選書アドバイザー 佐野 健太郎

佐野 健太郎
計算科学研究センター プロセッサ研究チーム チームリーダー
回路再構成型やデータ駆動型など、既存の計算機とは異なるアーキテクチャやシステムを研究。回路再構成可能デバイスFPGAを多数直結したFPGAクラスタを開発し、スーパーコンピュータから実験的に使用できるシステムを構築。将来の高性能計算機アーキテクチャの可能性を探っている。小さい頃からコンピュータが大好きで、将来の夢はプログラマだった。SFをこよなく愛する。
10代の若者へのメッセージ
過剰に恐れず、好きなことをするために、または好きなことを見つけるために、冒険をしてください。
科学と図書
- Q. あなたにとっての「科学道の本」は?
- A. 発明家の偉人伝
小学生の時に読んだエジソンやライト兄弟の偉人伝が、私を理系の道へと導きました。電球や航空機の発明のように、常識ではできないと思われていたことに果敢に挑戦した彼ら。苦労の末に夢を実現する話を、夢中になって読んだ記憶があります。研究者魂を宿すきっかけになった本です。 - Q. 無人島に1冊持っていくなら?
- A. 『海辺を食べる図鑑』(向原 祥隆)
理由はもちろん、生きるためには食べないといけないから。 - Q. どんな科学者にも会えるとしたら、誰に会いたいですか?
- A. ジョン・フォン・ノイマン、アラン・チューリング
ジョン・フォン・ノイマン、またはアラン・チューリングに会い、将来のコンピュータにどのような夢や可能性を抱いているかを聞いてみたい。また、現在のコンピュータシステムやAIを紹介し、全く思いもよらなかったような技術革新は何かを聞いてみたい。
担当テーマ
科学道100冊 2022 情報の世紀
推薦本
2022

『ニューロマンサー』
- ウィリアム・ギブスン(著)黒丸 尚(訳)
- 早川書房 1986年
電脳世界はここから始まった!現代を先取りした古典SF
かつて電脳空間でカウボーイと呼ばれるハッカーだったケイスは、今はその能力を奪われ、千葉シティでくすぶっていた。そこへアーミテジと名乗る男から仕事の依頼が舞い込み、電脳空間で“冬寂”と呼ばれるAIと対峙することになる。映画「マトリックス」の原点となったサイバーパンクの傑作SF。
推薦コメント
昔のスパコンが手のひらに乗るスマホになり、「人工知能」が実現しつつある現在。科学技術イノベーションは、人間の想像を超えるものです。次の時代はメタバース?脳・コンピュータインタフェース?本書は、それらが本当に実現して社会や人々の生活を変えていく未来を、リアルに体験させてくれることでしょう。
2022

『QRコードの奇跡─モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』
- 小川 進(著)
- 東洋経済新報社 2020年
トヨタの工場から始まった世界標準のQRコード誕生秘話
ウェブサイトのアクセスや空港のチェックインなど、日常のあらゆる場面で使われているQRコード。実はその始まりは、日本にあった。トヨタ自動車の工場での源流から、二次元コードと読み取り機の開発、世界に向けた標準化まで、現場の開発者たちが重ねた地道な努力から、ものづくりの本質を学ぶ。
推薦コメント
QRコードが日本の発明ということは、あまり知られていません。現在では搭乗券の読み取りから電子決済まで、至るところに使われている、日本発の稀有なイノベーションの好例です。50年前に開発が始められ、様々な困難や現場の反発を交えながらも、国際標準に至った経緯を知ることができる良書です。