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2010年12月9日

理化学研究所

「理研RSC-リガク連携センター」を開設

―X線を利用した物質構造科学に貢献する共同研究開発拠点―

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と株式会社リガク(志村晶代表取締役社長)は、2010年12月10日(金)、放射光科学総合研究センター(RIKEN SPring-8 Center:理研RSC、石川哲也センター長)に、「理研RSC-リガク連携センター」を開設します。

新連携センターは、X線発生・利用技術を、実験室レベルで行う小規模施設から放射光施設、さらに現在建設中のX線自由電子レーザー※1施設に至るまで活用することができる新規計測機器の技術開発を行い、タンパク質構造解析をはじめとする物質構造科学の分野にとって良好な研究環境を整備していくことを目的としています。具体的には、連携センターに「検出器開発チーム」、「放射光機器開発チーム」、「タンパク解析システム開発チーム」の3つのチームを設置し、検出器・データ処理系の開発、放射光利用計測技術の実験系への展開、タンパク質構造解析システムの開発に取り組みます。

理研RSC-リガク連携センターは、理研BSI-オリンパス連携センター、理研-東海ゴム人間共存ロボット連携センター、理研BSI-トヨタ連携センターに続き、「産業界との連携センター制度※2」に基づいて設置した4番目の連携センターとなります。

背景

X線はその発見以来、医学・工学をはじめとした科学技術の発展において大きな役割を果たしてきました。特に、近年は放射光X線を利用して物質の構造を解析する手法により、構造生物学、物性科学などが大きな発展を遂げてきました。

理研は、世界最大の大型放射光施設SPring-8※3を擁し、ここで発生する放射光を利用して、物質構造科学に関する多数の成果を創出しています。理研RSCでは、新しい光源を開発すること、新しい光を利用し最先端の研究を開拓すること、そして光を利用するための技術開発および研究環境の整備に取り組んでいます。また、2010年度中の完成を目指して、X線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser:XFEL)施設の整備も進めています。

株式会社リガクは、実験室レベルでのX線発生・分析装置の研究開発を行い、生命科学や材料科学をはじめとする幅広い分野の第一線の研究現場で研究者を支援してきた国内有数の分析装置メーカーです。

理研RSCとリガクは、これまで、理研RSCのハイスループットタンパク質結晶構造解析装置などの先端研究装置開発を共同で進めてきました。両者は、より強固な関係を築くことで、最先端の放射光X線を活用した研究基盤の整備を推進し、産業界を含め物質構造科学分野に良好な研究環境を提供することを目指して、連携センターの設置を決定しました。

「理研RSC-リガク連携センター」の概要

(1)組織名

理研RSC-リガク連携センター(英語名:RIKEN RSC-Rigaku Collaboration Center)
センター長  石川 哲也(理研RSCセンター長 兼務)

(2)所在地

兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1(理化学研究所 放射光科学総合研究センター内)

(3)開設期間

2010年12月10日から2015年12月9日まで

(4)業務内容

理研RSCは、リガクから研究者・技術者を4名受け入れる予定です。

①新CCD検出器・データ処理系の開発
新たなXFEL光源での利用に向けて、リガクが開発中のCCD検出器をSPring-8のビームラインに設置し、放射光実験を通して性能を改善させ、XFEL光源に対応した新CCD検出器の試作器を完成させます。これと並行して、高速処理を可能とするデータ処理系の概念設計を行い、XFEL用次世代CCD検出器の開発を行います。

②放射光利用計測技術の実験室系への展開
XFEL光源に対応した新CCD検出器やそのほかの計測機器を、実験室レベルで使用できる装置へと展開することを目指して、試作研究を行います。

③タンパク構造解析新利用システムの開発
既存のタンパク質構造解析用試料交換ロボットや測定シークエンス制御ソフトと新CCD検出器を組み合わせ、さらに、ネットワーク越しのリモートアクセスによって実験制御を行うことができるシステムの高度化に向けた概念設計を行います。

(5)連携センターの組織

連携センターの組織図

各社概要

(1)独立行政法人理化学研究所

独立行政法人理化学研究所は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する試験および研究などの業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めています。研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究などを実施しているほか、知的財産権等の産業界への技術移転を積極的に進めています。

(2)株式会社リガク

株式会社リガク(本社:東京都昭島市)は、1951年に設立され、国内初の自動記録式X線回折装置を開発するなど、X線分析装置メーカーとして発展し続けています。リガクの製品は、医薬品の開発に役立つタンパク質構造解析装置、情報通信技術を支える半導体や電子部品の開発・生産に貢献する半導体薄膜評価装置、そして暮らしの環境を守る各種環境用分析装置など、科学技術の最先端の研究開発や生産の分野で幅広く活用されています。

お問い合わせ先

独立行政法人理化学研究所 播磨研究所
研究推進部 企画課 馬越 元基(うまこし もとき)
Tel: 0791-58-0900 / Fax: 0791-58-0800

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715

株式会社リガク 広報宣伝課 青木正孝
Tel: 042-545-8111 / Fax: 042-544-9795

補足説明

  • 1.
    X線自由電子レーザー
    X線領域の波長のレーザー。日本では理研が財団法人高輝度光科学研究センターと協力してSPring-8に隣接した場所に整備を進めている。X線自由電子レーザーはSPring-8よりも約10億倍明るい光を生み出すことができ、これを用いると、物質を原子レベルの大きさで、かつ瞬時の動きを観察できると期待されている。
  • 2.
    産業界との連携センター制度
    企業からの提案を基に、理研の各センター内に「連携センター」を設置し、中・長期的な課題を実施する産業界との包括的な連携の場を提供するため、2007年2月に整備した制度。「産業界との連携センター制度」は、これまで理研が実施してきた、企業が主体となって具体的な研究目標を設定する「産業界との融合的連携研究プログラム」などの制度とは異なり、中・長期スパンで目標設定を行える点、企業名を冠することができる点が特徴となっている。この取り組みにより、理研は産業界との連携をさらに発展させ、理研と企業が共同で新分野を切り開く研究領域を育成し、理研と企業双方の文化を吸収した人材の育成を目指している。
    産業界との連携センター制度の説明図
  • 3.
    大型放射光施設SPring-8
    兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高輝度の放射光を生み出す理化学研究所の施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、物理、化学、地学などの基礎研究から、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

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