脳の中ではどんなことが起きている?
脳の活動を観察し、記憶のしくみについて研究している藤澤 茂義 博士を訪ねました。
博士といっしょに「脳」や「記憶」について考えよう!

「昨日、学校でテストを受けた」「去年の夏、海で泳いだ」など、私たちには「いつ、どこで、何をしたか」という記憶があります。私は、自分が経験した出来事が「記憶」として刻まれるとき、脳の中で何が起きているのかを探る研究をしています。
実験にはおもにラット(ネズミ)を使います。ラットの脳の活動を記録し、解析するのですが、ラットも人間と同じように時間や場所を理解し、記憶していることがわかります。言葉を話さない動物が、食べもののありかについて何か考えている、まさにその瞬間の脳の活動を見ることができるのはとても面白く、この研究の大きな魅力です。今後は、「いつ」「どこで」「何をした」というそれぞれの情報が、脳の中でどう組み合わさって記憶が形づくられていくのかを明らかにしたいと考えています。





無数の神経細胞は、迷路のように複雑なネットワーク(神経回路)をつくっているよ。
私たちが光や音などの刺激を受けたときや、運動したり、勉強したり、おしゃべりしたりするとき、その情報は電気信号としてネットワーク上をすばやく伝わるんだよ。


神経細胞のつながり。神経細胞どうしのつなぎ目(シナプス)にはわずかなすき間があって、電気信号は伝わらない。そこで、電気信号を化学物質(神経伝達物質)に変えて次の神経細胞に届け、ふたたび電気信号に変えることで情報を伝えているんだ。


脳の働きを調べる技術が進歩し、研究が大きく進んでいるよ。脳にはまだわからないことがたくさんあるけど、私たちの脳がいつ、どんなふうに活動するのか、次第に明らかになってきているんだ。




下の絵には何かがかくれています。よく見て探してみよう。

見つかったかな?答えがわかったら、もうそれにしか見えないはずだよ。それは脳が「学習」したから。新しいことを知ったり、経験したりすると、神経細胞どうしの結びつきが強くなるんだ。脳はつねにアップデートをくり返し、変化しているんだね。答えの画像はこっちにあるよ。

学習によって神経細胞が活動すると、シナプスが大きくなって結びつきが強まり、情報が伝わりやすくなるんだよ。

脳の神経回路が変化し、学習したことが保たれている状態が「記憶」しているということだよ。記憶にはいくつもの種類があって、それぞれ脳の異なる場所に保存されているんだ。



脳の中には地図やGPSのような働きをする神経細胞があることがわかっているよ。「場所細胞」と呼ばれるもので、自分がどこにいるのかを理解するだけでなく、時間の経過や、エピソード記憶にも関係しているんだ。




(編集・文:財部恵子/デザイン・イラスト:藤原有紀子/撮影:相澤正。/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)
画像提供:機能的磁気共鳴画像測定支援ユニット(*1)、時空間認知神経生理学研究チーム 藤澤茂義チームリーダー(*2)、細胞機能探索技術研究チーム 宮脇敦史チームリーダー・濱裕専任研究員(*3)