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特集 2025年7月14日

開拓科学領域総括に聞く―型にはまらない科学を生み出す―

理研の強みである総合力を生かし、戦略性をより重視した効果的な運営を行うため、理研が2025年度から導入した五つの「研究領域」の仕組み。それぞれの研究領域には、国際的に卓越し、学問的にも研究運営においても極めて高い見識を有する科学者を「領域総括」として据え、高度な専門知にもとづく分野横断的な協働をうながし、「新たな知の創出」を加速します。領域総括とともに研究の推進を支えるのは推進部長たちです。

研究者と事務部門、双方の視点で、「開拓科学領域」が目指すものを聞きました。

開拓科学領域
科学技術の飛躍的な進歩や新しい価値の創出に貢献。トップクラスの研究機関や研究者とのネットワーク構築や優秀な若手研究者の育成を通じて国際頭脳循環へ貢献する。
小谷 元子の写真

小谷 元子(コタニ・モトコ)

領域総括

100年あまり前の日本で理研設立を提唱した高峰 譲吉 博士は「欧米の模倣ではなく、日本人は自ら独創性を発揮し研究しなければならない」と訴えました。この精神は開拓スピリットと言われ、今でも理研の中核となっています。それと同時に、今日の理研は国の研究機関として国の重要な方針に沿って研究を進める研究所でもあります。国にとって推進すべき重要な分野を担う研究センター等は、現在22を数えます。

将来のプロジェクトの芽を生み出す

開拓科学領域は将来、研究センターに発展するような国家的プロジェクトの芽になる研究分野を生み出す役割を担っています。いろいろな分野の研究者が連携し、新しいものを、まだ形になっていないものを形にしていく長期的な視野での挑戦を続けています。

開拓科学領域に所属するセンターは開拓研究所のみです。これはそのルーツが、1921年に発足し、今に続く理研を築く基礎となった「研究室制度」にあることと関係があります。組織ではなくそれぞれの研究室を主宰する主任研究員に研究のテーマはもちろん、潤沢な予算、人事の裁量まで委ねるという、当時としても画期的な制度の導入が、理研を研究者の自由で闊達な議論からアイデアを育む「科学者の楽園」に変革したのです。

私は2017~2020年に理研の理事を務めました。そのときも理研は「お金と時間をかければ誰でもできるような研究はしない。野心的な研究をする」という開拓スピリットに満ちていたことが印象に残っています。この精神を持ち続ける仕掛けや仕組みをつくりたいと思っています。

開拓研究所ではいろいろな分野の研究者が集まり、研究分野を連携する役割を持つ点は、研究分野を超えて「つなぐ科学」を実現するTRIP事業本部とも似ていますね。私はこう理解しています。TRIP事業本部は「これが大切だ」というテーマに研究者が集まりプロジェクトを進めていく場所。開拓科学領域はいろいろな分野の研究者が絶えず議論する中で、それぞれが何か新しい型にはまらない科学を生み出していく多様な個を追求する場。科学の発展には両方が必要です。

私は数学の研究者です。東北大学時代は畑違いかもしれない材料科学高等研究所所長も務めました。そこでは金属工学、応用物理学、化学、生命科学などいろいろな分野の研究者が集まり、優れた機能を持つ材料を生み出すことを目的としていました。所長にならないかと打診されたときにはさすがに迷いました。数学は、科学の共通言語と言われています。研究者が感覚でとらえている暗黙知を他の研究者に伝えるための言葉にする。分野間をつなぎ、そしてそれが科学の発展につながるという信念を証明する機会となりました。この経験をここでも生かしたいです。

科学は未来志向 若者が創るもの

世界は大きく変わっています。規模が大きくなり複雑化する科学に今、地殻変動が起きています。伝統的な科学が溶け合って、新しいものが生み出される過程にあるのです。さらに、科学技術に対する期待は多様になり、これに応えていくには多様な科学が必要です。異なる分野の研究者が出会い、領域を開拓することが求められているのです。国際的な連携も重要です。また、科学は未来志向的なもので、若い人が創っていくものです。「そんなことはできない」と皆が驚くような野心的なアイデアに挑戦する環境を充実させていきたいです。

反町 耕記の写真

反町 耕記(ソリマチ・コウキ)

開拓科学研究推進部 部長

研究分野が決まったセンターで研究を極めることとは違い、畑違いの研究者をつなぎ、どんな結果が生まれるか未知数の領域です。誰が何をやっているのかを覚えることが当初は大変でしたが、領域の前身を担当していたこともあり、全力で支えていきます。

(取材・構成:吉川 学/撮影:竹内 紀臣)

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