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RIKEN People 2025年12月8日

植物の“センサー”を探る研究者が目指すもの

2025年9月に科学雑誌『Science』に発表された、植物の免疫受容体「SCORE」の発見。SCOREは85%以上の細菌やカビ、昆虫に共通する「低温ショックタンパク質(CSP)」を検知し、免疫反応を誘導します。さらに、SCOREのごく一部のアミノ酸配列を人工的に設計し、置き換えることで、CSPを認識する能力を高める技術を開発。この技術は病害抵抗性作物の設計につながると大きな話題となりました。マカオ出身で、今回の論文の筆頭著者、ブルーノ・ポクマン・ゴウ 基礎科学特別研究員に話を聞きました。

ブルーノ・ポクマン・ゴウの写真

ブルーノ・ポクマン・ゴウ(Bruno Pok Man Ngou)

環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ 基礎科学特別研究員

いつ理研に来たのでしょうか。

イースト・アングリア大学(英国)のセインズベリー研究所で博士課程の学生だった2018年、当時の指導教官のJonathan Jones教授に白須賢チームディレクターを紹介され、植物免疫研究グループにインターンとして3か月間在籍しました。その後、2021年12月より基礎科学特別研究員として理研に着任し、同グループに所属しています。基礎科学特別研究員は、自ら設定した研究課題を自由な発想で主体的に研究できます。現在は、植物の免疫受容体など、細胞表面に存在する受容体に関する研究テーマの立ち上げから具体的な実験の設計・遂行まで、一連のプロセスに関わっています。

どのような研究をしているのですか。

細胞表面受容体は、細胞外からの情報を受け取り細胞内に向けて情報を伝達する、いわば"センサー"の役割を担っています。この受容体がどのように進化してきたのかに注目し、種を越えた比較研究や機能解析を行っています。今回の研究で確立した手法により、これまで解析が難しかった多年生植物からも免疫受容体を見つけ出すことができるようになりました。今後、植物がそれぞれの進化の中で築いてきた免疫受容体を明らかにし、それを作物の病害抵抗性の向上に活用していきたいと考えています。

なぜこの分野に興味を持つようになったのですか。

きっかけは、2013~2016年、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンでの学部生時代に学んだ微生物の窒素固定です。窒素固定とは、微生物が空気中の窒素を利用しやすいアンモニアなどの分子へと変換するプロセスのことです。植物は、根などに共生する微生物と相互作用し、微生物によって変換された分子を利用しているのです。大学院は、イースト・アングリア大学へと進み、同大学のセインズベリー研究所で植物と微生物の相互作用をテーマに研究を行い、2021年4月に博士号を取得しました。

環境資源科学研究センターは「サステナブルな循環型社会の実現と地球システムという人類の共有財産(グローバル・コモンズ)の維持に貢献」を掲げていますね。

植物は気候変動の影響を大きく受けます。前述の低温だけでなく、干ばつや塩害、病害といったさまざまなストレス下でも生き延び、成長するには、周囲の環境を「正しく感知する」能力が欠かせません。私は、植物が環境の変化や病原体をどのように感知し、反応するか、その解明を目指しています。これにより、食料の安定確保をはじめ、気候変動によって失われた生態系の回復に貢献できるはずです。

理研で働く魅力は何ですか。

理研には最先端の設備や資源が整っており、それを活用した高度な研究を進められること、これが魅力の一つです。ですが、一番の魅力は「人」です。研究者だけでなく、技術者、アシスタント、事務スタッフまで、すべての人が非常に協力的で、研究に集中できる環境が整っています。また、オープンで自由な議論ができる雰囲気があり、新しいアイデアが生まれやすい風土があります。こうした人間関係や職場環境こそが、理研で働く大きな魅力です。

最後に、これから理研で働くことを考えている方へのメッセージをお願いします。

理研は、科学的な挑戦を本気で支えてくれる研究機関です。関心のある研究グループや指導教員がいれば、気軽に連絡を取ってみてください。

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