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2019年11月18日

東京大学
理化学研究所

トポロジカル励起による新たな電気伝導機構の解明

-電荷を持ったドメインウォールの輸送現象-

電子どうし、または電子と格子が強く相互作用する物質では、電荷、スピン、格子が絡み合った創発的な物性の発現が期待されています。特に着目されているのがトポロジカル励起と呼ばれる特殊な励起です。トポロジカル励起は一種の新たな粒子と見なすことができ、電子に代わって物質の電気的、磁気的、熱的性質を担うことが可能となります。ある種の有機物質ではこのようなトポロジカル励起の存在が長年議論されてきましたが未解明なままでした。

今回、東京大学大学院工学系研究科の竹原陵介学術支援専門職員(研究当時)、須波圭史学術支援専門職員、宮川和也助教、鹿野田一司教授らは、同新領域創成科学研究科の宮本辰也助教、岡本博教授、産総研の堀内佐智雄上級主任研究員、理化学研究所の加藤礼三主任研究員と共同で、この有機物質においてドメインウォールと呼ばれるトポロジカル励起が極めて高い電気伝導を生み出し、新しい電気伝導機構を与えることを明らかにしました。この有機物質は加圧することで中性の絶縁体からイオン性の絶縁体に転移しますが、共に絶縁体でありながら移り変わる際に観測される金属並みに高い電気伝導の起源が長年問題となっていました。

本研究グループは圧力を高い精度で制御しながら電気抵抗を測定しました。その結果を解析したところ、一電子励起よりもはるかに低い励起エネルギーで電気伝導が起こっており、この特異な電荷の輸送を担っているものが理論的に予言されていたドメインウォールの励起であることが明らかになりました。さらに核磁気共鳴(NMR)の実験と組み合わせることで、ドメインウォールだけではなくソリトンと呼ばれるもう一つのトポロジカル励起も関与した新しい電気伝導機構が実現していることを初めて明らかにしました。

今回の研究成果は、巨視的な物性の担い手が一般的な電子と異なることを示す結果であり、今後は熱電効果や熱伝導といった他の輸送特性でも興味深い現象が期待されます。

詳細は東京大学工学部のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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