要旨
理化学研究所(理研)は、超高齢社会の到来に対して「高齢者がアクティブで自立した生活を送る社会の実現」を目標として、科学技術イノベーションを通じた貢献を果たすべく、「健康脆弱化予知予防コンソーシアム(会長:中島秀之公立はこだて未来大学学長、理事長)」を設立しました。産業界、大学、研究機関はもとより、自治体、医療機関、介護施設等とも連携し、一体となって事業を推進します。事業の開始にあたって、平成28年2月3日に健康脆弱化予知予防コンソーシアム設立総会を開催し、事業計画等が審議・承認されました。
今後、理研は「健康脆弱化予知予防」に関する様々な研究開発を進める一方で、本コンソーシアムにおける幅広い連携活動を積極的に進めることにより、現場のニーズや技術シーズの共有、課題解決に向けた連携内容の検討を行い、研究成果の利用促進を図ります。
理研が産学官連携のためのコンソーシアムを所内に設置するのは初めてです。理研は超高齢社会をはじめとした社会的要請の高い課題に対して、総合力を発揮して解決していくことを目指します。
中島会長のコメント
健康維持は高齢者のみならず、今や全国民の関心と言ってもよいでしょう。我々は健康科学、生体計測技術、情報技術等を使って脆弱化の早期発見とその対策を行うことを目指していますが、これには最近注目を浴びている人工知能技術やビッグデータ解析も大いに使えると考えています。これらの点については、広く理研内の様々な研究センターや、産総研に設置された人工知能研究センター等とも連携しながら進めていきたいと考えています。
1. 健康脆弱化予知予防コンソーシアムの概要と目的
「健康脆弱化予知予防」とは、高齢期、特に後期高齢期(75歳以上)に要介護者が急増することを踏まえ、要介護に至るまでの心身の「脆弱化」に注目し、「脆弱化」に至る兆候を早期に捉え、その分析から「脆弱化」の予知を行い、その是正手段を導入することで、「脆弱化」を遅らせ、要介護に至らない手段と仕組みを提供しようとするものです。理研では後期高齢期における要介護の原因の半分以上を占める「高齢による衰弱」、「認知症等の精神神経疾患」、「関節疾患」及び「転倒・骨折」を「健康脆弱化」と定義し、「脆弱化」の適切な把握に基づいて個々人の健康力を最大化していくことを考えています。
既にヘルスケアの分野では、大学や企業による数多くの取り組みにより研究成果や製品が創出されています。しかし、急激な高齢化による医療介護への影響が不可避であり、「健康脆弱化予知予防コンソーシアム」では、それらの活動との連携によって、研究開発及びイノベーションを加速しようとするものです。
理研は、老化現象の基礎的・統合的メカニズム解明、生体分子イメージング、レーザー技術や生体力学シミュレーション解析による非侵襲計測といった健康脆弱化に関連する様々な研究を進めています。本コンソーシアムでは、理研の総合力を基盤として、以下の活動を推進します。
- 1.情報/人材交流活動
健康脆弱化を予知し予防する技術について、会員相互の情報交換の場を提供
- 講演会、シンポジウム、ワークショップ等の開催
- 現場見学会の開催
- 2.研究会活動
複数の個別テーマにおいて、関心のある企業と理研、大学の研究者等で研究会を作り、共同研究や社会実装の仕組み構築等を目指した検討を行う
2. 設立総会について
2月3日に開催された設立総会には、会員及び入会を積極的に検討している企業、大学、自治体などから、総勢70名に参加いただきました。コンソーシアムの設立趣旨、活動目的、内容や組織体制が紹介されるとともに、平成28年度(平成28年2月~平成29年3月)の事業計画、収支予算案が審議・承認されました。
設立総会後には記念講演会を開催し、下記の3講演を実施しました。
- 記念講演1
講師:理研 ライフサイエンス技術基盤研究センター長 渡辺恭良
演題:健康脆弱化予知予防の現状と展望 - 記念講演2
講師:和光市 保健福祉部長 東内京一
演題:和光市における超高齢社会に対応した地域包括ケアシステムの実践 - 記念講演3
講師:理研 光量子工学研究領域グループディレクター 和田智之
演題:高齢者健康脆弱化予防のための工学、情報分野からのアプローチ
3. 会長、副会長、幹事及びアドバイザー(2月3日時点)
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会長 | 中島 秀之 | 公立はこだて未来大学学長、理事長 (理研 情報基盤センター客員主管研究員) |
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副会長 | 小寺 秀俊 | 理化学研究所 理事長特別補佐 |
幹事 | 斉藤 裕之 | パナソニック(株)エコソリューションズ社 エイジフリービジネスユニット事業推進部部長 |
新山 賢司 | (株)ミレニア取締役 アライアンス事業部部長 | |
東内 京一 | 和光市 保健福祉部長 | |
小川 泰子 | 社会福祉法人 いきいき福祉会専務理事・総合施設長 | |
三宅 正人 | 産業技術総合研究所 イノベーションコーディネータ | |
姫野 龍太郎 | 理研 情報基盤センター センター長 | |
渡辺 恭良 | 理研 ライフサイエンス技術基盤研究センター センター長 | |
和田 智之 | 理研 光量子技術基盤開発グループ グループディレクター | |
石川 正道 | 理研 産業連携本部 事業開発室長(事務局兼務) | |
塚本 勝 | 理研 産業連携本部 横断プログラム推進室長(事務局兼務) | |
岡崎 之則 | 理研 産業連携本部 横断プログラム推進室(事務局兼務) | |
アドバイザー | 秋山 弘子 | 東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授 |
新開 省二 | 東京都健康長寿医療センター研究所 副所長 | |
原 克彦 | 文部科学省 研究振興局 ライフサイエンス課長 | |
牧野内 昭武 | 理研 研究顧問 |
4. 会員種別と会員一覧(2月3日時点)
本コンソーシアムでは、法人会員、関係団体会員、公的機関個人会員、特別法人会員、理研会員、一般個人会員の6種類を設けています。
法人・関係団体会員・公的機関個人は以下のとおり。
法人会員
株式会社エアウィーヴ、花王株式会社、キリン株式会社、株式会社スギ薬局、セコム株式会社、ダイキン工業株式会社、TOTO株式会社、パナソニック株式会社エコソリューションズ社、株式会社ミレニア、ロート製薬株式会社
関係団体会員
神奈川県、和光市、公立大学法人横浜市立大学、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
公的機関個人会員
池浦 富久 | 東京大学COI機構長 |
大武 美保子 | 千葉大学大学院工学研究科人工システム科学専攻准教授 |
坪田 恵 | 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国際産学連携センター 栄養疫学研究部 |
野村 剛 | 京都大学COI機構長 |
廣瀬 通孝 | 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授 |
堀 洋 | 大阪市立大学健康科学イノベーションセンター副所長 |
村下 公一 | 弘前大学COI機構長補佐(戦略統括)・教授 |
森 武俊 | 東京大学大学院医学系研究科・医学部 ライフサポート技術開発学(モルテン)寄附講座リーダー・特任准教授 |
問い合わせ先
理化学研究所 産業連携本部 横断プログラム推進室
室員 土屋 龍一(つちや りゅういち)
Tel: 048-462-1488 / Fax: 048-462-1220
consortium_health[at]riken.jp(※[at]は@に置き換えてください。)
報道担当
理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
コンソーシアムの目標や概要について説明する中島秀之会長
設立総会で挨拶をする理研松本洋一郎理事