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2012年7月25日

理化学研究所

公演のご案内代替現実(SR)システムによる体験型パフォーマンス「MIRAGE」

―「現実」とは何か?を問いかける体験型パフォーマンスアート―

理化学研究所(野依良治理事長)は、グラインダーマン(タグチヒトシ代表)とともに、8月24日から26日までの3日間、日本科学未来館において、体験型パフォーマンス「MIRAGE」を発表します。

「MIRAGE」は、理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)適応知性研究チームが開発した「代替現実(Substitutional Reality; SR)システム※1」を用いた、これまでにない体験型のパフォーマンスアートです。

SRシステムは、あらかじめ記録し編集しておいた過去の出来事を、今まさに目の前で生じている現実であると体験者に信じさせること、あるいは両者を区別なく体験させることを可能にしました。(2012年6月21日プレス発表)そのため、SRシステムは、これまでとは全く異なるユーザー体験を提供するヒューマンインターフェースとしての展開が期待されていました。

「MIRAGE」は、パフォーマンスグループ「グラインダーマン」、音楽家・サウンドアーティスト evalaと理研の研究者たちが、SRシステムの可能性を探り、その新たな展開として作り上げた体験型のパフォーマンスアートです。

「MIRAGE」では、SRシステムを直接体験するのは一名のみ。体験者はSRシステムを通じて、現在と過去を行き来しながら、10分間のダンサーのパフォーマンスを体験します。目の前のダンサーは、もしかしたら過去に記録されたものかもしれませんし、本当に目の前にいるかもしれません。しかし、体験者には、それがどちらなのかは区別できず、「自分はどこにいるのだろう?」、「現実とはなんだろう?」という通常感じることのないさまざまな疑問が湧き起こります。

そのような体験者の体験は、それを観る観客やダンサーにも共有され、異なる形で現れます。なぜなら、観客は、現実と体験者の主観的経験の両者を、体験し、比較することができ、一方のダンサーはその体験を作り出している中心でありつつも、その一部にすぎないからです。つまり、「MIRAGE」の中では、体験者、ダンサー、観客が入れ子状になり、それぞれの体験が連鎖し、相互に影響を与えつつ時間が進んでいきます。

「MIRAGE」の経験は、私たちが生きている現実世界を、私たちの脳がどのように形作っているのかという疑問へ誘います。その答えは「MIRAGE」を経験する中から生まれて来るはずです。「MIRAGE」は、「現実」に関する、これまでにない、全く新しい感覚と経験を提供します。

「MIRAGE」公式ウェブサイト(英語)

公演の概要

日時
8月24日(金)、25(土)
公演:11:00より16:30まで各回15分ごと
ショートトーク:13:30、16:30(各回30分、予約不要)
*ショートトーク中の公演はありません。
8月26日(日)
公演:11:00より15:00まで各回15分ごと
アフタートーク:15:00~16:30(要予約)
参加費 無料
会場 日本科学未来館7階  イノベーションホール
〒135-0064 東京都江東区青海2-3-6
参加法 参加方法には「体験」と「観覧」の2種類があります。
[体験]
1回の公演につき1人の体験となります。希望者は予めMIRAGEの公式ウェブサイトからの予約が必要です。体験時間は約10分間です。高校生以上という年齢制限があります。
[観覧]
体験者がMIRAGEを体験している様子を、体験者の背後にある観客席から観覧できます。予約は不要ですが、未就学児の参加はご遠慮下さい。

詳細なスケジュールと予約方法は「MIRAGE」公式ウェブサイト(英語)をご覧下さい。

SRシステム関連 お問い合わせ先

独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター 適応知性研究チーム
チームリーダー 藤井直敬(ふじい なおたか)

MIRAGE関連 お問い合わせ先

ハイウッド 高樹光一郎(たかぎこういちろう)
Tel: 03-3320-7217 / Fax: 03-3320-7219

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715

補足説明

  • 1.
    代替現実(Substitutional Reality; SR)システム
    体験者が装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)には、目線の位置に付けたライブカメラからの視界および、あらかじめ同じ場所で撮影した過去の視界を織り交ぜて表示する。パノラマカメラによる全方位の記録映像と、モーションセンサーを用いることにより、体験者は過去の視界の中でも現在と同じように自由に周りを見渡すことができる。その状態で、過去と現在の視界をスムーズ切り替えると、体験者の主観的な認識そのものは切り替わることなくひとつながりのものとして続いていくため、体験者は現在体験しているシーンが過去なのか現在なのかを認識することができない。このように、人に気づかれずに、「現実」をあらかじめ用意したものにこっそりとすり替えた状況を作り出すシステムのことをSRシステムという。
    SRをモチーフにしたSF映画としては、「マトリックス」、最近では「インセプション」がある。しかし、フィクションの世界でしか語られなかったSRは、これまで実現することは不可能だった。仮想現実(VR:バーチャル・リアリティ)や拡張現実(AR:オーギュメンテッド・リアリティ)は、SR状態を実現することが目的の1つであるが、その環境での体験を体験者に現実だと信じ込ませることができず、それを実現したのがSRシステムである。現実からつなぎ目なしに過去の映像を与えることで、過去と現実の境界を無くし、全てを目の前で起きていることのように経験させることに成功した。脳科学の観点からみると、SRシステムによって、これまで不可能だったさまざまな認知実験が可能となった。
    一方、このSRシステムは、新しい体験プラットフォームとしてさまざまな可能性を秘めている。これまでの映像表現は、見る、聞くというレベルでとどまっており、テレビや映画を見ても、それを自分自身が現実に経験したと感じることはほとんどなかった。しかし、SRシステムを通じた視聴体験が与えるインパクトは、これまでのコンテンツ視聴と比較して明らかな差がある。つまり、SRシステムには、これからのコンテンツ体験のありかたを変える可能性があり、従来のVRやARの「仮想を現実に近づける」技術とは逆に、過去を現在に浸入させ、体験者の経験する主観的な「現実」そのものを操作することができる技術である。

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