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「物質」はどうやってできたの?

今回は仁科加速器科学研究センターのセンター長、櫻井 博儀 博士を訪ねました。
博士といっしょに「物質(ぶっしつ)」や「元素(げんそ)」について考えよう!

櫻井 博儀 博士の写真

櫻井 博儀 博士

仁科加速器科学研究センター
センター長

キャラクター画像「博士はどんな研究をしているの?」

私たちの身の回りには、たくさんのもの(物質)がありますね。えんぴつやスマートフォン、木々や街並み、地球も人間もみんな物質です。どうしてこんなにいろいろな物質が存在するのでしょう?共通しているのは、すべて宇宙でつくられた物質のもと=「元素」からできているということです。

仁科加速器科学研究センター(仁科センター)には、人工的に元素をつくり出すことができる世界一の施設があり、多くの研究者が「元素は宇宙でどうつくられたのか?」「人間は自在に元素をつくることができるのか?」という二つのなぞに挑んでいます。新しい元素「ニホニウム」をつくることにも成功しました。こうした研究の成果を、みんなの暮らしに役立てる研究も行っています。これからも元素のなぞに挑戦し、すぐれた成果を生み出したいと思っています。

すべての物質は、「原子」という小さな粒でできています。原子ってどういうものなのかな?
ものと原子の図 原子をくわしく見てみると・・・ 真ん中に「陽子(ようし)」と「中性子(ちゅうせいし)」でできた「原子核(げんしかく)」があり、その周りを「電子(でんし)」が飛び回っているよ。
博士「原子にはいろいろな種類があって、それを「元素」と呼んでいます。元素の性質は、原子核の中の陽子の数で決まります。」キャラクター「陽子が6個あるのは、「炭素」という元素なんだって。」
宇宙は元素の工場
キャラクター「いろいろは元素はどうやってできたのかな?」

身の回りにある元素は宇宙でつくられたものだよ。138億年前に起きた「ビッグバン」と呼ばれる大爆発で、まず水素やヘリウムなどがつくられ、やがて星(恒星)が生まれると、その内部で炭素や酸素、鉄などの元素がつくられるようになったんだ。鉄より陽子の数が多い重い元素がどうやってできたのかはまだなぞが多いけど、寿命を迎えた星が大爆発したとき(超新星爆発)や、中性子星同士が衝突・合体したときにできると考えられているよ。

ビッグバン「水素やヘリウムなど、陽子の数が少ない軽い元素ができた。」恒星「星の内部では、水素からヘリウムが、さらに炭素、酸素、鉄などの元素がつくられる。」中性子星の衝突・合体、超新星爆発「金や銀、ウランなどの重い元素は、超新星爆発やその後にできる中性子星が衝突・合体するときにつくられると考えられている」
博士「みんなの体も、宇宙の工場でつくられた元素を材料にして、できているんだよ。
元素誕生のなぞに挑戦する!

現在知られている元素は118種類。その中には宇宙でどのようにできたのかよくわかっていない元素や、宇宙にほんの一瞬だけ存在し、自然界にはすでに存在しない元素もあるんだよ。そうした元素をすべてつくり出せれば、物質の成り立ちのなぞを明らかにできるかもしれない。仁科センターでは最先端の装置を使って、そのなぞに挑戦しているよ。

周期表 周期表。この世界をつくっている元素の一覧表だよ。113番のニホニウム(Nh)は理研が発見した元素。
ニホニウムの発見や元素発見の歴史なども掲載された周期表を、仁科加速器科学研究センターのホームページからダウンロードできるよ。
元素をつくるには?

複数の原子核を衝突させてくっつけ、新たな原子核をつくる方法(核融合)と、原子核を壊して複数の原子核をつくる方法(核分裂)があるよ。宇宙でつくられる元素やニホニウムのような重い元素を人間がつくり出すためには、すぐれた加速器装置が不可欠だよ。

核融合と核分裂の図 キャラクター「元素ってつくれるのかな?」 原子核の中の陽子の数を変えることで、別の元素をつくることができる。
世界最強の実験施設 RIビームファクトリー

仁科センターの地下には、寿命の短い"不安定な原子核(RI)"をつくり出すことができる世界一の加速器施設があるよ。その名も「RIビームファクトリー」。世界中からたくさんの研究者が集まって、実験や研究を行っているよ。

RIビームファクトリーの図 RIビームファクトリー。さまざまな原子核(RI)をつくり出し、その性質を調べているよ。くわしくは動画を見てね。
科学のフロンティア16 元素の起源を探る ~理研RIビームファクトリー~
今尾 浩士 博士「私はビームを何倍も加速しやすくする装置をつくったよ。強いビームをあてても壊れないのが大発見!」
超伝導リングサイクロトロンの写真 超伝導リングサイクロトロン(SRC)。
6基の超伝導電磁石をもつ史上最も高性能な加速器。
超伝導RIビーム生成分離装置の写真 超伝導RIビーム生成分離装置(BigRIPS)。
衝突によってさまざまな原子核(RI)を生成し、種類ごとに分けて実験装置へ送る。
原子核の形はいろいろ

RIビームファクトリーでは、地球には存在しない原子核の性質を調べているよ。たとえば、観測するのはとても難しいけど、ほとんどの原子核は完全な球体ではなく、いろいろな形をしていることがわかってきたんだ。原子核はまだ多くのなぞに包まれているんだよ。

原子核の形 みかん型?レモン型?バナナ型?洋ナシ型?
鈴木 大介 博士「原子核の形は核融合や核分裂のしやすさにも関係します。私はその不思議な性質について調べているよ。」
RIビームファクトリーでは、いろいろは博士が発明や発見をしているんだね
新たな元素ニホニウムの誕生

理研の研究グループは、原子番号30番の「亜鉛(元素記号Zn)」と83番の「ビスマス(Bi)」を核融合させ、113番の元素をつくることに成功! 2015年12月、新元素として国際的に認定されたんだ。「ニホニウム(Nh)」と名付けられたこの元素は、日本発の元素としてはじめて周期表に掲載されたんだよ。

プレートの写真 ニホニウム発見を記念してつくられたプレート。
理研(埼玉県和光市)の西門前に設置。
アイロンビーズでつくったニホニウムの原子核模型の写真 アイロンビーズでつくったニホニウムの原子核模型。
原子番号113のニホニウムは113個の陽子をもっているよ。
博士からみんなへ、考えてみよう「現在、原子番号118番までの元素が知られているけど、元素はいったい何番元素まであると思う?」
キャラクター「新しい元素はどうやったら見つかるのかな?」「すごい装置を発明したら、つくれるのかな?」「わかったらノーベル賞をもらえるかな?」

制作協力 / サイテック・コミュニケーションズ、編集・文 / 財部恵子、デザイン・イラスト / 藤原有紀子、撮影 / 古末拓也

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