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新しい精密計算法を開発し世界ナンバーワンを目指す

仁科加速器研究センター
肥山ストレンジネス核物理研究室 主任研究員 肥山 詠美子

肥山 詠美子主任研究員の写真

原子核の構造を解き明かすのは難しい。物体が落ちるときに加速するというニュートン方程式は有名だが、それをミクロの世界に置き換えた基礎方程式がシュレディンガー方程式。これを精密に解く手法は、原子核内の中性子、陽子の数が3体以上になるとぐっと難しくなる。それに挑戦し、できるだけ多体の基礎方程式を解きたい。それが私たちの研究だ。

世界では今、10体系までの計算が実現している。ただし、陽子、中性子以外の異粒子を含めた10体系ではまだ誰も成功していない。超新星爆発によってできる中性子星内部に存在するハイペロンという異粒子を含めた多体計算に、今、私たちは取り組んでいる。現在、5体系までは成功していて、今年から来年にかけて6体系まで到達できそうだ。できれば5、6年の間には10体系を実現し、世界ナンバーワンを目指したいと思っている。

壁にぶつかったときはおしゃべりで解決

高3の12月、受験を目前に控えた時期に原子核について学び、見えない世界の不思議に興味をもった。もっと深く知りたいと強く願い、医学部志望から一転、物理学科に進んだ。

大学3年のとき、恩師である上村正康先生の授業で、「多体計算理論をマスターすれば世界最前線の研究ができる」と聞き、俄然興味を持つ。「世界最前線」という言葉が魅力的で、自分もそのキラキラした世界に入りたいと、大学院で原子核理論の研究をすることに決めた。ところが、当時成功していた3体計算から4体計算に進むのは数学的にかなりの難題だった。半年間苦しみながらなんとか手軽に使える数学法を編み出すことに成功し、その後の道が開けた。

研究をはじめれば、必ず困難がある。ストーリーを作って計算しても、結果が思った通りに出ないのはよくあることだ。壁にぶつかったときは、私の場合、頭の中だけで考えていても埒が明かないので、人と話をすることにしている。言葉にすると考えがロジカルになって、大切なことに気づくことが多い。あるいは思ってもみなかった解釈のヒントをもらって、一気に解決することもある。論文を書くたびに、周囲の人と議論することで乗り越えている。

年に何回かは、女友達と南の島へ旅行して頭をリセットする。研究のことはほとんど考えず、ただのんびりして、他愛もないおしゃべりでリフレッシュ。日常生活でもストレスが生まれたら、すぐ発散して手放すことにしている。

自分を信じて好きな道を突き進む

夫も研究者で、お互いの勤務地の中間地点に住んでいる。通勤時間は1時間半。お互い別々にアパートを借りている。アパートは30mほど離れている。研究者というのは、個性やこだわりが強い。夫婦といえどもずっと一緒にいると、譲れないことが多くなる。そこで、朝食を一緒に摂って出勤、夜は忙しいのでそれぞれ別の家に戻り、週末は一緒に過ごすという一風変わったスタイルで結婚13年。とてもいい関係を保っている。

学生のときは、自分を信じてまっしぐらに駆けていってほしい。若いうちは失敗してもやり直しがきく。自分をふりかえると、行き当たりばったりの人生だったなと思うが、運がよくてたまたま要所要所で出会いに恵まれた。誰にでも、きっとそんな出会いはあるはずだ。幸運に気づいて、自分がしたいこととマッチさせれば道は開けるだろう。「自分には無理」と思わず、やりたいことに果敢に立ち向かっていってほしいと思う。

(所属・職名は2017年のインタビュー当時のものです)

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