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特集 2025年7月17日

数理・計算・情報科学領域総括に聞く―数理・計算・情報のシナジーで未来を拓く!―

理研の強みである総合力を生かし、戦略性をより重視した効果的な運営を行うため、理研が2025年度から導入した五つの「研究領域」の仕組み。それぞれの研究領域には、国際的に卓越し、学問的にも研究運営においても極めて高い見識を有する科学者を「領域総括」として据え、高度な専門知にもとづく分野横断的な協働をうながし、「新たな知の創出」を加速します。領域総括とともに研究の推進を支えるのは推進部長たちです。

研究者と事務部門、双方の視点で、「数理・計算・情報科学領域」が目指すものを聞きました。

数理・計算・情報科学領域
各分野の研究者を有機的に結び付け、これからの科学技術振興と社会変革の中で必要となる計算基盤の構築と基礎学理を創成する。
初田 哲男の写真

初田 哲男(ハツダ・テツオ)

領域総括

私は2012年に理研の仁科加速器研究センター(現 仁科加速器科学研究センター)に主任研究員として赴任するまで、東京大学をはじめとする大学で教壇に立ってきました。大学教員の立場では、教育上の制約もあって、学部や研究科の枠を超えてサイエンスの議論を交わす機会は限られていたのが実情です。

しかし、自然科学や人文社会科学を細分化して分類するのはあくまで人間の都合であり、本来、学問には明確な境界など存在しないはずです。その点、研究を中心に据え、多様な分野の研究者が集う理研では、分野間の垣根を超えた交流が自然に生まれる土壌が育まれており、世界を牽引する研究者たちが数多く活躍しています。さらに、膨大な計算やデータ解析に対応するため、スーパーコンピュータ「富岳」や量子コンピュータ「叡」など、世界最先端の研究基盤も整備されています。

既存の学問体系が変貌する中、国際性豊かな1,000名を超える研究者から成る数理・計算・情報科学領域は、科学技術全体を支える計算情報基盤の構築を進めるとともに、アカデミアや産業界との連携を通じて、さらなる革新的な基礎学理の創生を目指しています。

学問の垣根を超える土壌さらに育む

この領域では四つの研究センターと情報統合本部が一体となって、数理、計算、情報科学の連携・融合を進め、新たな基礎学理の創成、計算可能領域の大幅な拡張、AI技術を科学研究に活用するAI for Scienceの加速を推進しています。また、これらを他の研究領域に展開することにより、科学研究の飛躍的な発展への貢献を目指しています。

数理創造研究センターは、数学、物理学、化学、生命科学、計算科学、情報科学など幅広い分野の若手が「同じ屋根の下」で自由に議論する、世界でも類を見ない組織です。また、数理という観点から人文社会科学への展開、国内外の大学・研究機関との連携による、次世代の数理人材の育成を行っています。

計算科学研究センターでは、世界トップクラスの計算能力を持つ「富岳」を幅広い研究分野で活用すると同時に、スパコン、量子コンピュータ、AIを三位一体で運用し、「計算の、計算による、計算のための科学」の実現を図っています。さらに、それらをもってAI for Scienceの基盤を形成し、既存分野から新たな科学が創成されることを目指しています。

量子コンピュータ研究センターでは、さまざまな方式の量子コンピュータ実機開発と性能向上に取り組み、それらを計算科学・エレクトロニクス技術と融合しながら、次世代の量子コンピュータ技術を確立するための基礎研究を行っています。また、わが国の量子技術イノベーションの中核拠点として、国内外の大学・研究機関・企業との連携研究を行っています。

革新知能統合研究センターでは、最先端の機械学習・最適化技術の研究とその原理解明を通じて、実環境で汎用的に活用できるAIの方法論を探究し、安心して利用できる社会の実現に向けた独自の基盤技術の開発を進めています。また、社会課題の解決や科学研究の加速に貢献する応用の推進に加え、AIの安全性や倫理等の社会課題にも取り組んでいます。

研究者の個性を最大限尊重

科学の歴史を振り返れば、研究者がそれぞれの知的好奇心を追い求める中で、思いがけない発見や技術が生まれてきました。個性を尊重する自由な研究環境のもとで育まれる新たな科学の芽を丁寧に紡ぎ、人類と地球のより良い未来へとつなげていくことが、本研究領域の使命だと考えています。

柴田 博崇の写真

柴田 博崇(シバタ・ヒロタカ)

数理・計算・情報科学研究推進部 部長

今後、この研究領域から創出される研究成果が、研究者と事務部門とが車の両輪として一体となって取り組むことで、社会課題の解決に貢献していることが実感できるよう、尽力していきます。そのためには事務部門同士の連携もこれまで以上に密にし、強化していきます。

(取材・構成:田中 泰義/撮影:竹内 紀臣)

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