ヒトの「細胞地図」をつくる
ヒトの遺伝子やDNAを研究し、「細胞地図」の作成を進めているホン・ヂョン チョウ 博士を訪ねました。博士といっしょに「細胞」について考えよう!

私たちの体は約37兆個の「細胞」でできています。私は、そのすべての細胞の特徴や働きを明らかにして、人体の細胞地図をつくろうという国際プロジェクトに参加しています。
細胞の中には、体をつくる設計図である「遺伝子」が存在しますが、人によって少しずつ設計図がちがっていて、使われる遺伝子もちがいます。みんなの顔が一人一人ちがうのはそのためです。遺伝子はDNAという物質の一部ですが、DNAには遺伝子のほかに、どの遺伝子を使うかを決める「スイッチ」がたくさんあることがわかってきました。私は、そのスイッチについて調べています。もし、すべての細胞の情報がわかれば、どの細胞でどのスイッチが入ったらどんな病気になるのか、なども知ることができるでしょう。壮大なプロジェクトですが、地図の完成を目指して頑張っています。










細胞の大きさは約0.01ミリ。こんなに小さな細胞を1個1個調べるのは、とても難しいことだよ。たとえば病気になったとき、これまでは組織や臓器からとった細胞の集まりを、かたまりとして調べるしか方法がなかったけど、解析技術が大きく進んだことで、細胞ごとにデータをとって分析し、どの細胞が病気の原因になっているのかがわかるようになったんだ。また、細胞はとても多様で、同じ種類の細胞でもそれぞれ個性があることがわかってきたんだよ。


私たちの体をつくる37兆個もの細胞たち。どの細胞がどこにあって、どんな働きをしているのか、たがいにどう関わっているのか、実はまだよくわかっていないんだ。そこで、1個1個の細胞をくわしく調べて、どこでどんな働きをしているのかがわかる「細胞地図」をつくろうとしているよ。






どんな病気にかかりやすいか、かかりにくいかは、その人の体質や住んでいる国・地域、生活環境などで変わってくるよ。でも、今までに集められた研究データは、ヨーロッパやアメリカの人たちのものが多く、他の地域の人たちのデータは少ないんだ。このプロジェクトでは、世界中の人からデータをもらって、多くの人に当てはまる細胞地図をつくることを目指しているよ。



私たちはそれぞれ特徴をもった体つきをしているね。そうした差が生まれるのも細胞の特徴によるものだよ。たとえば背が高い人は、ひざの骨に背を高くするスイッチが入った細胞があると考えられていて、現在調べているよ。


"健康"を細胞レベルで理解できるようになるから、病気の診断や治療、薬の開発などに大きく役立つと期待されているよ。もしかしたら未来では、全身をスキャンして細胞地図と比べることで、どの部分の細胞が病気なのかがすぐわかるようになるかもしれないね。




制作協力 / サイテック・コミュニケーションズ、編集・文 / 財部恵子、デザイン・イラスト / 藤原有紀子、撮影 / 古末拓也
画像提供 / papa88 / PIXTA(*1,2,4,5)、チャイ99 / PIXTA(*3)