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選書アドバイザー 櫻井 博儀

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櫻井 博儀
仁科加速器科学研究センター センター長

1963年京都府生まれ。1987年東京大学理学部卒業。1993年博士号取得(理学)。その後、東京大学で助手となり、不安定核の構造と反応の研究に従事。1995年に理化学研究所の研究員に。2000年に東京大学の助教授に就任。その後、理研の主任研究員として加速器「Rlビームファクトリー」での実験計画を担当。2011年に東京大学教授に就任。2020年仁科加速器科学研究センターのセンター長に就任。

10代の若者へのメッセージ

これから社会の構造は変わります。そんな時一番大事になるのは、自分で考え、行動し、何かを見いだし、自分なりに納得して生きていくこと。若い人には「おもしろそう」と思ったことはどんどんやって、自分の可能性を広げてほしいです。

科学と読書

Q. 学生時代の読書で、印象に残っているものは?
A. 大学生の時に読んだ文化人類学の本、特にカルロス・カスタネダという方の本です。インディアンの呪術師の下で修業しながら書いたもので、スピリチュアルや幻覚性植物の話などが出てくる、禁書のような本でした。「なんだこれ」と思いましたが、文化人類学の研究者が非西欧的な「現場」に身を投じて体験的に考察を深めていく研究スタイルに惹かれました。
Q. あなたにとっての「科学道の本」は?
A. トーマス・クーンの『科学革命の構造』。パラダイムという概念をこの本で初めて知り、強い衝撃を受けました。

担当テーマ

科学道100冊 2022 科学史タイムトラベル

推薦本

2022

〈どんでん返し〉の科学史の画像

『〈どんでん返し〉の科学史』

  • 小山 慶太(著)
  • 中央公論新社 2018年

古代からの錬金術は20世紀に復活した

20世紀、原子核物理の研究が進んだことにより、夢から現実になった「錬金術」。最初の生命体は物質から生じたという説から、新たな展開を見せる「自然発生説」。一度は否定されたものの、別の視点から復活した科学に注目し、その展開を追った1冊。次のパラダイムシフトは何だ?

推薦コメント

科学の歴史は、考え方の枠組みが変わっていく歴史といえます。ただ、「人間が何をやりたいのか」は変わらないんですね。本書を読めばそれがよくわかります。例えば錬金術は、物質が「元素」からできていることがわかって以降、否定されました。しかし、現代では原子核物理の実験で元素を変えることが可能になり、再び錬金術が蘇っています。


2022

パラダイムと科学革命の歴史の画像

『パラダイムと科学革命の歴史』

  • 中山 茂(著)
  • 講談社 2013年

時代によって変化する科学。その転換点を辿る

科学という学問は、いかにして発展してきたのか?古代アジアとヨーロッパの学問的伝統の比較から、近代科学成立後に生まれた学術雑誌や大学アカデミズム、明治日本の西洋科学の移植、学問のデジタル化まで。パラダイム論を日本に紹介した科学史家が俯瞰的に描く、学問の歴史。

推薦コメント

トーマス・クーンの「パラダイム論」を日本に紹介した中山 茂 先生が、科学史のパラダイムシフトの過程を書いています。パラダイムを簡単にいうと、「考え方の枠組み」のようなもの。普段研究をしていると、自分の考えに囚われがちですが、思考の外側を注意深く点検することが大事。枠を出ることから新しいパラダイムが生まれる可能性がある、それを教えてくれる本です。


2022

日本近代科学史の画像

『日本近代科学史』

  • 村上 陽一郎(著)
  • 講談社 2018年

近代科学は西欧生まれ。日本人はどのように受け入れた?

私たちが信頼しきっている「科学」。しかし150年ほど前まで日本に今のような科学はなかった。すっかりユニバーサルになった西欧科学を通して、日本文化を考察する野心的な書。伊野尾 忠敬、杉田 玄白、北里 柴三郎、長岡 半太郎。江戸から明治、昭和にかけて、日本の西欧科学との関わりの歴史をたどる。

推薦コメント

村上 陽一郎 先生の科学の捉え方は、とても信頼がおけます。この本では、西欧と比べて相対的に日本を見ていて、おすすめです。「和魂洋才」という言葉がありますが、私たちには私たちなりに西欧とは異なる文化や「和才」があります。

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