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2021年12月24日

九州大学
科学技術振興機構
理化学研究所

硬くて柔らかいナノ多孔性材料が実現する室温核偏極

-医療で用いられるMRIの高感度化を目指した技術を開発-

化学分野や医療現場で活躍している核磁気共鳴(NMR)分光法や磁気共鳴画像法(MRI)は、物質が持つ原子の微小な磁石の性質(核スピン)を利用し、そこから放出・吸収される電磁波を観測することで、私達の体を画像化したり生体分子の構造を調べたりしています。しかし、これらの方法は感度が非常に低く、MRIでは人体に膨大に存在する水分子の検出に限られていることもあり、がんや代謝に関わるさまざまな分子を画像化することはこれまで困難でした。

今回、九州大学大学院工学研究院(楊井伸浩准教授、君塚信夫教授)、同大学大学院工学府博士課程の藤原才也大学院生と理化学研究所開拓研究本部・仁科加速器科学研究センター(立石健一郎研究員、上坂友洋主任研究員・室長)の研究グループは、硬さ(結晶性)と柔らかさ(構造変化)を併せ持つユニークなナノ多孔性材料に着目し、これに取り込んだ分子を用いることで、NMRやMRIの感度を室温で数十倍にも向上できる技術を見出しました。

NMRやMRIで感度を向上するには、観測したい分子が持つ多数の核スピンの方向を同じ方向に揃え、「核偏極」と呼ばれる核スピンの向きの偏りを大きくする必要があります。そのためには、人工的に作り出した大きな核偏極を観測したい分子へ移す過程がありますが、分子の動きを固体のように止める必要があるため、従来は極低温(-150℃以下)で行っていました。研究グループは、ナノ多孔性材料の細孔構造が観測したい分子に対して柔軟にフィットする性質に着目し、ナノ多孔性材料を介して、室温で観測したい分子に大きな核偏極を効率よく移すことに初めて成功しました。

今回実証された柔軟な多孔性結晶の応用は、材料化学の分野で培われた細孔構造制御と組み合わせることで、今後さまざまな分子の高感度核磁気共鳴観測を可能にする量子技術に繋がると期待されます。

詳細は九州大学のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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