この度の李 政道 初代理研BNL研究センター長の訃報に接し、心からお悔やみを申し上げます。
1997年、理研は日米科学技術協力の一環として、米国のブルックヘブン研究所(BNL)に、スピン物理プロジェクトの研究拠点「理研BNL研究センター(RBRC)」を設置いたしました。李 博士は、RBRC初代センター長として日米の科学技術の発展と理研の国際展開に大きく貢献されました。
特に李 博士は、原子核物理学分野における優秀な研究者を育成するため、米国の一流大学とRBRCとの共同任命制度を導入し、さらに、若手研究者を育成し輩出する仕組み (RHIC Physics Fellow制度)を確立し、当該分野における人材育成、国際頭脳循環を力強く牽引されました。また李 博士は、若手研究者とのディスカッションをこよなく愛し、親身に指導にあたられました。RBRC設立以来、28年目を迎えた今日、博士の薫陶を受けたRBRCの卒業生は世界各地で活躍しています。
理研では、2003年より名誉センター長・理研研究顧問をされておられました。また、2006年秋の叙勲では、日本と米国の学術交流の促進に寄与した功績により、旭日重光章が授与されました。
理研役職員一同、李 博士が築かれた礎をより大きく発展させるべく、科学技術の発展と若手人材の育成に取り組む所存です。
長年にわたる先導的なご活躍に敬意と感謝の意を表し、謹んで哀悼の意を表すとともに、ご冥福を心からお祈り申し上げます。
2024年8月9日
理化学研究所理事長 五神 真