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2018年10月2日

東京大学
理化学研究所

水銀原子核はハムレット

水銀の原子核は陽子数が80で魔法数82に近いため、通常の考え方では一番安定な状態では硬い球のようになります。しかし、比較的早くから(1972、1977年)、中性子数が101、103、105という特別な奇数の場合には定説通りにはなっていないことが、電荷分布の半径を測定する実験で分かっていました。しかしながら、中性子数101より小さい水銀同位体でも偶奇への依存性が続くかどうかは不明でした。この度、CERN-ISOLDEでは装置の改良により実験対象の原子核を、中性子数がさらに少ない、よりエキゾチックな原子核に広げることに成功して、この異常現象が中性子数101で終わることを見出しました。

3つの奇数101、103、105だけが楕円体となり、その間の中性子数が102、104、及び、この範囲外の同位体はどれも球形になる異常な現象は、水銀のような重い原子核では有効とされてきた既存の理論からの十分な説明が得られないまま、最初の実験から50年近い年月が経過していました。球と楕円体の間で、何度も行き来する様は、あたかもto be, or not to beと逡巡するハムレットのようです。

本研究には東京大学大学院理学系研究科の大塚孝治教授(理化学研究所仁科加速器科学研究センター 客員主管研究員)、角田佑介特任研究員が理論研究面で加わりました。これまでも、ポスト「京」重点課題9に参加している東京大学を中心とするグループは、同グループが推進してきたモンテカルロ殻模型計算による大規模並列計算をさまざまな場合に対して行ってきました。今回は、主にスーパーコンピュータ「京」を用い、計算可能な限界に挑戦してこの難問を解決しました。大規模計算と並行して、異常現象の背景にある基本メカニズムも解明しました。即ち、核力のうち、陽子と中性子の間のモノポール力と四重極力に含まれる特徴的な成分が、特別な場合に強く効いて起こることを示しました。全く新しいメカニズムです。それがモンテカルロ殻模型計算による大規模計算により実証され、実験結果の説明に至りました。得られた知見は、理研RIビームファクトリーを始め、世界の重イオン科学研究拠点が狙う超重元素の物理解明に寄与します。

詳細は東京大学 大学院理学系研究科・理学部のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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