脳の中ではどんなことが起きている?
脳の活動を観察し、記憶のしくみについて研究している藤澤 茂義 博士を訪ねました。
博士といっしょに「脳」や「記憶」について考えよう!
![キャラクター画像「博士はどんなことをしているの?」](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_2.jpg)
「昨日、学校でテストを受けた」「去年の夏、海で泳いだ」など、私たちには「いつ、どこで、何をしたか」という記憶があります。私は、自分が経験した出来事が「記憶」として刻まれるとき、脳の中で何が起きているのかを探る研究をしています。
実験にはおもにラット(ネズミ)を使います。ラットの脳の活動を記録し、解析するのですが、ラットも人間と同じように時間や場所を理解し、記憶していることがわかります。言葉を話さない動物が、食べもののありかについて何か考えている、まさにその瞬間の脳の活動を見ることができるのはとても面白く、この研究の大きな魅力です。今後は、「いつ」「どこで」「何をした」というそれぞれの情報が、脳の中でどう組み合わさって記憶が形づくられていくのかを明らかにしたいと考えています。
![友だちと話す、体を動かす、感動する…。これらはすべて脳の働きによるものです。脳はどうしてそんなことができるのかな?](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_3.jpg)
![サッカーをする、冷たい!と感じる、おしゃべりするなどを考えているの図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_4.jpg)
![博士「ヒトの脳には約1,000億個もの「神経細胞」があります。神経細胞はつながり合って、さまざまな情報のやりとりをしています。その結果、私たちは話したり、体を動かしたり、感動したりできるのです。」キャラクター「神経細胞は「ニューロン」とも呼ばれているよ。」](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_5.jpg)
![脳の中で情報が伝わるしくみ](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_6.jpg)
![キャラクター画像「情報はどうやってやりとりされるのかな?」](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_7.jpg)
無数の神経細胞は、迷路のように複雑なネットワーク(神経回路)をつくっているよ。
私たちが光や音などの刺激を受けたときや、運動したり、勉強したり、おしゃべりしたりするとき、その情報は電気信号としてネットワーク上をすばやく伝わるんだよ。
![神経細胞のネットワークのCG](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_8.jpg)
![神経細胞の図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_9.jpg)
神経細胞のつながり。神経細胞どうしのつなぎ目(シナプス)にはわずかなすき間があって、電気信号は伝わらない。そこで、電気信号を化学物質(神経伝達物質)に変えて次の神経細胞に届け、ふたたび電気信号に変えることで情報を伝えているんだ。
![脳の活動を見る](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_10.jpg)
![虫眼鏡を覗くキャラクターの図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_11.jpg)
脳の働きを調べる技術が進歩し、研究が大きく進んでいるよ。脳にはまだわからないことがたくさんあるけど、私たちの脳がいつ、どんなふうに活動するのか、次第に明らかになってきているんだ。
![MRI装置で撮影された脳の図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_12.jpg)
![脳内の活動記録の図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_13.jpg)
![大脳皮質の神経細胞の図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_14.jpg)
![変化する脳の回路](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_15.jpg)
下の絵には何かがかくれています。よく見て探してみよう。
![何かがかくれている絵](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_16.jpg)
見つかったかな?答えがわかったら、もうそれにしか見えないはずだよ。それは脳が「学習」したから。新しいことを知ったり、経験したりすると、神経細胞どうしの結びつきが強くなるんだ。脳はつねにアップデートをくり返し、変化しているんだね。答えの画像はこっちにあるよ。
![シナプスの図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_17.jpg)
学習によって神経細胞が活動すると、シナプスが大きくなって結びつきが強まり、情報が伝わりやすくなるんだよ。
![記憶には種類がある](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_18.jpg)
脳の神経回路が変化し、学習したことが保たれている状態が「記憶」しているということだよ。記憶にはいくつもの種類があって、それぞれ脳の異なる場所に保存されているんだ。
![言葉で説明できる記憶、言葉で説明できない記憶の図](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_19.jpg)
![キャラクター「記憶力をよくする方法はありますか?」博士「大切なのは、くり返し学習して神経細胞の結びつきを強くすること、好奇心をもって学ぶこと、記憶を定着させるために、しっかり睡眠をとることだよ。」](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_20.jpg)
![脳の中に地図がある!!?](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_21.jpg)
脳の中には地図やGPSのような働きをする神経細胞があることがわかっているよ。「場所細胞」と呼ばれるもので、自分がどこにいるのかを理解するだけでなく、時間の経過や、エピソード記憶にも関係しているんだ。
![ある空間にいるラットの脳の活動を観察。この場所に来ると脳の海馬にある「場所細胞A」が活動。この場所に来ると「場所細胞B」が活動。場所細胞がたくさん集まると空間全体をカバーできる](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_22.jpg)
![博士からみんなへ、考えてみよう「最近話題のAI(人工知能)。AIと人間の脳は何がちがっているのか、あるいはちがわないのか、考えてみよう!」](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_23.jpg)
![キャラクター「AIはもともと人間の脳の神経回路をまねしてつくられたんだって。」「人間にできてAIにできないことはなんだろう?」「AIには体がないよね?」](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_24.jpg)
![かくし絵の答え。黒ぶちの犬の画像](/medialibrary/riken/pr/hakase/s_fujisawa/s_fujisawa_fig_25.jpg)
(編集・文:財部恵子/デザイン・イラスト:藤原有紀子/撮影:相澤正。/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)
画像提供:機能的磁気共鳴画像測定支援ユニット(*1)、時空間認知神経生理学研究チーム 藤澤茂義チームリーダー(*2)、細胞機能探索技術研究チーム 宮脇敦史チームリーダー・濱裕専任研究員(*3)