1. Home
  2. 理研について
  3. 男女共同参画・ダイバーシティ推進
  4. 理研で活躍する多様なリーダーたち

世界中の女性科学者がもっと活躍できる時代へ

脳科学総合研究センター 副センター長
シナプス可塑性・回路制御研究チーム チームリーダー 合田 裕紀子

合田 裕紀子副センター長の写真

今から20年前の1997年、私はカリフォルニア大学サンディエゴ校で助教授のポストについた。2001年からは、ロンドン大学のメディカルリサーチカウンシル細胞生物学ユニットに10年間在籍。そこではシニアチームリーダーを務め、5年前に理研のラボに移籍した。大学時代は化学を専攻していたが、しだいに関心が生命システムに移り、スタンフォード大学院時代は、細胞内の膜タンパク質輸送のメカニズムを研究。それが一段落して、今度は細胞間のコミュニケーションに興味を持ち、脳とその機能の研究に関わるようになった。そして、現在は「シナプス可塑性・回路制御研究チーム」のシニア・チームリーダーを務めている。

シナプスは、神経細胞同士が接する特殊な微小部位で、脳の中で情報伝達が行われる重要な場所だ。ちなみに、人の脳には1千億もの神経細胞があり、それぞれの神経細胞に数万のシナプスがある。このシナプスを介して起こる伝達の可塑性が、記憶や計算など、あらゆる脳の機能に大切な働きを持つことは知られている。けれどもその半面、様々な脳部位で、一つ一つのシナプスの伝達強度がどのようにシナプス回路を調整し、脳機能に働きかけるかという詳細はまだ解明されていない。私たちのラボでは、シナプスの活動を観測し、シナプス回路の本質を理解することを目標としている。そしてゆくゆくは脳機能のメカニズムに新しい洞察が生まれ、神経疾患の解明につながることを期待している。

女性科学者が活躍できるチャンスを増やしたい

これまで私は長らく自分の研究に集中してきたわけだが、最近、女性科学者が活躍できる環境について深く考えるようになった。私自身、いろいろなキャリアステージをたどり、世界の様々な文化に遭遇してきたが、どうやら世界中の女性科学者たちが直面しているのは普遍的な問題らしいということを痛感した。

私たちは、明らかにマイノリティであり、特に日本ではシンポジウムや会議に出れば紅一点ということも珍しくない。そんな中で私たち女性科学者がすべきことは、とにかく声を上げていくということ。躊躇することなくどんどん自分の意見を発信して、ものごとに主体的に関わっていくべきだ。ただ、それにはあらゆる意思決定の場に女性が男性と同じく受け入れられるような環境作りが重要だと感じている。これからはさらに、女性科学者が活躍するチャンスを作っていきたい。

そのためには、科学に関わる人たちが増えることも必要だと思う。たとえば、科学のバックグラウンドを持つ女性記者にも増えてほしい。あるいは、文科省などで女性の官僚がたくさん登用されることにも期待する。そのような環境整備がされることで、女性の研究者はかなり活躍しやすくなるのではないだろうか。さらに女子中高生に科学への興味を持ってもらうことも重要だ。

立場の異なる人たちがお互いを理解できるように

今、理研にいて感じるのは、外国の研究者がかなり多いということ。ジェンダーだけではなく、文化的にも多様性があるということは素晴らしい。立場の違う人たちがお互いを理解するために、透明なプラットフォームを作るべきだと思っている。数年前には、理研の脳科学総合研究センターで興味深い出来事に遭遇した。若手研究者の連合会で、女性科学者とのキャリアディスカッションシリーズを開催することになったときのこと。海外のとある大学学部長である女性に講演をお願いしたところ、参加者の半分くらいが男性だったのだ。これは嬉しい驚きであり、今後もこのような流れが続くことに期待している。

(所属・職名は2017年のインタビュー当時のものです)

Top