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2020年10月23日

理化学研究所
株式会社理研鼎業
株式会社JSOL
株式会社理研数理

理研、理研鼎業、JSOLからの出資で株式会社理研数理を設立

-アカデミアとビジネスの協働による新たなイノベーションプラットフォームの構築-

理化学研究所(理研)、株式会社理研鼎業、株式会社JSOLは、共同で株式会社理研数理(りけんすうり)を2020年10月1日付で設立しました。理研にとっては、初となるベンチャーへの出資です。我が国唯一の自然科学の総合研究所である理研が100年を超える歴史で培った研究開発能力のうち、理研からの出資によって初めて市場へ投入されるものは最先端の機器でも薬でもなく「数理科学分野における最高峰の頭脳そのもの」となりました。理研数理は「社会の基本的な問題解決に数理科学を最大限活用する企業」を目指します。

この理研数理を舞台に、数学や物理学をはじめとする数理科学分野のアカデミア人材と産業界の研究者・技術者が、お互いの強みを持ち寄って協業します。理研数理はベンチャー企業として研究人材(頭脳)と研究資金を循環させる新しい研究環境を構築することで、我が国の産業界の発展やイノベーション創出に貢献します。

設立背景

近年、AI(人工知能)、ビッグデータ、スーパーコンピュータ、量子情報など、数理科学に関連した基礎研究・応用研究が世界的に著しく発展しています。それに呼応して、国外では、多くの数理科学者がGAFAなどで活躍し、アカデミアと企業の明確な境界が急速に薄れています。一方、我が国では、数理科学分野におけるこのような境界が依然として存在し、イノベーション創出の芽が生まれにくい環境となっています。この状況を打破するためには、アカデミアと企業が協業して数理技術の開発とその活用を行い、GAFAをはじめとする巨人らと対抗しうる、数理科学の新しい社会展開モデルを構築することが必須です。

理研は、2016年に数理創造プログラム(iTHEMS)を設立し、数学や原子核物理、計算科学などの若手の理論研究者が、化学やライフサイエンス、医科学分野の研究室と協力して、数理科学研究を発展させています。また、JSOLをはじめ企業との共同研究を実施してきました。

特に、JSOLとは、金融データを用いた銀行業務としての企業の業況分析から、取引ネットワークの分析といった点において、一定の成果を挙げた(注1ことから、今後、他の分野のデータオーナーとの関係構築の拡大に期待が高まっています。

また理研は、100%出資子会社であり産学連携機能の担う理研鼎業を活用した、ベンチャー育成・支援に力を入れています。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律[1]の施行により出資並びに人的および技術的援助が可能となったことから、理研鼎業、JSOLとの共同出資により株式会社理研数理を設立するに至りました。これは理研によるベンチャー出資の第一号です。

理研数理は、アカデミアと産業界から我が国最高峰の数理科学の頭脳が集い、協業し、頭脳の還流を行うことで、世界を席巻するGAFAをはじめとした巨人と肩を並べる、我が国発の数理科学の社会展開モデルを実現・提供します。

株式会社理研数理の概要

社名
株式会社理研数理(りけんすうり)
RIKEN SUURI Corporation
設立日
(登記申請日)
2020年10月1日
代表者
江田 哲也(えだ てつや)
資本金
300万円
理化学研究所 75万円(25%)
理研鼎業 75万円(25%)
JSOL 150万円(50%)
所在地
東京都中央区晴海二丁目5番24号
ウェブサイト
株式会社理研数理

業務内容

株式会社理研数理は、次の業務を企業からの受託により行います。

  • (1)数理モデルの研究開発
  • (2)数理モデルの研究開発に関するコンサルティング
  • (3)数理モデルを用いたサービス、ソフトウエア開発
  • (4)データプラットフォームの構築・販売

その他、調査研究、人材育成、知的財産権およびその管理・活用などを行います。

理研数理と出資者の関係(資本構成)の図

理研数理と出資者の関係(資本構成)

関係者のコメント

理研数理 江田哲也代表取締役社長

2020年10月1日、国立研究開発法人理化学研究所、株式会社理研鼎業、株式会社JSOLの共同出資により、株式会社理研数理を設立致しました。理研数理は、国立研究開発法人と民間企業が共同で設立する最初の事業会社となります。

理研数理は、Society5.0時代の新たな社会課題に対して、数理科学・計算科学をコアの解決手段として取組んで参ります。

理研数理が実現する未来の姿は、以下の4点となります。

  • 産学両方向の人財還流を通じて、双方の価値を相乗的に向上させる
    社会全体に、先進・高度な数理技術者・データサイエンティストを輩出する
  • 基礎・応用研究の融合を、経済的価値にリンクさせることで増進させる
    社会広範に繋がる研究テーマを開拓し、新たな学術領域を産出する
  • 新規発明知財を活用した新たな事業領域(事業会社)を増産する
    社会共通のイノベーション基盤として、次世代へ挑戦機会を提供する
  • 事業活動の成功を通じて、研究者の処遇を改善する
    社会のサステナブルな発展に寄与する中核機能として、「研究・開発(活動)」を育成する

これらを実現するためには、社会に散在する各種の財(人・モノ・データ・想い)の交流が必要になります。理研数理を、課題解決の共通基盤として、多くの皆様にご利用いただければ幸いです。

会社設立の起点は、当社アドバイザーの初田氏、長瀧氏(注2、若山氏(注3をはじめとする多くの研究者が、永年抱き続けてきた「次世代へ、発展的で魅力的な研究活動の基盤を提供したい」との想いにあります。この想いを実現すべく、約3カ年の議論を重ね、多くの方々のご助言を賜わり、今般、スタートラインに立つことができました。この場をかりて、規制や習慣を超越し、新会社設立にご尽力いただいた全ての皆様に、敬意を表させていただきます。

