1. Home
  2. 広報活動
  3. お知らせ
  4. お知らせ 2018

2018年8月29日

理化学研究所

「RIKEN和光サイエンス合宿2018」を開催しました。

2018年7月25日(水)から27日(金)の3日間、「RIKEN和光サイエンス合宿2018」を実施しました。「RIKEN和光サイエンス合宿」は、和光地区を会場として、高校生が最新の研究成果に触れ、最先端の研究・技術を体験できるプログラムです。

今回は下記3コースで、Aコース6名、Bコース4名、Cコース6名、計16名の高校生が参加しました。

Aコース:物理分野『宇宙空間に浮かぶ分子を地上で再現してみよう!』by 東原子分子物理研究室
Bコース:化学分野『光を電気に変えてみよう:軽くて柔らかい太陽電池をつくる!』by 創発機能高分子研究チーム
Cコース:生物分野『生命のセントラルドグマを試験管の中で再現してみよう!』by 岩崎RNAシステム生化学研究室

オリエンテーション

1日目の10時、16名の高校生が理研に集合しました。まずは白衣を着て全員で記念撮影。理研の概要紹介を聞いた後、各コースの研究者たちと顔合わせをしました。

オリエンテーションの画像 オリエンテーション
白衣を着て記念撮影の画像 白衣を着て記念撮影

そして、初めて会う仲間とともに2泊3日のハードな“研究生活”をスタートしました。各コースでの実習の様子を紹介しましょう。

Aコース:「宇宙空間に浮かぶ分子を地上で再現してみよう!」

極低温・真空の宇宙空間には、電気的に中性か正イオンの分子(星間分子)が存在し、それらがゆっくり衝突して化学反応が起き、新しい分子がつくられています。東原子分子物理研究室では、「極低温静電型イオン蓄積リング(RICE)」という装置を使って、中性分子と正イオンがゆっくり衝突する状況を地上に再現し、宇宙空間でどのような化学反応が起こるかを研究しています。そのためには正イオンの分子を、RICE内で長時間周回させる必要があります。

6人の高校生は、N2O+をRICEで周回させる実験に挑戦しました。まず、N2Oガスにマイクロ波を照射してN2O+ビームをつくり、その進行方向を電場で調節してRICEに導きます。そして、N2O+がRICEの中でできるだけ長く周回するように制御します。目標は10周です。このような最先端の実験で、高校で学ぶ物理法則がどのように使われているかを学ぶことがテーマです。

極低温静電型イオン蓄積リング(RICE)の画像 極低温静電型イオン蓄積リング(RICE)
RICE制御パネルの前にての画像 RICE制御パネルの前にて
RICEの操作の画像 RICEの操作
発表会に向けて準備の画像 発表会に向けて準備

Bコース:「光を電気に変えてみよう:軽くて柔らかい太陽電池をつくる!」

昨今、家屋の屋根や空き地に太陽電池パネルをみかけるようになりました。それらはシリコンで代表される無機半導体を使ってつくられていて、重くて硬い無機太陽電池です。創発機能高分子研究チームでは、有機半導体を使って軽くてフレキシブルな「有機薄膜太陽電池」を開発しています。

4人の高校生は、有機薄膜太陽電池を作成して光を電気に変える実験に挑戦しました。P3HTとDPPという2種類の有機半導体ポリマーをモノマーから作成し、それぞれの光吸収度を分光光度計で測定します。次にスピンコート法および真空蒸着法という方法を使って有機薄膜太陽電池を作成します。そして作成した有機太陽電池に光を照射して電流と電圧を測定し、性能を評価してみました。

研究者とミーティングの画像 研究者とミーティング
有機半導体ポリマーの作成(1)の画像 有機半導体ポリマーの作成(1)
有機半導体ポリマーの作成(2) の画像 有機半導体ポリマーの作成(2)
有機薄膜太陽電池の作成の画像 有機薄膜太陽電池の作成

Cコース:「生命のセントラルドグマを試験管の中で再現してみよう!」

地球上のすべての生命は、例外なくDNA→RNA→タンパク質に情報が受け渡されることによって維持されています。このルールを「セントラルドグマ」と呼びます。岩崎RNAシステム生化学研究室ではRNAに注目した研究をしています。

6人の高校生は、オワンクラゲがもつ緑色蛍光タンパク質(GFP)をDNAから合成することに挑戦しました。PCR法によりDNAを増幅して電気泳動によってDNAの存在を確認する。次にDNAを転写してRNAをつくり、そのRNAを翻訳してタンパク質をつくる。これらセントラルドグマの一つ一つの過程を試験管の中で再現したのです。GFPタンパク質は青色の光が照射されると緑色の蛍光を発します。最後に、自分が作成したGFPが緑色に光るかを観察しました。

研究者とミーティングの画像 研究者とミーティング
GFPタンパク質をDNAから合成(1)の画像 GFPタンパク質をDNAから合成(1)
GFPタンパク質をDNAから合成(2)の画像 GFPタンパク質をDNAから合成(2)
研究者に質問の画像 研究者に質問

