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2023年3月13日

理化学研究所

仁科型電離箱2号機の日本天文遺産認定について

この度、理化学研究所(理研)の仁科研究室[1]で戦前に開発された仁科型電離箱2号機が、日本天文学会の日本天文遺産[2](第5回)に3月15日付で認定されることになりました。

仁科型電離箱は宇宙から降り注ぐ放射線(宇宙線)を観測する装置で、1935年から1941年にかけて理研で計5台設計・製作されました。当時は、地球に降り注ぐ宇宙線の構成、地球磁場や太陽活動との関係性がよく分かっておらず、世界的に活発に観測活動が始まった時期です。仁科研究室は、東京・麻布狸穴の東京天文台敷地で電離箱の試運転を行った後、理研(東京・駒込、板橋)のほか、乗鞍、香港、札幌、高知などに順次場所を移し、緯度・経度、高度の異なる場所で宇宙線強度の連続観測を実施するという、当時世界でもまだ行われていなかった最先端の研究を始めました。1942年3月7日には、数時間にわたる宇宙線の異常増加が複数個所の仁科型電離箱で観測され、のちにこれが太陽フレア起源だったことが判明しました。

仁科型電離箱は1990年代までの数十年にわたって研究に用いられ、日本の原子核・素粒子宇宙実験の黎明期を支え、世界的に優れた研究成果を生み出してきました。現在は、東京大学宇宙線研究所・乗鞍(1号機)、理研(2号機)、香港 (3号機・所在確認中)、高知大学(4号機)、国立科学博物館(5号機)で保管されています。理研が所有する2号機は、昨年10月に新設した仁科芳雄記念室[3]で、若い世代の科学への興味・関心を育む目的で保存・公開されています。

関連ページ:理研ヒストリア「理研の宇宙線研究」

仁科芳雄記念室に保存・公開している仁科型電離箱2号機の画像

仁科芳雄記念室に保存・公開している仁科型電離箱2号機

理化学研究所 理事長 コメント

五神 真 理事長の写真 五神 真 理事長

この度、仁科型電離箱が日本天文遺産に認定されましたこと、誠に喜ばしく思っています。理化学研究所は、先人の科学者達が手掛けた研究資料や工夫された機器、出来事の記録など、百年にわたる多くの歴史的資料を保有しています。

仁科型電離箱もその一つであり、戦前の1935年から1941年にかけて設計・製作されて以降、90年代まで50年以上にわたって宇宙線観測に使用され、日本の宇宙線研究の開拓に大きく貢献しました。

原子核・素粒子・宇宙線分野の黎明期を支え発展させた歴史的な観測装置として今後も保存し、見学に訪れた方々に公開することで、科学への関心や好奇心を未来へつないでいきたいと思います。

補足説明

  • 1.仁科研究室
    仁科芳雄が主宰し、当時東京駒込の地にあった理研に1931年に創設された研究室。仁科芳雄は、湯川秀樹や朝永振一郎らと共に素粒子理論研究を開始した。翌年には、その理論を解明するため、宇宙線の持つ超高エネルギー領域を利用した宇宙線研究の実験に着手した。
  • 2.日本天文遺産
    歴史的に貴重な天文学・暦学関連の遺産を大切に保存し、文化的遺産として次世代に伝え、その普及と活用を図ることを目的に、日本における天文学・暦学的な視点で歴史的意義のある史跡・事物に対する日本天文学会が設置している認定制度。
  • 3.仁科芳雄記念室
    理研仁科加速器科学研究センターの源流となった仁科芳雄博士の研究室を再現した展示スペース。仁科記念財団より譲り受けた仁科博士の机や椅子などを用い、当時の研究室を再現するとともに、仁科博士の業績や志、自由闊達な雰囲気の中での活発な議論の様子(コペンハーゲン精神)を次世代に伝えることを目的としている。
    関連ページ:仁科芳雄記念室 | 仁科加速器科学研究センター

機関窓口

理化学研究所 仁科加速器科学研究センター
高エネルギー宇宙物理研究室
室長 玉川 徹(タマガワ・トオル)
Email: tamagawa [at] riken.jp

※[at]は@に置き換えてください。

理化学研究所 広報室 報道担当
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