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2019年8月5日

バイオリソースの品質管理で植物科学の最前線を支える

バイオリソース研究センター(BRC)は、生命科学研究に不可欠な生物遺伝資源(バイオリソース)を国内外の研究者に提供している。BRCの品質管理は世界最高の水準にあり、取り違いや不純物混入などによるリコールの発生率ゼロを2017年度から連続して達成中だ。高い信頼性を支えるのは、卓越した技術を持つ職員たち。その一人が実験植物開発室の阿相幸恵テクニカルスタッフⅡ(TS)だ。「自分のやりたい仕事を続けられていて、すごくラッキーだと思います」と語る阿相TSの素顔に迫る。

阿相幸恵

阿相幸恵 テクニカルスタッフⅡ

バイオリソース研究センター 実験植物開発室

1980年、神奈川県生まれ。東京農業大学農学部農学科卒業。民間企業を経て、2005年より理研 実験植物開発室でリソース業務に従事。2017年より現職。

植物の遺伝子材料を-80℃で保存している超低温冷凍庫の写真 植物の遺伝子材料を-80℃で保存している超低温冷凍庫

「父がよく丹沢や尾瀬に連れていってくれたり、祖母が花好きだったりした影響か、子どものころから植物や自然が大好きでした」。そう振り返る阿相TSは1999年、東京農業大学農学部に入学。「当時、遺伝子組換え食品の安全性が大きな話題になっていました。自分の手で遺伝子組換えをしてみようと、園芸植物を扱っている研究室に。卒業後は、研究関連の仕事をしたくて、民間企業の研究補助業務を行う派遣スタッフになりました。そこで遺伝子工学の技術を身に付けたのですが、扱っていたのは動物だったため、やはり植物研究に携わりたいと思っていたんです」

2005年に理研の実験植物開発室へ。「大学で同期だった夫との結婚を機に、横浜市の実家から夫の郷里の茨城県に移り住むことになり、県内で職を探しました。そのとき、つくば市にあるBRC実験植物開発室の募集を見つけたのです。最初は開発室の研究プロジェクトに携わり、やがてバイオリソースの品質管理の担当になりました」

実験植物開発室では、植物の遺伝子材料や種子、培養細胞を保存・系統維持し、提供している。「私を含めて3人のスタッフで品質管理を行っています。依頼のあった材料を、ほかの種類と取り違えることなく提供することが主な任務です。遺伝子材料は現在、約62万種類を保存していますが、どれも見た目では区別がつきません。種子や培養細胞も同じです。まず寄託を受けた段階で、情報どおりの特徴を持つかどうか検査します。提供するときにも検査を行い、依頼された種類と一致するか、不具合がないかを確認してユーザーに発送します。植物の遺伝子材料の提供数は年間400~500件に上ります」

阿相TSは主に遺伝子材料を担当し、培養細胞や種子の検査も行う。「ダブルチェックで検査を行う体制です。時には寄託者からの情報とは異なる特徴を示す材料が寄託されるケースもあります。予想外の検査結果が出たときには、ほかの担当スタッフとも相談しながら、その結果が出た謎を解いていきます」。国際プロジェクトにも一員として携わり、遺伝子を破壊したシロイヌナズナの検査を行い、約3,000系統の高品質化に貢献した。

BRCには常に最新の材料が寄託されてくる。また、検査技術や装置も日進月歩だ。「材料や技術について分からないことがあれば、開発室の研究員に尋ねることができる環境はありがたいですね。ユーザーが今、どんな材料や情報を必要としているのかを知るために、学会に参加することもあります。自分のスキルアップも目指しているので、最新の材料や装置を扱えたり研究動向を勉強したりする機会がある今の環境は、とても恵まれていると感じています。次世代シーケンサーと呼ばれる装置を使えば、従来よりも多くの遺伝情報が検査で得られます。今後は品質管理の幅を広げ、研究に有用な情報も併せてユーザーに提供していきたいですね」

「家に帰ると、目まぐるしい日常が待っています」と阿相TS。
「小学生2人の習い事の送り迎えや家事に追われる」とこぼしながらも、「忙しいのが好き」と涼しげに笑う。体を動かすことが好きで、高校時代はバレーボール部、現在は地域のママさんバレーで汗を流す。多忙な中でも職場に来ると、気持ちはさっと切り替わるのだという。「野菜や果物を食べることは大好きですが、実は、植物を育てることは苦手です(笑)。でも、農業高校の教師をしている夫の実家が農家なので、いずれ挑戦するかもしれません」

(取材・執筆:立山 晃/フォトンクリエイト、撮影:STUDIO CAC)

『理研ニュース』2019年8月号より転載

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