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選書アドバイザー 中野 明彦

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中野 明彦
光量子工学研究センター 特別顧問

専門は細胞内膜交通。タンパク質が細胞内でどのように運ばれるのか、メカニズムを研究している。1980年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻博士課程修了(理学博士)。1997年理化学研究所に入所し、生きたまま細胞内の様子を捉える「ライブイメージング」技術の開発に取り組む。東京大学大学院理学系研究科教授、光量子工学研究領域チームリーダーなどを経て、2018年より光量子工学センター副センター長、2022年より現職。

10代の若者へのメッセージ

何が役に立つかは、人生が終わるまでわかりません。『何のために』とは思わず、少しでも興味を覚える本があれば、手当たり次第に読んでみることをおすすめします。

科学と読書

Q. 幼少期の印象深い読書は?
A. 野口 英世やアルベルト・シュヴァイツァーの伝記。科学者や医者を志した原点です。
Q. あなたにとっての「科学道の本」は?
A. ゴードン・R・テイラーの『人間に未来はあるか』
生命科学を志すきっかけとなった本。人工臓器の技術や遺伝子工学の進歩がもたらす未来の人間の姿が描かれていて衝撃を受けました。物理学者になるつもりでしたが、この本を読んで「物理をやっている場合じゃない、これからは生命科学だ!」とあっさり転向しました。物理学者のシュレディンガーが書いた『生命とは何か』などにも背中を押されました。
Q. 最近はどんな本を読みますか?
A. 小説が好きで、時間があるときに気楽に読んでいます。ミステリーやエンターテイメント全般。誉田 哲也、有川 ひろ、横山 秀夫、逢坂 剛、原 尞、長沢 樹、堂場 瞬一、松岡 圭祐などなど。村上 春樹も大好きです。

担当テーマ

科学道100冊 2022 科学史タイムトラベル

推薦本

2022

江戸の科学者の画像

『江戸の科学者』

  • 吉田 光邦(著)
  • 講談社 2021年

300年間の鎖国中に開花した和のサイエンス

和算家の関 孝和、日本を測量した伊能 忠敬、日本独自の暦をつくった渋川 春海、『解体新書』の杉田 玄白、異端の発明家・平賀 源内など、江戸を発展させた30人の伝記集。西欧のスタンダードがなかったからこそ花開いたジャパンサイエンスを、いまこそ見返したい。

推薦コメント

江戸時代は300年も鎖国をしましたが、中国やオランダから書物が入ってきたし、自由に学問する気風が満ちていました。この科学精神が今の日本の科学の礎になっています。特にすごいと思ったのは、日本独自の数学『和算』。各地に塾があり、皆が競って問題をつくり解き合う。江戸の人々は数学を楽しんでいたんですね。


2022

ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿─科学者たちの生活と仕事の画像

『ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿─科学者たちの生活と仕事』

  • 佐藤 満彦(著)
  • 講談社 2020年

偉大な科学者たちも日々の暮らしは楽ではなかった

長い間、科学者たちは、研究だけでは食べていけなかった。コペルニクスは聖職を本業にし、ガリレオはパトロンに生活を支えてもらい、ニュートンは錬金術の研究をしていた。どんなに偉大な科学者も生身の人間。科学の発展に貢献した科学者たちの性格や私生活、人間関係に光を当てたユニークな1冊。

推薦コメント

大科学者の生い立ちや、暮らしぶり、人間関係などが描かれていて、文句なしに面白い。売り込む力が大事だとか、大学教授だけやる人は少ないとか、今も昔も変わらず研究者って苦労していたんですね。お気に入りはロバート・フックのエピソード。17世紀に自作の顕微鏡でコルクの切片から細胞を発見した人ですが、バネの法則でも有名な物理学者です。彼とニュートンの対比に、引き込まれました。


2022

進化論の進化史─アリストテレスからDNAまでの画像

『進化論の進化史─アリストテレスからDNAまで』

  • ジョン・グリビン、メアリー・グリビン(著)水谷 淳(訳)
  • 早川書房 2022年

生命進化を考え続けた有名無名の科学者たち

進化論を唱えたのは、ダーウィンだけじゃない。アリストテレスの時代から現代まで、進化論は千数百年をかけて進化し、2020年代も発展を続けている。遺伝英国の科学ジャーナリスト夫妻が、生命進化のメカニズムを考え続けた科学者たちの生涯を取り上げながら、進化論の歴史を紹介する。

推薦コメント

進化論といえば、誰もがダーウィンを思い浮かべるでしょう。しかし進化についての考察は、古代ギリシャの時代から始まっていました。さらにダーウイン以降に進化論がどこまで進展したかも、この本を読めば分かります。化石からゲノムが読み取れるようになった今、生物の進化の解明は、実験科学へと変貌しました。進化論の進化をじっくりたどれる1冊です。

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