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2020年5月21日

名古屋大学
富山大学
理化学研究所
高輝度光科学研究センター

極紫外自由電子レーザーによる非線形内殻二重空孔状態の観測に成功

-新たな局所化学分析法の実現への基盤技術-

名古屋大学大学院理学研究科(研究科長:阿波賀邦夫)の伏谷 瑞穂准教授,菱川 明栄教授,富山大学教養教育院の彦坂 泰正教授,理化学研究所と高輝度光科学研究センターの共同研究チームはX線自由電子レーザー施設SACLAから得られる強いレーザー光を利用して,2光子吸収による内殻二重空孔状態に由来する電子スペクトルの観測に成功しました。

極紫外域やX線領域の強いレーザー光を照射された物質は,それを構成している原子に強く捉えられた内殻電子が関与する非線形光学応答を示します。内殻電子が関与する典型的な非線形光学応答である多光子多重イオン化過程では,内殻空孔の崩壊がイオン化とともに連鎖的に進行し,それぞれのイオン化経路に応じて様々な価数のイオン種および多数の電子が放出されることがわかってきました。しかし,こうした複数の経路が関与するイオン化機構をイオンまたは電子のみの観測によって詳細に理解することは容易ではありませんでした。

今回研究グループは磁気ボトル型光電子分光器を用いた多電子−イオンコインシデンス計測を導入することで,それぞれのイオン化過程に由来する電子状態を精密に決定する手法を確立しました。研究グループは極紫外・X線領域における非線形光学応答を調べる際のベンチマークとして用いられるキセノン(Xe)原子を対象とし,多数の電子ピークが幅広く重なった光電子スペクトルの中から内殻二重空孔状態に由来する電子ピークを見出し,その関与が多光子多重イオン化を大きく増強していることを明らかにしました。内殻二重空孔状態は,分子内の局所的な化学環境に敏感であることが知られています。今回導入した測定手法は,様々な物質群の極紫外・X線領域の非線形現象の基礎的理解を深めることを可能とするとともに,原子配置に敏感な新たな局所化学分析法の基盤技術として役立つことが期待されます。

詳細は名古屋大学の報道発表資料をご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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