2025年7月5日、五神 真 理事長が狛江市文化講演推進会が主催する「第3回 狛江市文化講演会」で、「最先端科学への招待~光量子の世界~」と題して講演しました。理研広報部による光の実験デモンストレーションも行われ、会場となった五神 理事長の故郷 東京都狛江市にある狛江エコルマホールには400人以上が来場しました。

狛江市文化講演推進会から贈呈された花束を手に笑顔を見せる五神 真 理事長(右)
実験デモンストレーションを担当した理研広報部の河野 弘幸 博士(左)
幼い頃から東大総長時代までを振り返る
五神 理事長は、はじめに自身が歩んできた道のりを語り、幼少期に兄弟と多摩川で遊んだ思い出や、母校の狛江市立狛江第二中学校でアマチュア無線部を立ち上げたことなど、故郷にまつわるエピソードを披露しました。東京大学在学中は物理学科の仲間とサイクロトロンやレーザーを自作するほど実験に没頭し、東京大学大学院進学後、約40年間に渡り東京大学で教員を務めました。2015年から2021年までは東京大学総長として、大学を「知のプロフェッショナル」を育てる場にしたいという思いを胸に、幅広い業務に取り組みました。

子どもから大人まで多くの方が参加しました
自身の専門 光量子科学を解説
続いて、五神 理事長の専門分野である光量子科学について説明しました。「光の正体はなんでしょう。波でしょうか、粒でしょうか」と問いかけ、光は波と粒のどちらの性質も持ち合わせており、電波などと同じ波のような状態から、エネルギーを弱めていくと、一つ二つと数えられる粒のような状態になってしまう不思議な現象を解説しました。さらに、光科学の応用であるレーザーを使った研究として、300億年経っても1秒も狂わない超高精度の時計「光格子時計」を紹介しました。光格子時計は、理研の研究者によって開発が進められており、次世代の時間標準の最も有力な候補とされています。

光量子科学の魅力を語る五神 理事長
光の正体を大解剖!広報部員による実験
文部科学省科学技術教育アドバイザーの河野 弘幸 博士(理研広報部)が、光量子科学の一つ「分光学」の実験を行いました。来場者は配布された紙製の分光器を組み立て、会場のLED照明やスクリーンに映し出されるさまざまな色の光を観察しました。一色に見える光も、分光器で分光すると実はいろいろな色が含まれており、その色によって光の波長が違うことを観測できます。これはスペクトルと呼ばれるもので、スペクトルによってその光の性質がわかるのです。河野 博士は、「分光学を応用すると、例えば遠くの星の光からも、その星に含まれている物質や温度を読み取ることができます。光にはたくさんの情報が詰まっているのです」と説明しました。

分光器の作り方をレクチャーする河野 弘幸 博士

LED照明を分光器で観察すると、分光器に虹色のスペクトルが浮かび上がる。光によっては、スペクトルがとびとびになっていたり、一色のみだったりする。

文化庁 合田 哲雄 次長との対談
後半は、五神 理事長と文化庁の合田 哲雄 次長(所属・役職は講演会当時)が「教育政策最前線が迫る最高峰への世界線」と題して対談しました。五神 理事長は「研究者として約40年間過ごしてきて改めて感じるのは、科学には終わりがなく、分からないことや、やりたいことが次々に湧いてくるということです。日本の教育や受験制度も、やりたいことがある人を排除するような仕組みではなく、やりたいことを思いつく人をつくる場であって欲しいです。今日お越しいただいた皆さんにも、好奇心を大切に、ワクワクすることを求めながら過ごしていって欲しいと思います」と語りました。

対談する文化庁 合田 次長(左)と五神 理事長(右)
講演会終了後に、来場者に感想を聞いたところ、狛江市在住の中学生は「分光器の実験で、光がいろいろな色でつくられていることがわかって面白かったです。もともと科学が好きで、分光学にも興味が出てきました」と話しました。市外から友人同士で参加した学生は「医学部を目指して勉強中なので、最後の対談は共感する部分が多かったです。今は医学を学びたい一心で、受験のために苦手科目にも取り組んでいます。それも楽しいと思う一方、自分の興味のあることをもっと大学入試に活かせたらいいなとも感じています」と素直な思いを述べました。その他の来場者からも満足度の高い声が多く寄せられ、講演会は盛況のうちに幕を閉じました。
関連リンク
- 2025年7月5日 イベント 第3回狛江市文化講演会「前東大総長が今、次代を担う君たちに語る!」(五神 真 理事長 登壇)