2014年5月13日
独立行政法人理化学研究所
※説明資料(図)を追加し、一部本文を修正して、6月2日に掲載しました。
元調査委員の研究論文の疑義に関する予備調査結果について
通常、予備調査結果の公表はしませんが、本件は、科学研究上の不正行為の防止等に関する規程に基づき設置された「研究論文の疑義に関する調査委員会」の元委員に対する疑義であったことから、特例的に公表いたします。
元調査委員の研究論文の疑義に関する予備調査結果について 1
平成26年4月28日に報道機関から広報室に問合せがあった、石井俊輔 石井分子遺伝学研究室上席研究員、眞貝洋一 眞貝細胞記憶研究室主任研究員らが発表した研究論文1報の疑義について、科学研究上の不正行為の防止等に関する規程第10条に基づき予備調査を行った結果、論文で示された図は、切り貼りはされているが、真正でないものに加工されたり、結果の真正さが損なわれたりしたものではなく、研究不正には当たらないと判断しました。
疑義が指摘された論文及び疑義
論文
The Wnt–NLK Signaling Pathway Inhibits A-Myb Activity by Inhibiting the Association with Coactivator CBP and Methylating Histone H3. MOLECULAR BIOLOGY OF THE CELL, vol. 16 no. 10 4705-4713 (2005)
doi: 10.1091/mbc.E05-05-0470
疑義
Figure 1A. 右、切り貼りがあるように見えるので、異なる条件で得られたデータではないか。
検証
Figure 1A.は同一の実験条件で得られたデータを切って寄せたものであり、研究不正には該当しない。
下にオリジナルデータを示す。
元調査委員の研究論文の疑義に関する予備調査結果について 2
平成26年4月28日に報道機関から広報室に問合せがあった古関明彦 統合生命医科学研究センター副センター長らが発表した研究論文4報の疑義について、科学研究上の不正行為の防止等に関する規程第10条に基づき予備調査を行った結果、論文で示された図は、切り貼りされたものなどはあるが、真正でないものに加工されたり、 結果の真正さが損なわれたりしたものではなく、研究不正には当たらないと判断しました。
疑義が指摘された論文、疑義、及び検証
論文1
Mesenchymal expression of Foxl1, a winged helix transcriptional factor, regulates generation and maintenance of gutmaintenance of gut-associated lymphoid organs. DEVELOPMENTAL BIOLOGY, vol. 255, 278-289 (2003)
doi: 10.1016/S0012-1606(02)00088-X
疑義1
Figure 5.の電気泳動の図について、真ん中に切り貼りの跡のような線が見える。
検証1
Figure 5.の右半分と左半分は独立して意味をなす実験として構成されている。したがって、連続性を見せかけるために作為的な行為をする理由はない。
論文2
Mammalian Polyhomeotic Homologues Phc2 and Phc1 Act in Synergy To Mediate Polycomb Repression of Hox Genes. MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, vol. 25, 6694-6706 (2005)
doi: 10.1128/MCB.25.15.6694-6706.2005
疑義2-1
Figure 2B.上段の3つのレーンの間にそれぞれ切り貼りのような線が見える。下段の分子量マーカーのところにも、切り貼りのような線が見える。
検証2-1
オリジナルデータで確認したところ、上段の3つのレーンは単一ゲルに由来するデータであることが確認でき、本文の説明にあわせて再配置したことが確認された。下段についても、データは同一条件で解析された単一ゲルに由来するものであり、研究不正には該当しない。
上に示すような多数のレーンが並列していたゲルから、各遺伝子型の例示のために必要な部分を切り出してきたものである。また、Figure 2B.において各遺伝子型を示す3レーンが、単一ゲルに由来するものであることも明らかであり、サイズマーカーとの関係にも齟齬がないことが確認できる。Figure 2B.に示す方法が、当該遺伝子座の遺伝子型決定方法として妥当なものであること示すところ、論文において簡潔な説明を行うための調整が行われたものの、その結果が真正なものであることに変わりはないことが確認された。この点についても、念のため訂正を申請し受理されている。
疑義2-2
Figure 2D.の電気泳動の図は、レーンの間に、切り貼りの跡のような線がたくさん見える。両側にある分子量のマーカーがずれており、実験としても不適切ではないか。
検証2-2
同一ゲルでの電気泳動像であることが、オリジナルデータから確認でき、左右の分子量マーカー位置のずれも画像操作によって生じたものではないことは明らかであり、研究不正には該当しない。
論文3
Distinct roles of Polycomb group gene products in transcriptionally repressed and active domains of Hoxb8. DEVELOPMENT, vol. 133, 2371-2381 (2006)
doi: 10.1242/dev.02405
疑義3
Figure 4E.の電気泳動の図について、左側2レーンの下に、黒い部分がずれており、切り貼りの跡のように見える。
検証3
オリジナルデータをたどると単一の実験に由来したデータであることが明らかであった。また、実験で得られた多数のデータの中から論文執筆過程で(正当に)不必要と判断されたデータを落とすことはあり、研究不正には該当しない。
論文4
Mammalian Polycomb -Like Pcl2/Mtf2 Is a Novel Regulatory Component of PRC2 That Can Differentially Modulate Polycomb Activity both at the Hox Gene Cluster and at Cdkn2a Genes. MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, vol 31, 351-364 (2011)
doi:10.1128/MCB.00259-10
疑義4
Figure 1D.の電気泳動の4、5レーン目の間に切り貼りのような線が見える。
検証4
オリジナルデータでは、本実験が単一の実験から由来したデータであることが明らかで、その並び順を論旨にあわせてレーンの入れ換えをしただけで、研究不正には該当しない。