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2020年8月25日

国立精神・神経医療研究センター
理化学研究所
日本医療研究開発機構

多発性硬化症(MS)の進行・増悪に関連する腸内細菌叢・腸内環境の変化を解明

-全メタゲノム解析の結果から診断・治療の手がかりも提示-

このたび国立精神・神経医療研究センター神経研究所の山村隆 特任研究部長、理化学研究所の須田亙 副チームリーダー、早稲田大学の服部正平 教授らを中心とする共同研究グループは、神経難病である多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)の各病型(再発寛解型、二次進行型など)について腸内細菌叢の比較を行い、治療に対する反応性が良好である再発寛解型MSに比較して、難治性である二次進行型MSでは、腸内細菌叢および腸内環境が有意に変化していることを明らかにしました。これまでに、二次進行型MSの腸内細菌を対象にした研究はなく、今回の研究結果は、難治性MSの新たな治療法開発や診断技術の向上につながる画期的な成果と考えられます。

研究グループは、腸内細菌叢のDNA配列を網羅的に取得し、腸内細菌叢全体の構造や機能を明らかにするメタゲノム解析手法を用いて、NCNP病院に通院中の再発寛解型MSと二次進行型MS患者の腸内細菌叢・腸内環境を比較しました。再発寛解型の腸内細菌では酪酸やプロピオン酸の産生能力の低下が顕著な特徴であるのに対し、二次進行型ではDNA修復(ミスマッチ修復機構)の亢進や過剰な酸化ストレスが特徴的でした。これらの結果は機能データベース(KEGG)用いた解析により得られましたが、糞便代謝物解析によっても確認されました。酸化ストレスは神経系の慢性炎症病態を悪化させることが報告されており、二次進行型MSで確認された酸化ストレス亢進は、病態の進行・増悪を促進する重要な要因である可能性が推測されます。その他にも、MSの重症度と関連する細菌などに関する数多くの新たな知見が得られました。

詳細は国立精神・神経医療研究センターのホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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