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2021年11月10日

理化学研究所
公益社団法人日本アイソトープ協会

理研仁科加速器科学研究センター、公益社団法人日本アイソトープ協会 連携に関する協定を締結

理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センターと公益社団法人日本アイソトープ協会は11月9日、 アイソトープ・放射線に関する利用技術の向上を図り、それらを通じて学術および科学技術の発展に寄与することを目的とする協定を締結しました。

現在、国内外で放射性医薬品[1]を用いる核医学治療が注目されており、そこで使用されるラジオアイソトープ(RI、放射性同位元素)[2]の需要が高まっています。仁科加速器科学研究センターのRI製造技術および応用への知見と、日本アイソトープ協会が有するRIの供給から廃棄物の集荷・処理に関する高度なノウハウの融合は、今後RIを安定的に供給する国内ネットワーク構築の第一歩となります。さらにRI・放射線の利用技術を普及させることで、科学技術の一層の発展や社会へ寄与します。

協定締結の写真

協定締結の様子

(理研仁科加速器科学研究センター 櫻井博儀センター長(右)、公益社団法人日本アイソトープ協会 畑澤順専務理事)

背景

現在、ラジオアイソトープ(RI、放射性同位元素)は、基礎研究だけでなく医療、農業、工業といったさまざまな分野で幅広く利用されています。中でもアスタチン(211At)やアクチニウム(225Ac)といった短寿命RIは、核医学治療での利用に期待されており、国内外での需要が高まっています。日本では、RIの多くを輸入に頼っていますが、これらのRIは半減期が短いため、安定的な輸入が困難です。また、RI製造および供給に関する知識や技術に卓越した人が必要なため、人材育成も喫緊の課題となっています。

仁科加速器科学研究センターは、1931年に創立された仁科芳雄博士研究室に由来し、世界最先端の重イオンビーム加速器施設「RI ビームファクトリー(RIBF)」を擁しています。RIBFでは、多種類のRIビームを生成することが可能で、これまでにニホニウムの発見注1)や核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化の提案、重イオンビーム照射による植物の品種改良などに代表される研究成果とともに、RIを製造し所内外に提供してきました。RIの医学的応用についても研究を進めており、211At の製造技術を開発し、その大量製造が可能になりました。また、国内最大規模拠点としてRI製造するだけでなく、国立がん研究センターとの共同研究により創薬を開始したほか、2019年には理研開拓研究本部とともにα線がん治療の実用化につながる211Atの標識法を開発しました注2)

一方、日本アイソトープ協会は、仁科博士により輸入されたRIを全国の研究者に配分したことを契機に、RIの安全な取り扱い、取り扱い技術の向上および普及を目的として、1951年に設立されました。現在、RIの供給から廃棄物の集荷・処理までの一貫した取扱いおよびRI・放射線に関する調査研究を一体的に推進する事業を展開しており、RI・放射線利用者とのネットワークを持っています。

両者の強みを生かして相互に連携することで、国内でのアイソトープ・放射線の利用・利用技術を向上させるため、このたび協定の締結に至りました。

連携内容

  • (1)新たなアイソトープ・放射線の活用法の開拓に資する共同研究の推進
  • (2)アイソトープ・放射線の適切な利活用に資す人材育成の推進
  • (3)アイソトープ・放射線に関するシンポジウム、ニーズ・シーズの意見交換会等の共同企画・開催

今後の展望

本協定に基づき、仁科加速器科学研究センターのRIに関する高度な開発・応用技術と、日本アイソトープ協会の培ってきたノウハウを融合します。仁科加速器科学研究センターはこれまで以上に多種多様な新しいRIの利用技術の開発に取り組み、日本アイソトープ協会を通じて、必要としている利用者にRIを届けることで、RIの国内での普及に一層貢献し、学術および科学技術の発展に寄与します。

また、国内での放射性医薬品を用いた核医学治療が広がりを見せる中で、両者は国内でのRI製造・供給の基盤を整え、RIを幅広く普及していくことで、医療をはじめとする社会全体への貢献を目指します。

補足説明

  • 1.放射性医薬品
    ラジオアイソトープ(RI、放射性同位元素)を含む医薬品。RIが放出する放射線を利用しており、がんなどの病気の診断薬、治療薬として活用されている。
  • 2.ラジオアイソトープ(RI、放射性同位元素)
    物質を構成する原子核には、構造が不安定なため時間とともに放射線を出しながら原子核が崩壊していくものがある。このような原子核を放射性同位元素(RI)と呼ぶ。同じ元素であっても中性子の数が異なるものを同位体と呼ぶが、同位体は安定なものと不安定なものに分類される。

お問い合わせ

理化学研究所 仁科加速器科学・数理創造研究推進室
Email: nishina-ithems [at] ml.riken.jp

日本アイソトープ協会 総務部 総務課
Email: soumu [at] jrias.or.jp

機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当
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