交流会

2日目の夕方には、松本理事長を始め理事の方々、今回の合宿で指導にあたった研究者たちとの交流会がありました。

冒頭、松本理事長は「脅かすようだけど、人間は壊れやすいし、人間の社会も人間が築いた文明も壊れやすい。壊さないようにするためにどうするかを考えるとき、柱の一つとなるのがサイエンスです。皆さんが大学に入って研究者の道に進めば、何を専門にしますかと問われ、選んだ分野を細く深く学ぶことになります。ただ、それだけではいけないということも知っておいてほしいのです。さまざまな分野の知識や知恵をつなげていくことが非常に大切です。いろんな分野の知識を吸収したうえで、つなげることを学べるのは、今の教育システムでは高校までだろうと思います。今の時期を大切にしてください」と高校生たちにエールを送り、「今日は楽しくやりましょう!」と交流会が始まりました。

高校生たちは自己紹介、応募動機、体験の感想などを述べ、別コースの研究者や参加者たちとも交流を深めました。最後は全員で記念撮影。

松本理事長の挨拶の画像 松本理事長の挨拶
松本理事長と高校生たちの画像 松本理事長と高校生たち
全員で記念撮影の画像 全員で記念撮影

体験発表会、修了証授与式

3日目(最終日)の午後は、3日間で学んだこと、分かったことについて発表する「体験発表会」です。どのチームも役割分担して全員で発表しました

Aチームは、イオンを10周周回させることを目標としていましたが、最終的には目標を大幅に上回る70周の周回に成功しました。

Bチームは、作成した有機太陽電池の電流-電圧特性を測定し、光電変換効率6.36%という値を達成しました。

Cチームは6人とも、DNAの増幅、RNAとタンパク質の合成に成功し、GFPタンパク質が緑色に発光することを確認できました。

体験発表会の会場の画像 体験発表会の会場
Aチームの発表の画像 Aチームの発表
Bチームの発表の画像 Bチームの発表
Cチームの発表の画像 Cチームの発表

質疑応答の後、小安理事から講評がありました。いきなり英語で挨拶し、「もし皆さんがサイエンスの道に進もうと思うなら、英語も一生懸命勉強してください」とコメント。そして「3チームともいろいろな考察も含めプレゼンがしっかりしていて感心しました。しかもユーモアも交えた発表で大変良かったです。この後、皆さんはそれぞれの高校生活に戻るわけですが、今回の合宿の経験も活かして勉強に励んでください」と述べました。続いて研究者には「短い期間で原理を理解し結果につながるプログラムをつくるのは大変だったと思います。3つとも良く練られたプログラムで尽力に感謝します」と締めくくりました。そして、小安理事から16名の高校生一人ひとりに修了証が手渡されました。

修了証の授与の画像 修了証の授与(1)
修了証の授与(2)の画像 修了証の授与(2)

修了証授与式の後、コース毎に研究者との最終ミーティングがありました。発表会で質問されたことについて解説してもらったり、今後のためのアドバイスをいただきました。

以上で「RIKEN和光サイエンス合宿2018」が終了となりました。あっという間の3日間でしたが、高校生のみなさんは“研究生活”を実体験することでさまざまな発見、驚き、気づきが得られたと思います。

参加者の感想

合宿に参加した高校生の感想を一部ご紹介します。

  • 3日間の合宿を通して一番に感じたことは、こんなにも研究が面白く楽しいものなんだということです。考え、話し合い、装置を動かしている時間は、夢のようで、あっという間でした。また、合宿で出会う仲間からたくさんの刺激を受け、3日間とは思えないくらいにとても仲良くなりました。理科が大好きだという皆さん、不安はあるかもしれませんが、ぜひ新しい世界に飛び込んでみて下さい。(高1、女)
  • 理化学研究所のいろいろな研究者と関わったことを通して、研究に大切な姿勢や考え方をたくさん学ぶことができました。特に印象に残ったのは、常に疑問をもつこと、研究者同士に上下関係はなく対等な関係で議論を進めていくことの大切さです。私は将来研究者になりたいので、そういった考え方を大切にしていきたいと思いました。同じくらいの年齢の、同じような興味を持った人たちと出会えるのは、本当に貴重な体験になると思います。参加を少しでも考えていたら、ぜひ申し込んでみてください。(高2、女)
  • 僕はこの合宿に参加して人生が変わったような気がします。そう思う理由は2つあります。一つ目は、今まで見たことのない最先端の技術、研究に触れられたのが、非常に大きな経験になったということです。日本の技術をリードする理研の合宿だったというのも、経験の質をさらに高めてくれたと思います。二つ目は、この合宿を通じてたくさんの出会いがあったことです。参加する前はついていけるか不安だったのですが、研究者の方々は生物学の経験の薄い僕でもよく分かるように説明くださいました。そこには、みるみる成長する自分がいました。一緒に参加した仲間たちは優秀で、僕も負けていられないなあという良い刺激をもらいました。日本各地に友達ができるというのは初めてで、一生忘れられないものになりました。参加しようか迷う人は、まず応募してみることが大事ですよ!(高2、男)

最後に、ご協力くださった研究者のみなさまをはじめ、関係部署の方々、高校生を送り出していただいたご家族のみなさまに改めてお礼を申し上げます。


Top