広報活動

Print

2015年10月2日

公益財団法人先端医療振興財団
国立研究開発法人理化学研究所
地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院

「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究」における第一症例目の移植手術の経過について

平成26年9月12日に、公益財団法人先端医療振興財団、国立研究開発法人理化学研究所及び地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院が、先端医療センター病院にて実施いたしました、「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究」における第一症例目の移植手術につきまして、1年間の観察期間を終了しましたので、その経過を下記のとおり報告いたします。

研究概要

滲出型加齢黄斑変性の新規治療法開発を目的として、患者本人のiPS細胞から作製したRPEシートを網膜下に移植した際の安全性を確認する。

説明者

栗本康夫
先端医療振興財団 先端医療センター病院 眼科統括部長
神戸市立医療センター中央市民病院 眼科部長
高橋政代
理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー
先端医療振興財団 先端医療センター病院 眼科部長(網膜再生担当)

実施体制

先端医療振興財団
患者への説明(インフォームド・コンセント)、皮膚組織の採取、RPEシートの移植、術前術後の検査
理化学研究所
研究全体の管理、患者から採取した皮膚組織からのiPS細胞の作製、iPS細胞からのRPEシートの作製
神戸市立医療センター中央市民病院
対象患者の選定支援や一部の検査の実施、術中術後の緊急時対応等

経過報告

視力検査、眼圧検査、眼底検査、画像検査等を含む診察を、移植後1週間の入院期間は毎日、その後1ヶ月までは毎週、その後は毎月行い、安全性を確認した。その結果、観察期間を通して経過は良好で、移植したRPEシートは当初の位置に留まり、現在も生着している1。移植したRPEシートによる腫瘍形成など、特段の異常も確認されていない。 また、移植後1年経過時に総合的ながん検査(全身)を行なった結果、腫瘍形成等の異常は確認されなかった。本プロトコール治療(脈絡膜新生血管を取り除いてiPS細胞由来RPEシートを移植する)については、新生血管病巣の再発を認めず、黄斑部網膜の形態的改善を認めた。視機能については、本移植治療前は低下傾向にあった視力が術後は維持に転じ、視覚に関するQOL2の評価スコアは術後に改善した。

iPS細胞由来RPEシートの有効性については、現時点での評価は難しいが、安全性の確認を主目的とした本臨床研究第一症例目の結果は術後1年経過の現時点では良好と評価できる。

  1. 生着とは、移植された細胞が、新しい場所で身体の一部として生きて機能し始めることをいう
  2. QOLとは生活・生命の質(クオリティ)のこと。「Quality of Life(クオリティ・オブ・ ライフ)」の略。 この場合は、治療によって見え方が変わることで日常生活にどのような影響があったか、アンケートに回答してもらうことで評価する