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2019年2月5日

高温プラズマから銀河の進化を読み解く研究者

X線天文衛星を用いて、太陽系が存在する天の川銀河の高温プラズマを観測している研究者がいる。開拓研究本部 玉川高エネルギー宇宙物理研究室の中島真也 基礎科学特別研究員(以下、研究員)だ。夜空を見上げると、たくさんの星が輝いている。それは、星が私たちの目に見える光、可視光線を出しているからである。一方、プラズマとは原子が電離し陽イオンと電子に分かれて動き回っている状態で、高温のプラズマは可視光線では見えない。数百万度のプラズマは、可視光線ではなくX線を出して輝いているからだ。「X線を用いると、激しく変動する宇宙の姿が見えてきます。それに惹かれてX線天文学に進みました」そう語る中島研究員の素顔に迫る。

中島真也

中島真也 基礎科学特別研究員

開拓研究本部 玉川高エネルギー宇宙物理研究室

1985年、茨城県生まれ。博士(理学)。京都大学理学部理学科卒業。同大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員DC1、宇宙航空研究開発機構宇宙航空プロジェクト研究員を経て、2017年より現職。

天の川銀河の円盤から超新星爆発で生成された高温プラズマが噴 き出し、銀河全体を包み込んでいる様子の想像図の画像 図 天の川銀河の円盤から超新星爆発で生成された高温プラズマが噴 き出し、銀河全体を包み込んでいる様子の想像図

中島研究員は小学生のころ、毎月、楽しみにしているものがあった。小学生向けの学習雑誌『科学』だ。「大好きで、繰り返し読みました。『科学』を読んでいなかったら、今、私はここにいないかもしれない」と言う。「太陽はなぜ東から西へ動くのかなど、ものの仕組みに興味があり、当時から科学者になりたいと思っていました」

京都大学理学部理学科へ進学。そして研究をやってみたいと、大学院へ。中島研究員が入った宇宙線研究室のX線グループは、日本のX線天文衛星「すざく」の開発に携わり、2005年の打ち上げ後は運用にも参画していた。「私も年に数回、鹿児島県にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所に1~2週間滞在し、『すざく』の運用を行いました。コマンドと呼ばれる命令を送信して地上550kmの宇宙空間を飛行している衛星を制御し、観測データを受信します。初めてのときはとても緊張しました」。観測データを用いて研究を行い、天の川銀河の中心で爆発的な現象が起き、高温プラズマが噴き出していることを明らかにした。「誰も知らなかったことを自分の手で明らかにし、それを論文として発表する。研究は、何てエキサイティングで面白いのだろう。X線天文学の研究者として生きていこう、と決めました」

学位取得後は、JAXAでX線天文衛星「ひとみ」の開発に取り組んだ。2016年2月に打ち上げられたが、3月に異常が発生し、4月に運用を終了。「異常発生前にいくつか観測を行っていたデータを解析すると『すざく』では見えなかったものがはっきり見えていただけに、とても残念」と中島研究員。

2017年、理研へ。2018年には、天の川銀河全体を包み込んでいる高温プラズマの起源を明らかにした(図)。その存在は知られていたが、高温プラズマは希薄なためX線が弱く、分布や物理的な性質が分からず起源は不明だった。「すざく」は、希薄な高温プラズマが出すX線に対して過去最高の感度を持つ。そこで中島研究員らは、「すざく」の観測データを用いて高温プラズマの温度や密度、元素組成を正確に求めることに成功。その結果、天の川銀河を包み込んでいる高温プラズマは、重い星が一生の最後に起こす大爆発(超新星爆発)によって生成された高温プラズマが銀河円盤から噴き出したものであること、それは円盤状に分布していることが分かった。高温プラズマは10億年くらいかけて冷えて銀河円盤に戻り、新しい星の材料になると考えられる。高温プラズマは銀河内の物質循環や銀河の進化を解明する重要な鍵となることから、この成果は大きな注目を集めている。「『すざく』の10年分の観測データを使っています。私が内之浦で運用したときのデータも入っているので、感慨深いですね」

高校から始めた弓道を、大学でも続けた。「弓道は、決められた一連の動作を正確に行うことが重要です。それが性に合っていたのでしょう。集中して好きなことをやるのは得意です」。では今、好きなことは?「やっぱり研究かな」と笑う。

日本では、2020年度にX線天文衛星「XRISM」の打ち上げを予定している。中島研究員も開発に参加し、「見える世界が変わる」と楽しみにしている。「私の野望としては、天の川銀河以外の銀河についても高温プラズマの分布を調べ、銀河の進化、そして宇宙の進化を解き明かしたい。それを可能にする次世代のX線検出器の開発にも取り組むつもりです」

(取材・執筆:鈴木志乃/フォトンクリエイト)

『理研ニュース』2019年2月号より転載

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