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2020年11月11日

サリー大学
高エネルギー加速器研究機構
理化学研究所

中性子過剰なタンタル核異性体で探る原子核形状の多様性

-原子核構造の研究から重元素合成の起源天体解明に迫る-

イギリス・サリー大学、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所・和光原子核科学センター(WNSC)、理化学研究所(理研、埼玉県和光市)仁科加速器科学研究センターを中心とする国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」に設置した、WNSCの共同利用元素選択型質量分離器(KISS装置)を用いて、地上に存在する安定なタンタル原子核(181Ta)よりも中性子が6個多い中性子過剰で短寿命なタンタル核異性体(187mTa)の生成・分離・観測に成功しました。

187mTaの崩壊時に放出されるガンマ線や特性X線(各元素に特有のエネルギーを持ちます)を検出することで、核異性体の寿命を決定し、原子核の形状がプロレート変形(ラグビーボールのような形)をしていることを初めて突き止め、その形状を保持したまま、よりエネルギーの低い基底状態(各原子核で最もエネルギーの低い状態)に変化していることを明らかにしました(このように、よりエネルギーの低い状態に変化することを「崩壊」と言います)。

研究対象となった187mTaを含めて、原子番号Z=70-78程度、中性子数N=110-126までの領域は金や白金元素を生み出した重元素合成の源とも考えられており、ラグビーボール型(プロレート変形)やパンケーキ型(オブレート変形)の形状をもつ長寿命な核異性体が数多く存在すると予想されています。このような長寿命な核異性体が重元素合成に及ぼす影響を定量的に理解することは、天体の中でどのようにして金・白金などの重元素が誕生したのかという謎の解明に繋がっています。本研究は、その先駆けともいえます。

詳細は高エネルギー加速器研究機構のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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