1. Home
  2. 理研について
  3. 男女共同参画・ダイバーシティ推進
  4. 理研で活躍する多様なリーダーたち

臨床医から研究者へ転身 成果の積み重ねに喜びを見出す

統合生命医科学研究センター
腎・代謝・内分泌疾患研究チーム チームリーダー 堀越 桃子

堀越 桃子チームリーダーの写真

私たちの研究室では、Ⅱ型糖尿病に関係する遺伝的バックグラウンドについて研究している。具体的には多くのDNA情報から、ゲノムのどの領域が病気と関係しているのか、どの遺伝子が病気と統計学的に相関があるのかなど、塩基の違いに着目してDNA、RNA、タンパク質レベルまで解析して探っている。そこから、得た情報を臨床にフィードバックし、病気の予測や診断、予後などに応用することを目標としている。

海外へ飛び出して研究の道に

もとから研究者を志していたわけではなく、医者になってから10年以上、東大病院で糖尿病専門の臨床医をしていた。大学院時代に研究も手掛けることになり、ネズミがいない環境を希望したところ、ヒトのDNA研究がいいだろうということになった。はじめは患者さんのDNAを集めて、ひとつひとつタイピングしていくという地味な作業の繰り返しで正直面白くなかったが、とにかく卒業に必要な論文を書くまでは頑張ろうと自分に言い聞かせていた。

ところが、出来上がった論文を持って初めて出かけた海外の学会で、他の研究者たちと話をしたところ、ものすごく刺激を受けてしまったのだ。それですっかり楽しくなり、研究に気持ちが動いた。もちろん、臨床と研究を同時に行っている方もいらっしゃるが、私にはとてもそんなキャパシティがない。日本にいると医者を続けたくなってしまいそうで、思い切ってイギリスに留学することにした。

ヨーロッパのワークスタイルを見習って

オックスフォード大学には6年間在籍し、Ⅱ型糖尿病と出生時体重の関係について研究。そこで成果を出すことができて、半年ほど前理研に移った。帰国してまず驚いたのは、あまりにも女性研究者が少ないこと。オックスフォードでは、研究者の半分弱くらいは女性で、要職にもついていた。女性が結婚し、子育てしながら研究を続けているのはあたりまえ。スカンジナビアの人たちともなると、2年も育休をとった後に何の問題もなく復帰している。日本の現状とあまりにも違うことばかりだ。

ワークスタイルも違う。イギリスでは、みな早く来て集中して働き、早く帰る。休みもたっぷりとる。それでも、クリエイティビティやプロダクティビティは変わらない。私もそれを見習いたいと考えて、集中して研究に打ち込んだ分、休みはきちんととるようになった。

私は研究者として、あまり野心的な方ではない。イギリスでも、常に上を目指している野心的な女性研究者も多いが、その一方でナンバーツーでいいという研究者もいた。私もそのタイプだ。そのかわり、手掛けたプロジェクトは必ず論文につなげる。多くの人たちからデータをもらっているからには、必ず論文にまとめて返す責任がある。それも、できるだけ早くまとめなくては、情報が古くなってしまう。とにかく、自分が納得できるまでやり抜くことが大切だと思っている。

研究を始めて、すぐに楽しくなるとは限らない。結果は出ないし苦しいし、これでいいのかと思うこともあるだろう。けれども一歩一歩積み重ねていれば、いつかきっと成果に結びつく。手を抜かず、諦めず、頑張り続けること。そうやって楽しみや喜びを積み重ねながら、女性研究者が活躍する機会が増えることを願っている。

(所属・職名は2017年のインタビュー当時のものです)

Top