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シミュレーションで何ができるの?

スーパーコンピュータを使って、さまざまなシミュレーションを行う坪倉誠博士を訪ねました。博士といっしょに「シミュレーション」について考えよう!

キャラクター画像「博士はどんなことをしているの?」

私は空気や水の流れ方を、コンピュータを使ってシミュレーションし、それをものづくりなどに応用しています。現在はおもに自動車メーカーと連携し、車の性能に関わるシミュレーションのシステムを設計しています。
新型コロナウイルスの感染が拡大していたころには、飛沫の飛び方を シミュレーションし、目に見える形で発表しました。それをきっかけにさまざまな研究者から声がかかり、新たな研究につながりました。見えないものを見えるようにするシミュレーションには、異なる分野の専門家たちを集め、その知識を一つにまとめる力があると実感しています。将来は、災害などの緊急時に最適な答えを導き出すためにも、シミュレーションを中心とした専門家たちの集まる場をスーパーコンピュータの中につくりたいと考えています。

「シミュレーション」は、日常のさまざまなところで役立っています。どんなところに使われているのかな?
3次元的な雨の予測の図 天気予報 気温や風、雨の量などをシミュレーションして天気を予測しているよ。画像は3次元的な雨の予測。
太陽や地球など星の図 宇宙の研究 その成り立ちやしくみ、進化など、壮大な宇宙の姿をシミュレーションで調べることができるよ。
薬の図 新しい薬の開発 病気に効く成分を効率よく調べて薬を設計する。
キャラクターがゲームをしている図 ゲーム 飛行機を操縦したり、車を運転したりするゲームは、シミュレーションの一つだよ。
スキー・ジャンプのと空気の流れの図 スポーツ スキー・ジャンプ競技の金メダリストの動作と空気の流れを調べ、飛ぶ姿勢などを研究。
飛沫の広がり方のシミュレーションの図 感染症の対策 飛沫の広がり方やマスクの効果を明らかにし、新型コロナウイルスの感染リスクを減らすことに貢献したよ。
キャラクター画像「スキーのジャンプ競技と飛沫の広がり方のシミュレーションは博士が行ったんだって!」
シミュレーションってなに?
キャラクター「シミュレーションってどんなことをするのかな?」

あらゆる自然現象はなんらかの法則の上に成り立っていて、「式」で表すことができるよ。その式を解けば、現象をコンピュータの中に再現し、観察したり予測したりできるんだ。それが「シミュレーション」だよ。現実には実験できないことも、シミュレーションでなら調べることができるから、物事のしくみを探ったり、製品の性能を調べたり、未来を予測したり、さまざまな分野で必要不可欠な技術になっているんだよ。

科学の研究方法

大きく分けて二つの研究方法があるよ。
それらが合わさって科学は発展してきたんだ。

現実空間と仮想空間の実験の画像
シミュレーションはコンピュータ上の仮想空間で行うので「仮想実験」とよぶこともできます。
車の開発に欠かせないシミュレーション
キャラクター「ものづくりで行われているのはどんなシミュレーションかな?」

ものづくりの現場でもシミュレーションは大きな力を発揮しているよ。たとえば車を開発・設計するとき、どのようにシミュレーションが行われているのか、見てみよう!

空気の力や流れを調べる

走っている車は空気から力を受けていて、それが車の性能に大きく影響する。そのため、試作車や模型に送風機で風を当てて、空気の流れを調べる実験が必要なんだ。ただ、実験だと実際に走るときと状況が異なるし、時間も費用もかかってしまう。そこで、実験の代わりにシミュレーションが行われるようになっているんだよ。

車への抵抗力と揚力を示した図 空気の抵抗力が小さいほど燃費はよくなるけど、車を浮かせる力(揚力)が大きくなって安定性が悪くなる。というように、空気の流れは車の性能に大きく関係しているよ。
キャラクター画像「騒音、雨の日の視界、車体の汚れやすさなども空気の流れに関係しているんだって!」
仮想空間で車を走らせる

最近は実験の代わりだけでなく、現実により近い状態でシミュレーションができるようになっている。コンピュータの中で車を走らせ、突風や追い越し、急ハンドルなど、現実の実験では難しいことや危険なことも調べることができるんだ。

車への空気の流れのシミュレーションの図 設計図さえあれば、車をコンピュータの中で仮想的に走らせることができるよ。
車のまわりのうずは空気の流れ。
車の形を少しずつ変えて性能を調べたシミュレーションの図 シミュレーションでは、車の形を少しずつ変えて性能を調べ、いちばん適した形を探し出すことができる。
AIとシミュレーションが一つに!

シミュレーションでは、車の形を少しずつ変えて性能を調べ、いちばん適した形を探し出すことができる。

シミュレーションの結果をコンピュータに学習させてAIが形を提案するまでの図 シミュレーションで性能を調べたたくさんの形を、コンピュータに学習させることで、AIが最適な形を提案してくれるようになったんだ。AIとシミュレーションが強く結びついたものづくりが、未来のものづくりになっていくのかもしれないね。
車のデザインもAIが提案

売れるのは性能がよくて、デザインもいい車。ただ、性能を追求するエンジニアとかっこよさを追求するデザイナーは目指すものがちがうから、バランスをとるのはとても難しいんだ。そこで、デザイナーのデザインを数値化してコンピュータに入れることで、両方がいいと思える形をAIが探し出し、提案できるようになってきたんだよ。

握手するエンジニアとデザイナーの図
シミュレーションによって得られたデータを学習することで、コンピュータが人間のパートナーのような働きをするようになっているんだよ。
スーパーコンピュータ「富岳」
キャラクター「シミュレーションに使われるのは、どんなコンピュータなのかな?」

非常に複雑なシミュレーションやAIの計算を可能にするのが、スーパーコンピュータ「富岳」。みんなのパソコンの数十万倍ものスピードで計算できるから、短時間でものすごい量のデータを処理することができるんだ。

富岳の写真 432台もの巨大な計算機ラックがつながって「富岳」というコンピュータシステムをつくっているんだよ。
博士からみんなへ、考えてみよう「これから先の未来、コンピュータと人間の関係はどうなっていくのか、みんなで考えてみよう。」
キャラクター「昔は人間が指示したことをやるだけだったけど、今はパートナーみたいなんだよね?」「コンピュータがもっと高度になったら、人間は何をすればいいのかな?」「人間にできてコンピュータにできないことってなんだろう?」

(編集・文:財部 恵子/デザイン・イラスト:藤原 有紀子/撮影:大島 拓也/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)
画像提供:国土地理院(*1の地図データ)、北翔大学・神戸大学・理研(*2)、理研・豊橋技術科学大学(協力:京都工芸繊維大学・大阪大学)(*3)、マツダ株式会社(*4、*5)――マツダ(株)から許諾を得て使用しているため、他への転載・転用を一切禁ずる

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