神経系を構成する神経細胞は軸索と呼ばれる突起を伸ばし、互いにつながりあうことで神経回路を形成しています。神経回路の形成過程は、複雑な組織の中でいかに軸索を正確な標的細胞へと誘導するかが重要であり、培養神経細胞等を用いてさまざまな分子メカニズムが解明されてきました。しかし生物組織内においては、その複雑な環境下で軸索がいかに伸長するかについて未だ全容が明らかとなっていません。
東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻の遠藤 瑞己 大学院生と小澤 岳昌 教授らは、理化学研究所 脳科学総合研究センターの上口 裕之 シニア・チームリーダーと東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻の飯野 雄一 教授の研究グループとの共同研究により、新規に作製した光応答性分子を用いて、生きた生体内において軸索に光を照射することによって、その伸長方向を制御する手法の開発に成功しました。また開発した手法を用いて、光照射に対する成長円錐の応答を詳細に解析することで、周囲に物理的障壁がある場合に成長円錐の可動方向が制限されることを明らかにしました。
神経回路の形成は、個体内で軸索周囲の環境が刻々と変化する中で厳密に制御されており、神経回路形成における異常はてんかんやハンチントン病といった深刻な精神疾患につながります。そのため、光照射に対する応答によって特定の発生段階で部位特異的に成長円錐の可動方向を解析しうる本手法は、これらの疾患発症のメカニズム解明や、光誘導による病変した神経回路の修復などに寄与することが期待されます。また、本研究で確立した一連の方法論は、DCC以外の分子にも応用可能であり、近年注目の集まっている生命機能を光によって自在に操作する研究全般の発展に貢献することが期待されます。
原論文情報
- DOI : 10.1038/srep23976
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理化学研究所 広報部 報道担当
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