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2017年3月10日

理化学研究所
株式会社東芝
日本電気株式会社
富士通株式会社

「理研AIP-東芝連携センター」、「理研AIP-NEC連携センター」、および「理研AIP-富士通連携センター」を開設

理化学研究所(理研)は、株式会社東芝(東芝)、日本電気株式会社(NEC)、富士通株式会社(富士通)と4月1日に革新知能統合研究センター(理研AIP)に連携センターをそれぞれ開設することを、3月9日に決定しました。理研AIPにおける人工知能分野の先端技術の知見と、各社が保有する顧客基盤に基づく人工知能関連技術の開発経験を融合し、重要な社会課題に対応するための、基盤技術開発から社会実装までの一貫した研究に取り組むことで、社会イノベーションの創出を目指します。

NEC 西原執行役員、理研 杉山センター長、東芝 堀研究開発センター長、富士通研究所 原取締役の写真

左から、NEC 西原執行役員、理研 杉山センター長、東芝 堀研究開発センター長、富士通研究所 原取締役

背景

理研AIPでは2016年4月14日の設立以来、革新的な次世代人工知能基盤技術を開発するための研究体制を整備してきました。その一環として、研究開発成果の実用化加速のために産業界等との連携についても検討し、東芝、NEC、富士通とは、具体的な研究テーマや実施計画等の設定までの議論を重ねてきました。その結果、各社と連携センターを設置することで合意しました。

これらの連携センターにおいて、各社が携わるソリューションを対象に、社会イノベーションの創出を目指して、人工知能技術の活用および革新的な次世代人工知能基盤技術の開発から社会実装までの一貫した研究を行います。

各連携センターの所在地・設置期間・名称

理化学研究所の概要

  • 1.
    理化学研究所

    理化学研究所は、科学技術に関する試験および研究などの業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物、医科学などに及ぶ広い範囲で研究を進めています。研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的財産権の産業界への技術移転を積極的に進めています。

  • 2.
    理化学研究所革新知能統合研究センター

    理化学研究所革新知能統合研究センター(理研AIP)は、文部科学省が推進する「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」事業の研究開発拠点として2016年4月に設置されました。
    理研AIPでは、革新的な人工知能技術を開発し、科学研究の進歩や実世界応用の発展に貢献することを目指します。また、人工知能技術の普及に伴って生じる倫理的・法的・社会的問題に関する研究や、人材育成も行います。

  • 3.
    産業界との連携センター制度

    企業からの提案を基に、理研の各センター内に「連携センター」を設置し、中長期的な課題を実施する産業界との包括的な連携の場を提供するため、2007年2月に整備した制度です。「産業界との連携センター制度」は、これまで理研が実施してきた、企業が主体となって具体的な研究目標を設定する「産業界との融合的連携研究プログラム」などの制度とは異なり、中・長期スパンで目標設定を行える点、企業名を冠することができる点が特徴となっています。この取り組みにより、理研は産業界との連携をさらに発展させ、理研と企業が共同で新分野を切り開く研究領域を育成し、理研と企業双方の文化を吸収した人材の育成を目指しています。

理研AIP-東芝連携センターの概要等

  • 1.
    理研AIP-東芝連携センター概要

    東芝では、理研AIPにおける人工知能基盤技術を深耕すると共に、自社が保有する実データを用いた技術実証を行うことで、複雑化する製造工場・社会インフラにおける「革新的生産性を実現する自律学習AI(自ら学ぶAI)」の確立に向けて研究開発を推進していきます。

  • 2.
    研究課題

    ⅰ)プラント生産性向上
    工場や発電所などのプラントにおいては、システムの大規模化・複雑化に伴い、不具合発生の原因究明が困難になるなど、人による管理の限界が問題となっています。そこで、大量かつ多様なデータに基づき、システムを自動分析・最適化する技術を開発することで、プラントの自律操業による生産性向上を目指します。

    ⅱ)知的生産性向上
    熟練技術者の減少に伴い、貴重なノウハウを継承できないことが問題となっています。そこで、大量の作業記録やデータから知識を抽出し、さらに、人が気付かなかった知識を発見する技術を開発することで、知的活動支援による生産性向上を目指します。

