「物質」はどうやってできたの?
今回は仁科加速器科学研究センターのセンター長、櫻井 博儀 博士を訪ねました。
博士といっしょに「物質(ぶっしつ)」や「元素(げんそ)」について考えよう!

私たちの身の回りには、たくさんのもの(物質)がありますね。えんぴつやスマートフォン、木々や街並み、地球も人間もみんな物質です。どうしてこんなにいろいろな物質が存在するのでしょう?共通しているのは、すべて宇宙でつくられた物質のもと=「元素」からできているということです。
仁科加速器科学研究センター(仁科センター)には、人工的に元素をつくり出すことができる世界一の施設があり、多くの研究者が「元素は宇宙でどうつくられたのか?」「人間は自在に元素をつくることができるのか?」という二つのなぞに挑んでいます。新しい元素「ニホニウム」をつくることにも成功しました。こうした研究の成果を、みんなの暮らしに役立てる研究も行っています。これからも元素のなぞに挑戦し、すぐれた成果を生み出したいと思っています。





身の回りにある元素は宇宙でつくられたものだよ。138億年前に起きた「ビッグバン」と呼ばれる大爆発で、まず水素やヘリウムなどがつくられ、やがて星(恒星)が生まれると、その内部で炭素や酸素、鉄などの元素がつくられるようになったんだ。鉄より陽子の数が多い重い元素がどうやってできたのかはまだなぞが多いけど、寿命を迎えた星が大爆発したとき(超新星爆発)や、中性子星同士が衝突・合体したときにできると考えられているよ。



現在知られている元素は118種類。その中には宇宙でどのようにできたのかよくわかっていない元素や、宇宙にほんの一瞬だけ存在し、自然界にはすでに存在しない元素もあるんだよ。そうした元素をすべてつくり出せれば、物質の成り立ちのなぞを明らかにできるかもしれない。仁科センターでは最先端の装置を使って、そのなぞに挑戦しているよ。

ニホニウムの発見や元素発見の歴史なども掲載された周期表を、仁科加速器科学研究センターのホームページからダウンロードできるよ。

複数の原子核を衝突させてくっつけ、新たな原子核をつくる方法(核融合)と、原子核を壊して複数の原子核をつくる方法(核分裂)があるよ。宇宙でつくられる元素やニホニウムのような重い元素を人間がつくり出すためには、すぐれた加速器装置が不可欠だよ。


仁科センターの地下には、寿命の短い"不安定な原子核(RI)"をつくり出すことができる世界一の加速器施設があるよ。その名も「RIビームファクトリー」。世界中からたくさんの研究者が集まって、実験や研究を行っているよ。

科学のフロンティア16 元素の起源を探る ~理研RIビームファクトリー~


6基の超伝導電磁石をもつ史上最も高性能な加速器。

衝突によってさまざまな原子核(RI)を生成し、種類ごとに分けて実験装置へ送る。

RIビームファクトリーでは、地球には存在しない原子核の性質を調べているよ。たとえば、観測するのはとても難しいけど、ほとんどの原子核は完全な球体ではなく、いろいろな形をしていることがわかってきたんだ。原子核はまだ多くのなぞに包まれているんだよ。




理研の研究グループは、原子番号30番の「亜鉛(元素記号Zn)」と83番の「ビスマス(Bi)」を核融合させ、113番の元素をつくることに成功! 2015年12月、新元素として国際的に認定されたんだ。「ニホニウム(Nh)」と名付けられたこの元素は、日本発の元素としてはじめて周期表に掲載されたんだよ。

理研(埼玉県和光市)の西門前に設置。

原子番号113のニホニウムは113個の陽子をもっているよ。


制作協力 / サイテック・コミュニケーションズ、編集・文 / 財部恵子、デザイン・イラスト / 藤原有紀子、撮影 / 古末拓也