2012年5月22日
理化学研究所
「理研BSI-タケダ連携センター」を開設
-理研BSIと武田薬品工業が中枢神経疾患領域で創薬を目指す-
理化学研究所(野依良治理事長)は、5月1日に武田薬品工業株式会社(長谷川閑史代表取締役社長、以下タケダ)と共同で理研脳科学総合研究センター※1(理研BSI、利根川進センター長)内に「理研BSI-タケダ連携センター」を開設しました。
本連携センターの理念は、直近の目標に限らず長期視野を見据えて双方一体となった知識共有、意見交換の促進です。従来の分野限定になりがちの公的研究機関と企業共同研究の枠組みを取り外して、潜在的な知識・技術の融合を十分に発揮できる体制を構築できることが特徴です。具体的には、現在有効な治療法が確立されていない「中枢神経疾患領域」において日本初の創薬、創薬技術開発という難関に挑みます。
背景
統合失調症、筋委縮性軸索硬化症(ALS)、双極性障害などの中枢神経疾患はいまだに有効な治療法がなく、早急に取り組むべき課題となっています。これらの疾患の治療法を確立するには、従来の手法に基づいた新薬開発に加えて、脳内の部位特異的な遺伝子発現の解析、バイオイメージング、電気生理学、オプトジェネティクスといった多様な要素技術の活用によるブレイクスルーが必要となります。
1997年の設立以来、理研BSIは脳科学における要素技術の開発と、神経回路を中心とする脳機能の解明に向けた基礎研究を行ってきました。一方、タケダは創薬データベースの蓄積に加え、代謝性疾患や中枢神経疾患などに関する高い研究開発力と世界有数の創薬技術を有する医薬品の総合メーカーです。今回、産業界との連携センター制度※2に基づく理研BSI-タケダ連携センターの開設により、中枢神経疾患の解明から新規創薬標的の探索、さらには新薬の創製までのプロセスを一貫して行える研究の場を構築しました。本連携センターの目標に向けて、双方の活発な人材交流を促進させ、共同で取り組む研究の方向性を検討しながら、未来を見据えた知識・情報・技術の融合を目指します。
「理研BSI-タケダ連携センター」の概要
(1)組織名
理研BSI-タケダ連携センター
(略称:BTaC/ RIKEN BSI-Takeda Collaboration Center)
連携センター長:津本忠治(理研脳科学総合研究センター 副センター長)
(2)所在地
理研脳科学総合研究センター内(埼玉県和光市広沢2番1号)
(3)開設期間
2012年5月1日から2017年3月20日まで
(4)業務内容
「新規創薬プラットフォームの構築」
将来の医薬品候補化合物の探索および臨床試験への橋渡し研究を進めるための基盤技術の開発を目指す。
「新規創薬ターゲットの探索及び機能解析」
疾患解明への新しいアプローチを研究し、将来の中枢神経疾患の新規創薬ターゲット発見を目指す。
お問い合わせ先
独立行政法人理化学研究所 脳科学研究推進部
Tel: 048-467-9757 / Fax: 048-462-4914
報道担当
独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
補足説明
- 1.
- 理研脳科学総合研究センター
- 1997年10月に設立。理研BSIは、わが国の脳科学研究の中核拠点として国内外から優れた研究者を結集し、総合的な研究を展開している。設立以来、数多くの優れた研究成果と人材を輩出し、世界有数の脳科学の研究拠点として国際的な認知を得ている。学際的かつ融合的な研究体制を特徴とし、脳のミクロな分子機構にはじまり、神経細胞、神経回路、よりマクロな現象である認知や記憶と学習の仕組み、さらには言語の獲得、脳とコンピューターなど、個体、行動、社会までを対象として、理論と実験を交えながら、医学、生物学、物理学、工学、情報科学、数理科学、心理学など多彩な学問分野を背景にした研究を進めている。
- 2.
- 産業界との連携センター制度
-
産業界との包括的な連携の場として2007年2月に整備した制度。企業からの提案をもとに、理研の各センター内に「連携センター」を設置し、中・長期的な課題を実施する。この制度は、これまで理研が実施してきた、企業が主体となり具体的な研究目標を設定する「産業界との融合的連携研究プログラム」などとは異なり、中・長期的視野で目標設定を行える点、企業名を冠する点が特徴である。これにより、理研は産業界との連携をさらに発展させ、企業と共同で新分野を切り開き、理研と企業双方の文化を吸収した人材の育成を目指している。
これまでに設置した連携センター
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連携センター名 設置年度 理研BSI-オリンパス連携センター 2007年6月 理研-東海ゴム人間共存ロボット連携センター 2007年8月 理研BSI-トヨタ連携センター 2007年11月 理研RSC-リガク連携センター 2010年12月