    ⅲ)モビリティ自動化・ロボット化
    インフラ点検や物流で用いられるロボットなどの移動体の制御において、雑多な障害物や、雨・風などの外乱により安定して機能しないことがあります。そこで、多様な環境変化にも堅牢に自律判断・動作する技術を開発することで、インフラ点検や物流の自動化を目指します。

  • 3.
    会社概要

    東芝は、豊かな暮らしを支える社会インフラ、すべての活動を支える安全でクリーンなエネルギー、社会を支える電子デバイス・ICTソリューションという3つの主要事業領域において世界有数の優れた技術を有しています。「人と、地球の、明日のために。」という経営理念のもと、東芝はグローバルな事業推進をし、誰もが安全で、安心できる快適な社会で暮らすことができる世界の実現に貢献しています。

理研AIP-NEC連携センターの概要等

  • 1.
    理研AIP-NEC連携センター概要

    NECでは、安全・安心な社会の実現に向けて、これを脅かす災害・事故・事件など頻度の低い事象を認識可能にする基盤技術や事故の予兆等を発見した際の人の意思決定に役立つ基盤技術の確立、および複数のAI間での円滑な自動交渉を支援する基盤技術の確立を目指しています。
    本連携センターは、AIに関する基本原理の解明から実世界への応用まで連携して研究開発を行うことで、AI研究のさらなる加速と産業への貢献を推進します。

  • 2.
    研究課題

    ⅰ)少量の学習データで高精度を実現する学習技術の高度化
    サーベイランス、防災、インフラ保全などのさまざまな分野において、多数のカメラなどの実世界からのセンサー情報から時々刻々大量のデータを収集することが可能になりつつあります。しかし、異常データなど頻度が低く、データの蓄積が十分では無い場合や、大量のデータをすべて見切れずラベルが付けられない場合など、ラベルの付いた学習データが多くは集められないケースがあります。
    そこで、このような少量の学習データに適用可能な機械学習技術の研究を実施します。

    ⅱ)未知状況での意思決定を支援する学習/AI技術の高度化
    事故・事件などの非常時の意思決定や、会社経営における判断などは、過去データの十分な蓄積がなく人や組織の価値観・環境に依存した対応が求められるため、限られた情報からは最適解の導出は困難です。このような問題に対し、限られた情報から人に提示するための妥当な仮説を自動生成し提示できる論理推論AIが有効ですが、その実現のために必要となる、仮説生成・仮説検証の圧倒的高速化、に関する研究を実施します。

    ⅲ)複数AI間の調整に関わる強化学習の理論的解析
    社会インフラや流通システムなどがAIにより自律的に制御されるようになると、ある自律制御システムと別の自律制御システムの挙動が競合し、全体として正しく機能しなくなる場面の頻出が予想されます。ここではAI同士が交渉を行う(自動交渉)という新たなプロセスが必要になります。そこで、自動交渉というテーマに対する理論的限界を明らかにするために、その限界値を得ることができるアルゴリズムについて研究を行います。

    現在、人工知能分野の研究開発については、政府主導のもと、文部科学省・経済産業省・総務省が互いに連携して相乗効果を発揮する体制(以下、「3省連携」)で進められています。上記各課題についても、3省連携の枠組みに則り、3省研究機関と協調することで研究開発および社会実装を加速していきます。

  • 3.
    会社概要

    NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、最先端AI技術群「NEC the WISE」(注)をはじめとする先進のICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。

    (注)NEC the WISE
    「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。"The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。

理研AIP-富士通連携センターの概要等

  • 1.
    理研-富士通連携センターの概要

    富士通では、環境の不確実な変化に対しても、的確な未来予測に基づいて人のより良い判断を支援する「想定外を想定するAI技術」の実現を研究テーマとした共同研究を行う「理研AIP-富士通連携センター」を設立します。研究テーマに関連する理研AIPのPI(Project Investigator:研究プロジェクト長)と富士通の研究者が複数参画し、複雑化する社会・経済的課題の解決に向けて、多様な社会経済的要因を考慮した未来の社会変化の可能性を予測できる力と、どのような変化に対しても人間の意図を的確に反映した対策を打てる力を持つAI(Human Centric AI)の研究開発を行います。

