
『理研ニュース』2019年2月号、本日発行しました!
今月の「研究最前線」は、植物の再生メカニズムの研究と、磁石の中にできる電子スピンの構造体「スキルミオン」研究の二つを紹介します。
植物は、1本の枝や葉からでも完全な植物体を再生できる能力を持っています。動物にはないこの能力を、植物がなぜ獲得したのか。それを知るためには、まず植物の再生メカニズムを知る必要があります。研究チームは、植物に傷がついたときに形成される細胞の塊・カルスに注目。傷をシグナルに発現する遺伝子を発見し、茎葉が再生する経路を解明しました。植物再生の複雑な制御ネットワークを理解することで、なぜ動物では再生が起こりにくいのか、という謎を解く手がかりがみつかるかもしれません。
ある種の磁石に極低温で磁場をかけると、電子のスピンが渦を巻いた構造をつくり、1個の粒子のように振る舞うことがあります。これがスキルミオンです。素粒子物理学の世界で理論モデルとして提唱されたスキルミオンが実在することが確かめられたのは2009年。それから10年たらずの間に、研究チームは室温で安定して存在するスキルミオンをつくりだすことに成功しました。数~100nmという極小の粒子を自在に制御できれば、究極の省エネルギー情報技術の実現も夢ではありません。スキルミオンの三次元像からは、長年謎に包まれていた磁気モノポールへの手がかりも見えてきました。スリリングな物性科学の時代が幕を開けようとしています。
ぜひご覧ください!
目次
- 研究最前線
植物はどうやって再生するのか? - 研究最前線
スキルミオンの新現象が見えてきた - 記念史料室から
コンピュータ開発史に輝く後藤英一の挑戦 - FACE
高温プラズマから銀河の進化を読み解く研究者 - 海外事務所から
アジアと理研をつなぐ、シンガポール事務所 - 原酒
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