2019年7月24日から26日の3日間、「RIKEN和光サイエンス合宿2019」を開催しました。「RIKEN和光サイエンス合宿」は、和光地区を会場として、高校生が最新の研究成果に触れ、最先端の研究を体験できるプログラムです。今回は下記3コースで計16名の高校生が参加しました。2泊3日の“研究生活”の様子をご紹介しましょう。
参加した高校生たち
Aコース:『宇宙から降り注ぐ素粒子の正体を見てみよう!』
(ホスト研究室:短寿命核質量測定装置開発チーム)
Aコースでは、ミューオンの寿命測定に挑戦しました。地球に絶え間なく降り注ぐ宇宙線の中には、ミューオンという電子に似た素粒子があります。手のひらに1秒間に1個くらいの頻度で飛び込んできている身近な素粒子です。参加した6人は、そのミューオンを検出するプラスチックシンチレータ検出器を自分達でつくり、約21時間観測した後、得られた観測データからミューオンの寿命を解析しました。
Bコース:『切っても元通りにくっつく不思議なゴムを作ろう!』
(ホスト研究室:先進機能触媒研究グループ)
Bコースでは、自己修復ポリマーの合成に挑戦しました。ポリエチレンやナイロンなど、軽くて柔らかい高分子材料は私たちの日常生活において広く使われていますが、水中・人体内部・精密機器内部などでは傷んだからといって簡単に取り替えたり修理することはできません。そこで傷や穴が自律的に修復する新しいポリマーが注目されています。参加した6人は、理研で最近開発された自己修復ポリマーを自分達で合成し、モノマー(原料)からポリマーができる共重合反応や、ポリマー構造と自己修復性や形状記憶特性との関係を学びました。
Cコース:『細胞の構造を超解像イメージで見てみよう!』
(ホスト研究室:佐甲細胞情報研究室)
Cコースでは、細胞の超解像イメージングに挑戦しました。細胞内部の構造は、顕微鏡を使えば観察できますが、解像度に限界があります。参加した4人は、PtK2という細胞中の微小管を蛍光染色し、従来の顕微鏡で観察するとともに、2014年にノーベル化学賞を授賞した超解像顕微鏡を用いたPALM法という超解像イメージングを行いました。微小管の太さをそれぞれの方法で測定して、超解像イメージングの解像度が従来の約8倍向上することを明らかにしました。
最終日の午後、3日間の実習で分かったことや学んだことを、仲間や研究者の前で発表する体験発表会が開かれました。その後、石井俊輔 副理事から、16名の高校生一人ひとりに修了証が手渡されました。
合宿に参加した高校生の感想を一部ご紹介します。
- チームメイトと一緒に自分たちの手で検出器を作りました。自分で実験することはあっても検出器を作ったのは初めてでした。アドバイスを参考に、皆で意見を出し合って製作した検出器で、観測できた時は、本当に感激しました。(高校1年、女子)
- 最新の研究を最高の場所で最高の仲間と共にすることができた。一人でなく皆で研究をして、一つのことをしているのだという感覚、雰囲気が堪らなく楽しかった。私の目標は、研究者になることだ。今回の体験は、その気持ちを強くすると同時に、まだまだ知らない分野が山ほどあると気づかせてくれて、可能性、視野を広くすることに繋がった。(中等教育学校4年、男子)
高校生を送り出していただいたご家族のみなさま、関係部署の方々、ご協力くださった研究者のみなさま、この場を借りて御礼申し上げます。