現しました(図2)。2015年4月17日には、BL2による初めての利用研究課題として、理研放射光科学総合研究センターの大浦正樹ユニットリーダーらの研究グループが実験を行っています。

新たに稼働したBL2は、XFEL利用研究の重要ターゲットの1つである生物科学分野における利用を想定しています。世界で初めて複数のXFELビームラインが同時に稼働する施設として、既存のBL3とBL2を効果的に運用することでXFELの利用機会が飛躍的に増加し、学術・産業の発展に一層貢献することが期待されます。

理研放射光科学総合研究センター 石川哲也センター長のコメント

SACLAで2番目、また世界で3番目のXFELビームラインが共用開始したことにより、利用機会の増大が期待できます。今後、スイスや韓国のXFEL施設が立ち上がる予定ですが、リソースの多さを生かし、XFELならではの研究課題により多く取り組むことで、出来るだけリードを広げておきたいと思います。

SACLAの光源棟内部の様子

図1 SACLAに設置されたBL2とBL3のアンジュレータ

SACLAの光源棟内部の様子。右が既存XFELビームラインであるBL3、左が新規XFELビームラインであるBL2のアンジュレータ。SACLAの全長約700mのうち、光源棟は約240mを占める。100mを超える長さに渡って、BL2、BL3それぞれのアンジュレータがマイクロメートルレベルで超精密調整されている。


ユーザー利用実験中のSACLA BL2の運転状況

図2 SACLA BL2の運転状況

ユーザー利用実験中のSACLA BL2の運転状況(図は2015年4月19日17時の時点)。上図よりXFEL光の波長が7.8KeV=0.158nmにおける出力(Pulse Energy)が、1パルスあたり110.1μJであることが分かる。また、下図の青い線が100μJ付近に集中していることから、出力の安定したXFEL光を供給していることが分かる。

補足説明

  1. X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)

    近年の加速器技術の発展によって実現したX線領域のパルスレーザー。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限はない。

  2. SACLA

    理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つで、2006年度から5年間の計画で建設・整備された。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用を開始した。0.1ナノメートル以下という世界最短波長のX線レーザーを発振する能力を有する。
    詳細はX線自由電子レーザー施設 SACLAのホームページ

発表者

理化学研究所
放射光科学総合研究センター XFEL研究開発部門 ビームライン研究開発グループ
グループディレクター 矢橋 牧名 (やばし まきな)

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
お問い合わせフォーム

高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及啓発課
Tel: 0791-58-2785 / Fax: 0791-58-2786
kouhou [at] spring8.or.jp(※[at]は@に置き換えてください。)

産業利用に関するお問い合わせ

理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部
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