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2020年11月19日

大阪大学
理化学研究所

生きた細胞中の低分子薬剤を可視化

-薬剤の取り込みをリアルタイムに観察可能に-

大阪大学大学院工学研究科の大学院生の小池康太さん(博士後期課程)、畔堂一樹特任助教(常勤)、藤田克昌教授らの研究グループは、同大学免疫学フロンティア研究センターのスミス ニコラス准教授、理化学研究所の闐闐孝介専任研究員、袖岡幹子主任研究員らのグループとともに、ラマン散乱の一種である表面増強ラマン散乱(SERS)を用いることで、小さなアルキンタグをつけた低分子薬剤(小分子)が生きた細胞内へ取り込まれる様子をリアルタイムで観察することに世界で初めて成功しました。

ラマン散乱顕微鏡は、分子の化学結合を直接検出することで、分子の空間分布を観察できる光学計測技術です。さらに、生体分子に含まれないアルキン(炭素間三重結合をもつ構造)を観察対象の小分子のタグ(標識)として付加することで、細胞内の複雑な環境下においても対象分子を選択的に観察できます。しかし、ラマン散乱は非常に微弱であるため、観察時間が数十分程度かかることから、細胞内への小分子の取り込みをリアルタイムに観察することはできませんでした。

今回、本研究グループは、金ナノ粒子による表面増強ラマン散乱(SERS)を利用することで、小分子を高感度検出し、時間分解能の向上に成功しました。SERSを用いれば、粒子表面の分子のラマン散乱の効率を数桁以上増強できるため、高感度かつ高速なラマン分子計測が可能になります。本研究では、金ナノ粒子を導入した細胞に薬剤を投与し、ラマン散乱顕微鏡で4次元計測(3次元スキャン+経時観察(タイムラプス))することで、薬剤の細胞内濃度が徐々に増加する様子をリアルタイムに観察することに成功しました。本技術は、様々な細胞種や薬剤分子への応用が可能であり、効率的な創薬への貢献が期待されます。

詳細は大阪大学 ResOUのホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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