1. Home
  2. 研究成果(プレスリリース)
  3. 研究成果(プレスリリース)2021

2021年1月26日

東京大学
金沢大学
理化学研究所
東北大学
科学技術振興機構

反強磁性体で世界最大の自発磁気効果をもつ低消費電力磁気メモリ材料

-反強磁性体におけるワイル粒子の発見-

スマートフォンやタブレットなどの内蔵ストレージに採用されているメインメモリには、電源をオフにするとデータが失われる「揮発性メモリ」が使われており、データ保持に過度な電力消費をしてしまいます。消費電力削減のために、強磁性体の磁化方向を利用して電力供給せずともデータ保持が可能な不揮発性記憶素子を使用したメモリ開発が進んでいますが、今後急速に増える情報量とともに集積化が進めば、記憶素子間の漏れ磁場の影響によりメモリ容量の限界が来ると考えられています。

今回、東京大学大学院理学系研究科の中辻 知教授、見波 将特任研究員と東京大学物性研究所の冨田 崇弘特任助教、Taishi Chen特任研究員、Mingxuan Fu特任研究員らの研究グループは、東北大学大学院理学研究科の是常 隆准教授、理化学研究所の北谷 基治特別研究員、金沢大学ナノマテリアル研究所の石井 史之准教授、東京大学大学院工学系研究科の有田 亮太郎教授らの研究グループと協力して、マンガン化合物Mn3Geの反強磁性体において、これまでにないゼロ磁場での巨大な異常ホール効果を見いだし、同時にネルンスト効果と呼ばれる磁気熱量効果が反強磁性体の中で最大値を示すことを発見しました。従来の強磁性体材料では磁化に比例した横磁気効果、すなわち異常ホール効果や異常ネルンスト効果が現れるのが一般的でしたが、従来の概念を打ち破り磁化がほぼない反強磁性体で従来の強磁性体金属と同程度のサイズの効果がゼロ磁場室温で見いだされました。従来の強磁性体の場合、自発磁化による漏れ磁場の影響がありましたが、反強磁性体の場合はスピンを反対向きに揃っているため全体のスピンが作り出す漏れ磁場はほとんどありません。特に、異常ホール効果は電流と垂直に得られる起電力応答のため素子構造が単純であること、マンガン化合物が二元系の廉価で毒性のない元素で構成されていることから不揮発性メモリ素子への展開が可能です。また反強磁性体材料は、理論的に強磁性体より高速動作が可能であることから、今後、消費電力を抑えたビッグデータの記録および高速処理巨大なデータ蓄積並びに高速動作をともに可能とする反強磁性不揮発性メモリ材料として期待できます。

詳細は東京大学 大学院理学系研究科・理学部のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
お問い合わせフォーム

Top