  • 注2)長瀧重博 理研数理 Chief Analytics Advisor(理研iTHEMS 副プログラムディレクター)
  • 注3)若山正人 理研数理 Chief Science Advisor(理研 iTHEMS 特別顧問、東京理科大学 副学長)

理研 松本紘理事長

近年の科学技術の特徴の一つとして、数理科学の発展により基礎科学と応用科学の距離が大きく縮まってきたことが挙げられます。理研の数理創造プログラム(iTHEMS)では、数学、理論物理学、数理生物学、計算科学、情報科学などの若手の数理科学研究者が、宇宙から材料科学、ゲノム・医療と言った多分野の研究者と協働して、新たな理論モデルの研究に取り組んできました。

一方、ここ数年で、世の中には様々なビッグデータが溢れるようになりました。この多様なビッグデータは、社会実装して初めて人々の役に立つものとなります。そのため、数理科学を活用しビッグデータを紐解くことで得られる成果を用いて、健康医療、防災といった社会課題を解決することが望まれています。

理研は、理研鼎業を通じて産業界との連携を強化することで、企業の基礎研究所としての役割を担うことを宣言して参りました。数理科学分野における我が国共通の企業の基礎研究所として、新会社「理研数理」を企業の皆様に活用していただくことを期待しています。

理研鼎業 油谷好浩代表取締役社長

理研鼎業が昨年9月に発足して以来、TLO機能、ベンチャー支援、共同研究促進、企業共創を精力的に進めてまいりました。この度、株式会社JSOLおよび理研との共同出資により、理研鼎業として初めてのベンチャーである理研数理を設立できたことは、大きな進展です。理研数理は基礎科学と産業界をつなぐ事業を行い、これにより頭脳循環と資金循環を実現していく会社ですが、これはまさに当社が目指す研究成果の社会価値最大化のモデルとなります。今後、株式会社JSOLおよび理研とともに、理研数理の事業活動を支援し、理研数理の発展に貢献するとともに、理研のみならず大学・国研等アカデミアとの連携と頭脳循環を実現して参ります。

JSOL 前川雅俊代表取締役社長

Society5.0の実現に向け、我が国は、課題先進国として様々なイノベーションを達成する必要があります。今後私達が解決すべき課題は、極めて複雑且つ高度であり、これまでのような独立的な資源活用(研究開発)で解決出来るものではありません。これまでの産学連携は、役割分担による片方向の取組でしたが、今後は双方向で資産を持ち寄り、化学反応を繰り返しながら共成していくことが求められます。その中核を成すエンジンとしての、数学・理論・計算科学は、重要性が飛躍的に高まり、社会全般のDXを推進していくものと確信しています。

JSOLは、NTTデータ及びSMBCグループの一員として、これまでも大学・研究機関の皆様と、数理技術の社会適用について、数多くの取組を重ねて参りました。今般、理研様、理研鼎業様と共同で、それらの先進エンジンを実装した事業会社を設立し、社会共通の価値を生み出す挑戦をおこなうことは、弊社の一大使命と受け止めています。理研数理は、弊社も含めた特定企業の利益に資する為に存在するのではなく、事業活動を通じて、'新たな社会'の創出に挑戦する皆様の共有プラットフォーマーです。弊社としては、理研数理が皆様と共に事業を拡大していくことを切に願っております。

理研数理 初田哲男Chief Science Advisor (理研iTHEMS プログラムディレクター)

自然をより良く理解したいという人類の好奇心にもとづく基礎科学は、その副産物としてさまざまな応用技術を生んできました。一方、人間生活を改善しようとする様々な技術開発が基礎科学の新たな発展を育んできました。19世紀の産業革命と熱力学、20世紀の量子力学とエレクトロニクス革命はこのような相互関係の好例です。そして、21世紀の情報革命もこの延長線上にあります。つまり、基礎科学と技術革新は"共進化"したのです。ガリレイ、ニュートン、アインシュタイン、ホーキングなど数々の偉大な科学者が述べているように、科学の発展には必ず"数理"(数学や理論)が本質的な役割を果たしています。株式会社理研数理では、数理科学を専門とするアカデミアの研究者と、産業界の研究者・技術者が同じプラットフォームで協業と人材還流を行うことで、科学と技術の共進化を一層加速しながら新しい価値を生み出すとともに、21世紀後半における科学・技術イノベーションの新しいモデルを提供することを目指します。

株式会社理研数理の設立に関する記者会見(10月23日)の写真

株式会社理研数理の設立に関する記者会見(10月23日)にて
(左から、理研数理 初田哲男Chief Science Advisor、理研数理 江田哲也代表取締役社長、理研 松本紘理事長、理研鼎業 油谷好浩代表取締役社長、JSOL 前川雅俊代表取締役社長)

関連動画︓理研、理研⿍業、JSOLからの出資で株式会社理研数理を設⽴

補足説明

  • 1.科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律
    研究開発力強化法(平成20年法律第63号)の改正法として2019年1月17日に施行。同法により、国立研究開発法人は自らの研究開発成果の活用のため、民間事業者への移転及び共同研究のあっせん等により活用を促進する者や事業活動において活用する者等に対する出資並びに人的及び技術的援助が可能となった。

機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当
お問い合わせフォーム

株式会社理研鼎業 戦略企画部 山橋
Email: contact [at] innovation-riken.jp

株式会社JSOL 経営企画本部 新開
Email: webinfo [at] jsol.co.jp

株式会社理研数理 松崎
Email: matsuzaki.kenichi [at] riken-suuri.jp

※上記の[at]は@に置き換えてください。

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