  • 2.
    研究課題

    本連携センターの設置から3年目までを第1フェーズ、4年目から5年目を第2フェーズと位置づけて共同研究を推進します。第1フェーズでは、以下の3つのプロジェクトを推進します。

    ⅰ)「ロバストな機械学習」:いかなる環境でも的確に未来を予測
    環境変化に柔軟に対応し、的確な未来予測を行うための、ロバストな機械学習の研究開発に取り組みます。従来の機械学習は、膨大なデータ量や質の高い完全データがなければ十分な予測能力を発揮できないという根本的課題があります。そのような課題を克服するため、少量のデ-タや不完全なデータであっても、的確に未来を予測できる機械学習の革新的基盤技術を開発します。
    また機械学習では、AIによる予測結果がどのような因果関係から導き出されたのかを明確に示すことができないことが、社会実装の促進に向けた大きな壁となっています。本プロジェクトでは、そのような課題に対し、因果推定・因果推論の新たな原理・技術の開発に取り組み、予測結果の説明能力の向上を目指します。具体的には、ものづくり分野やセキュリティ分野で、様々な現場のデータを用いた技術実証を行います。

    ⅱ)「シミュレーション・AI融合」:未知の環境の創出
    「京」を始めとする世界トップクラスのスーパーコンピューターおよびそのアプリケーションの開発経験などを生かして、未知の環境やデータ取得が困難な環境をシミュレーションモデル化し、そこから得られたデータをAIに学習させることで、より高精度な未来予測を実現するAIの研究開発に取り組みます。
    加えて、AIを活用することでシミュレーションモデルの妥当性や信頼性の向上を図り、シミュレーション結果の高速推定や自動解析、不十分なデータに基づくシミュレーション時の高精度な結果推定などを実現します。
    具体的な応用分野として、ものづくり分野やヘルスケア分野などを対象に、AIによって高度化されたシミュレーターの開発を目指します。

    ⅲ)「大規模知識構造化」:より良い施策の立案
    複雑な社会的・経済的課題に対して、AIを活用することで効果的な施策の立案を可能にするため、大規模知識構造化の研究開発に取り組みます。
    AIで扱える状態に構造化されていない膨大な情報から、AIで活用できるように構造化して知識を抽出するための基盤技術開発を行います。さらに、複合的な課題の解決や業際・学際的なオープンイノベーションの実現に向け、各種の産業分野や学術分野に依存した知識の融合や転移(他分野への応用)を可能にする基盤技術の開発を行います。
    具体的には、化学・創薬・食品などの業際や、ホワイトカラーの生産性向上および働き方改革に向けて応用することを目指します。

    第2フェーズでは、これら3つの研究プロジェクトの研究成果を統合した基盤技術の研究開発を進め、「想定外を想定するAI」の実現を目指します。

  • 3.
    会社概要

    富士通(本社:東京都港区、代表取締役社長:田中 達也)は、テクノロジーをベースとしたグローバルICT企業です。幅広い領域のプロダクト、サービス、ソリューションを提供し、約16万人の社員が世界100か国以上でお客様をサポートしています。私たちはこれまでの経験とICTの力で、お客様とともに豊かで夢のある未来の実現を目指しています。

    富士通は「人と協調する、人を中心としたAI」、「継続的に成長するAI」を目指しています。
    人を中心に考えたICT=Human Centric AIシステムをお客さまや社会に提供し、これまで以上に"人に優しいICT"を。
    その技術を体系化したものが「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」です。
    「Zinrai」は、人を支え、便利で快適な新しい時代の創造を目指しています。

    「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」ご紹介サイト

お問い合わせ先

理化学研究所 革新知能統合研究推進室
Tel: 048-467-9530
aip-koho [at] riken.jp(※[at]は@に置き換えてください。)

報道機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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