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人類の希少性を知りたくて宇宙の不思議に挑む

坂井星・惑星形成研究室 主任研究員 坂井 南美

坂井 南美主任研究員の写真

宇宙の中で、私たちが住む太陽系のような環境は普遍的にあるものなのか、あるいはとてもレアなものなのか。それによって私たちの存在がどれほど希少なものかを知りたいというのが、現在の研究の動機だ。そのために電波望遠鏡を使って、太陽系以外でガスや塵から今まさに星が誕生している様子を観測し、そこにある物質の性質や量、温度、運動の様子などを観測している。とくに2011年に運用を開始したアルマ望遠鏡はそれまでのものより格段に精度が高く、何が起きているかということがかなり詳細にわかるようになった。

上司の言葉に勇気を得て出産を決意

小学校低学年のときに父から小さな望遠鏡を買ってもらい、クレーターや土星の輪を見て感動したのが宇宙に興味を持つきっかけだった。その後、高校生のときにしし座流星群を見て感激し、天文を志すように。大学で学ぶうちに、太陽系の成り立ちを追求したいと考えるようになり、もしここで好きな分野に進めなかったら就職しようと決めて大学院を受験。進学後は、たとえどのような形でもずっと研究を続けようと決意した。

助教時代の2012年に1人目、2015年に2人目を出産。夫も天文学者なので、理解を得やすいという意味では恵まれている。それでも子どもを産む前には、一時的に研究のクオリティが落ちてしまうことへの不安があり、悩んだ。けれども、当時の上司であった山本智先生が、「雑務は全部引き受けるから、あなたにしかできないサイエンスに集中しなさい」といって、全面的に協力してくれた。これには心から感激し、助教4年目に長男を出産した。

産前6週、産後8週の産休を取って復帰。当初は仕事効率がぐっと落ち、もとに戻るまでに1年ほどかかった。生活は夜型から朝型へシフトし、残業はしない。時間を15分単位、1時間単位に区切って、その時間で何ができるかを考えながら効率化を図るようになった。家に帰ると頭がすっかり切り替わり、子どもが寝てから仕事をしようと思ってもなかなか頭が戻らないほどだ。

面白いと思う気持ちが研究の原点

私は大学院を卒業後、幸運にも助教のポストを得られたが、どんな形でも研究を続けるつもりだったので、様々な進路を想定していた。海外に行くことも考えて、博士課程では根をつめて半年早く論文を書き上げ、9月に博士号を取得。塾の講師や家庭教師になる道も考え、教員免許を取得した。

宇宙に関することに携わりつづけるだけなら、博士号とパソコンを持って、見栄やプライドをなくせば必ず生きていける。実際、就職したあとに学芸員として戻った人もいる。心から面白いと思えることを追求すれば、評価はあとからついてくるものだ。また、生涯その分野と決めず、その時々に面白いと思えるものが見つかったら移ってもいい。面白いと思っていると、不思議なもので自然のほうからいろいろなことを教えてくれる。

研究者を志す人たちには、とにかく好きなことにとことん取り組んでほしい。研究は思い通りにならないのがあたりまえ。常に裏切られてばかりだが、失敗や苦労を面白いと感じてこそ次のチャレンジが生まれる。そんな前向きなマインドを持つ人たちの将来に期待したい。

(所属・職名は2017年のインタビュー当時のものです)

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