理化学研究所（理研）は我が国唯一の、また世界有数の総合的な基礎科学の研究所として、人類が抱える諸課題に果敢に取り組み、人類社会の持続可能な発展と成長に貢献し、それを通じて日本の信頼を高めることを目指して活動してまいりました。
理研だからこそできる、理研でなければできないことの実現に向けて、「RIKEN's Vision on the 2030 Horizon」の方針を掲げ、新たな理研の研究人材育成のあり方を提案しています。日本国内はもとより、世界の卓越した研究者たちが集い、つながることで、未来を託すに足る優れた次世代の研究者・技術者が育ち、理研が国際頭脳循環の場として更に飛躍することを目指しています。
このたび、この方針に基づき、とりわけ若手研究者の育成支援を強化するために、以下の新たな取り組みを実行することに致しました。
さまざまな世代の研究者の力を最大限引き出し、支援する制度の構築
理研は、研究者の給与体系について見直し、評価に基づきより弾力的に処遇できる取り組みを推進します。国際的に魅力ある研究所として、国内外の優秀な若手研究者を集め、育み、未来の科学を担う科学者を支援します。
基礎科学研究を持続的に発展させていくためには、それを担う若手研究者の育成がとりわけて重要です。理研は学部学生や大学院生、ポスドク研究員、若手PI（研究室主宰者）と、研究者のキャリアを育む一貫した支援を行っています。なかでも若手PIを支援する理研白眉制度は、国内外から優れた人材を登用するとともに国際頭脳循環の一翼を担ってきました。この制度をさらに充実させながら改定し、理研が世界の頭脳循環の中核となる仕組みを強化します。これまでにも増して、大学院生、ポスドク研究員の経済的な支援を充実させることで、研究に集中できる環境を提供します。
- (1)若手PIを支援する理研ECLプログラム（仮称：RIKEN Early Career Leaders Program）の創設
国際的な研究開発競争の中、優秀な若手研究者を育成するため、従来の理研白眉制度を発展させます。具体的には、以下のような2つのキャリアステージ（部長級・課長級）に対応する理研ECLプログラムを設置し、令和6年度の着任を目指して令和５年4月から公募を開始します。また、部長級・課長級ともに、無期雇用職への審査に申請することを可能とします。さらに、このプログラムを経て、他の機関に転出される際には、理研はその研究の継続発展のための支援をします。
- ①RIKEN Early Career Team Leader：理研ECL研究チームリーダー（部長級）
科学的、社会的にインパクトの高い野心的な研究に挑戦しようとする若手研究者を対象に、PIとして独立し、自らのチームを率いて研究を推進する機会を提供します。理研白眉制度を深化させ、着任時・転出時の支援を強化し、さらなるキャリアパスの開発に力を入れる制度に改定します。性別を問わない「理研ECL研究チームリーダー」を2名、また、女性研究者の支援も強化するため、女性を対象とした「理研ECL研究チームリーダー：加藤セチプログラム」を1名、計3名の採用枠を毎年用意します。加藤セチプログラムでは、研究室の立ち上げ費用（初期費用）も増額することで優秀な女性研究者の採用をさらに積極的に進めます。任期は7年とし、初期費用、7年間の研究費をサポートします。なお、初期費用については一定の基準額を設けず、研究提案の内容や分野特性を十分に踏まえて、7年間最大限のパフォーマンスを発揮いただくために十分な金額を用意します。 - ②RIKEN Early Career Unit Leader：理研ECL研究ユニットリーダー（課長級）
自身のユニークな研究テーマに意欲的に挑戦しようとする優秀な若手研究者を対象に、PIとして独立し、研究を推進する機会を提供します。特に、気鋭の若手の登用を促進したいと考え、経験年数が少ない世代を主な対象にして課長級ポストでの採用枠を設け、ホストの研究センター等において身軽な機動性の高い研究環境を提供します。男女2名ずつの採用を毎年目指します。任期は5年とし、初期費用、5年間の研究費をサポートします。なお、初期費用については理研ECL研究チームリーダー（部長級）同様に、一定の基準額を設けず、研究提案の内容や分野特性を十分に踏まえて、5年間最大限のパフォーマンスを発揮いただくために十分な金額を用意します。
- ※現時点で検討している理研ECLプログラムの対象者年齢と研究室スタッフ数は以下の通りです。
（年齢はあくまでも目安で、経験年数などにも依存します。）
チームリーダー 平均年齢：35歳前後、スタッフ数：5人程度
ユニットリーダー 平均年齢：30歳前後、スタッフ数：2人程度
- ①RIKEN Early Career Team Leader：理研ECL研究チームリーダー（部長級）
- (2)大学院生、ポスドク研究員への支援拡充
令和5年度より、博士号取得から5年以内の若手研究者を対象にした基礎科学特別研究員、大学院博士後期課程の学生を対象にした大学院生リサーチ・アソシエイトの給与を増額し、支援を拡充します。基礎科学特別研究員に対しては研究費の増額、大学院生リサーチ・アソシエイトに対しては国際学会参加経費の支援も予定しています。これらの施策により、大学院生、ポスドク研究員がより充実した研究を実施し、世界に飛躍するための環境を提供します。