がん研究会の篠崎 英司 医師(がん研究会 有明病院消化器化学療法科 副部長)らは、がん研究会と理化学研究所(理研)との共同研究チームにより創製されたタンキラーゼ阻害剤RK-582の国内初である医師主導治験を開始し、1例目の患者への投与ががん研究会有明病院にて2025年3月18日に実施されました。
治験薬のRK-582は、理研 環境資源科学研究センター ケミカルゲノミクス研究グループ(研究当時)によって東京大学の化合物ライブラリーより選抜されたシード化合物を、同センター 創薬化学基盤ユニットでの誘導体合成、生命機能科学研究センター 創薬分子設計基盤ユニットと創薬タンパク質解析基盤ユニット(いずれも研究当時)の創薬基盤技術、さらに理研とがん研究会における酵素・細胞レベルでの薬理評価および薬物動態評価機能を結集して構造最適化することで見いだされた新規タンキラーゼ阻害剤です。
本治験は、切除不能進行・再発大腸がん患者を対象に、RK-582の安全性および忍容性、ならびに探索的有効性を評価することを目的としています。本治験の治療法により、大腸がんの約80%で見られるがん抑制遺伝子APCの機能喪失型変異により亢進したWnt/β-カテニンシグナルを遮断し、腫瘍組織の増殖を抑制します。今後は、投与症例の経過観察を通じて慎重に評価が進められます。
共同研究チーム
理化学研究所
環境資源科学研究センター
ケミカルゲノミクス研究グループ(研究当時)
グループディレクター 吉田 稔(ヨシダ・ミノル)
(現 創薬シーズ開拓基盤ユニット ユニットリーダー)
専任研究員 八代田 陽子(ヤシロダ・ヨウコ)
(現 分子リガンド標的研究チーム 副チームディレクター)
創薬化学基盤ユニット
上級研究員 白井 文幸(シライ・フミユキ)
ユニットリーダー 小山 裕雄(コヤマ・ヒロオ)
生命機能科学研究センター
創薬タンパク質解析基盤ユニット(研究当時)
上級研究員(研究当時)梅原 崇史(ウメハラ・タカシ)
(現 生命医科学研究センター タンパク質機能・構造研究チーム 客員研究員、立命館大学薬学部 教授)
ユニットリーダー 白水 美香子(シロウズ・ミカコ)
(現 生命医科学研究センター 創薬タンパク質解析基盤ユニット ユニットリーダー)
創薬分子設計基盤ユニット(研究当時)
研究員(研究当時)幸 瞳(ユキ・ヒトミ)
(現 生命医科学研究センター 創薬分子設計基盤ユニット 技師)
ユニットリーダー 本間 光貴(ホンマ・テルキ)
(現 生命医科学研究センター 創薬分子設計基盤ユニット ユニットリーダー)
創薬・医療技術基盤プログラム(研究当時)
マネージャー(研究当時)深見 竹広(フカミ・タケヒロ)
(現 生命医科学研究センター ヒト疾患モデル研究チーム 客員主管研究員)
がん研究会 がん化学療法センター 分子生物治療研究部
部長 清宮 啓之(セイミヤ・ヒロユキ)
(理研 最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部 創薬・医療技術基盤プログラム プロジェクトディレクター)
関連リンク
- 2025年5月8日 がん研究会のプレスリリース「がん研・理研発 タンキラーゼ阻害剤RK-582大腸がん患者を対象に国内初の医師主導第I相治験を開始-」